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 1999.10.18記す

至福のひととき

 いよいよ、FC東京最後のリーグ戦。自力昇格はすでに無いのだが、結果次第ではJ1昇格の望みをかけた試合である。
 東京駅発の「あさひ1号」で新潟へ向かう。僕の乗り込むべき車両に向かう途中にも青赤な人が何人かいる。目的の車両前には青赤親子がいた。なんか、だれかと一緒に写真を撮っている。
 お! 堀池だ! 堀池はFC東京の正GK。シーズン途中にケガのため、ここ数ヶ月は試合には出ていないけど、FC東京を見始めた頃は堀池の背中越しに東京の攻撃を見ていたから、なんとも思い入れのある選手である。
 そこで! 鞄の中からごそごそとデジカメを出し、一緒に写真を撮ってもらっちゃいました(^^)
 でも、周りに人がいなかったので堀池と肩を並べて自分でパチリ。そう、恋人達が撮るような感じで(^^; ちょっとズレちった・・・

 どうやら、FC東京のBチームと同じ車両になったらしく見たことのあるような、無いような選手達が居た。彼らがトイレにいった帰りがけに僕の隣の席においてある(隣が居なかったから)青赤のマフラーを見た後、僕を見てニコッと笑ってくれるのが、なんとも照れくさい。

 新潟に着くと、思いの外、寒くない。かなりのFC東京ファンが来ているらしく駅では、そこら中で見かける。
 新潟市陸上競技場は新潟駅から一駅隣の白山と言う駅にある。駅からは10分ぐらい歩くんだけど、スタジアムに近づくにつれオレンジな人達(=アルビレックスな人達)が増えてくる。
 「アウェイなんだ。彼らも負けるチーム(アルビレックス)を応援しにくるわけじゃないんだ」と、こちらも気合が入ってくる。

 キックオフの1時間前にはスタジアムに着いたんだけど、それでもかなりの人が入っていた。ゴール裏の人数で言うと新潟よりFC東京の方が多いぞ。キックオフの30分ぐらい前に、ゴール裏は見にくい(元々、見づらいんだけど競技場はトラックがあるから、もっと見づらい)と言うことでバックスタンドに一斉、移動。

 キックオフから異様な盛り上がり。気合が入っているのは、選手も同じ事。なんか、ボールへの寄せがめちゃくちゃ早い。ここ数試合は見られなかった、ボールへの執着心のようなものがヒシヒシと感じられる。
 自然とサポートする側も盛り上がってくる。ただ、青、赤の横断幕(縦断幕?)を左右に振りながら「荒れ狂う」のは、どうかと思う。
 もちろん、「荒れ狂う」のは、大切だし自然な動きだと思う。でも、試合が見られないんだよ。暴れたくて新潟まで来ているんじゃないじゃん。闘う気持ちだろうがなんだろうが、試合を見るのが一番大事なんだよ。

 そんなこんなで盛り上がっている内に、佐藤ユッキーのマイナス方向への折り返しから、加賀見がビューティフル・ゴール。振り向きざまの綺麗なシュートだったよー。

 と、東京ブギウギを歌っている中、もくもくと煙が!
 発煙筒っす!
 群がる警官。暴れるサポーター。楽しいッス。
 前半終了。とにかく、楽しく「セクシー」な試合展開。ハラハラとする場面もあるけどこういう試合を見せられると、そこが新潟と言うこと、J1昇格に向けての大事な試合と言うことは、忘れてしまう。

 ふと携帯を見ると友人Oから着信がある。電話してみると「おい! 遅えよ。加賀見の得点で1−0だよ!」と興奮気味に話す。
 「うん。知っているよ。目の前で決めてた」「え? も、もしかして新潟に行っているの?」「うん。来ているよ」「なんだよー。京都にいるのかと思った」。

 そう、元々21−23日の日程で京都旅行を決めていたのである。ところが、先週の負けを見て、「行くしかない」と心が動いたから、21日の新幹線を東京−京都から東京−新潟に変更していたのだ。しかも21日の宿をキャンセル。新潟−京都の夜行まで手配しての新潟入りなのだ。

 後半に入ってもセクシーな試合は続く。
 新潟のフリーキックなど、かなりきわどい場面はあるのだが、ゴールポストに助けられたり(シーズン中は、さんざん嫌われたのに・・・)、1−0のままゲームは続く。この頃になると、僕はかなり前の方でのサポートとなる。声も出す。これぞ、闘いなのだ。
 後半40分を過ぎると徐々にボールを回し始める。今までだったら、この時間稼ぎもハラハラすることがあったんだけど、なんか余裕がある。シーズン最後の試合だからだろうか、ボール回しを楽しんでいるように見える。

 pi−

「あれ? 終わったの?」「終わった?」「おー!」
 なんか、なし崩しにゲームセット。

 サポーターの一人が言った「おれ、J1でもJ2でもいいや」。
 納得。
 そりゃJ1の方が注目を集めるのは決まっている。でも、「J1のFC東京」、「J2のFC東京」を応援しているんじゃない。「俺のFC東京」を応援しているんだよな。しかも目の前で、あんな試合をみせれちゃね。
 さぁー、ここからが「今までで一番長い30分(大熊監督談)」が始まるのだ。

 そう、FC東京は90分で勝った。延長戦に入った大分トリニータが負け、もしくは引き分けのまま、終わってしまえばFC東京はJ1昇格なのだ。
 サポーター達は、まったりと、そして先ほどまでピッチで行われたいた試合の余韻を引きずるように大分の結果を待っている。

 待っている間は、「FC東京をもっとも愛している男」から「おーい、携帯とかiモードで大分の結果、見るんじゃないぞー。友達から電話がかかってくるかもしれないから、電源きっとけ!」とか、笑いあり、笑いありの状況だった。と、言ってもそれは前の方ばかりで、ふと後ろを振り向くと、みんなマジめな、重ーい 雰囲気なんだよね(^^;
 延長前半が終わったらしく場内アナウンスが入る「延長前半を終わって、1−1の引き分け」と。
 それは、引き分けぢゃない。同点と言うのだ>ウグイス嬢。

 そんなムードの中。「そろそろ30分経つぞ」とそわそわし始める。

 !!!!!!

 選手が控え室から跳んでくる!
 「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 サポーター飛び出す。うれし涙はない。ただ、笑いと歓喜渦巻くグラウンド。誰も止めようとしない(いや、そんなわけはないが)。
 いつしか、僕もふっかふかのグラウンドを飛び跳ねている。ユッキーと肩を組む。アマラオを握手する。なんだか、わからん。FC東京の社員が「新潟の人に迷惑ですから、戻って下さい」との声で徐々にスタンドに戻り出す。

 スタンドに戻ってもまだ暴れている。しらない兄ちゃんに持たされた「FC東京・祝・昇・格」のプラカードを持ったまま。歓喜の東京ブギウギ。

 ふー、至福のひとときが終わる。

 そろそろみんなが帰りだそうとすると、サポーター一同整列。

「グラウンドに入って」
「ごめんなさい」

と、頭を下げる(^^)
 みんなパラパラと帰るんだけど、僕はどうせ一人だし、横断幕とか片づけを手伝う。でも、どうせスタンドでくっちゃべっているんだったら、手伝えばいいのにな、みんなも。

 ・・・。無事に新潟駅に到着。寝台列車まで時間があるので、新潟駅近くの銭湯を探す。新潟駅は表と裏がビックリするぐらい分かれていて、当然、裏で探そうと出口へ向かうと。

 向こうから大人の集団が、「あれ?」と思って歩いていると先頭のおじさんが、僕のバッグについている青赤のマフラーを見て「ありがとうございました」と頭を下げた。

 大熊監督じゃん!

「あ、どうも」と訳の分からない挨拶をすると、後ろから堀池が! Bチームかと思っているとユッキーが! 握手してもらって「おめでとう。ありがとう」と声をかけるとユッキーは「ありがとう。またスタジアムで」と。うー、たまらん! と思っているとアマラオだ! 何故か「コングラッチュレーション」と英語で声をかけてしまった(^^; ブラジル人なのに。
 アマと固い握手を交わすと後ろにはサンドロ、アウミールが。サンドロとミールさんは、ニッコニコしながら、握手してくれたよ。

 そんな至福のひとときを過ごしながら、新潟の熱い銭湯に入って寝台列車に乗って京都まで・・・

 いやー至福のひとときでやんしたよ。

おしまい。

これで、99年のサッカー観戦22試合目(東京戦=18試合、J1=3試合、その他=1(JOMO CUP))