プロローグその1



突然オートバイに乗りたくなりました。いえ、突然という表現は正しくありません。
(例え周りの目にはそう見えても)
オートバイに乗りたい欲求は随分昔からありました。
秘めた思いとでも言いましょうか。

十代後半には、御多分に漏れず私もオートバイに憧れました。親の反対などもあり、
オートバイへのエネルギーは車へのエネルギーへといつしかすり替わっていきました。
しかし、オートバイへの憧れはなくなってしまったわけではありません。

それからずっと、その思いは強くなったり弱くなったり、近くなったり遠くなったり。
会社員になったばかりの頃(20年ほど前)は、今のように土曜日は完全に休みではなく、
それに、日曜日に教習をしている教習所は少なく、物理的にもかなり難しいものでした。
「縁がなかった」というのが今まで手に出来なかった最大の理由でしょうか。
それでも、街で見かけるオートバイに目を奪われ、「オートバイか、いいなぁ」
なんて思っていました。

どうして今頃?
他の人はどうか知りませんが、私は複数の事柄に同時にエネルギーを注ぐだけ
器用に出来ていません。
就職、結婚、育児、地域活動、PTA活動。
仕事以外にもエネルギーが必要でした。その時はその時なりに時間とエネルギーを
消費してきました。
いろんなことが一段落して、何となくほっとして、
何か情熱を傾けるものはないか、そんな思いがふとよぎりました。
そして眠っていたオートバイに対する憧れが、むくむくとわき上がってきたのでした。
物理的なもの(時間と金)が、(ほんの少しではありますが)余裕が出てきたことも
理由の一つです。

それともう一つの大きな理由は、年齢的なことです。はっきり言って私は若く
ありません。(現在41歳)
体力的にも下って行く一方です。
そして何より、「もし今乗らなかったら、一生あのオートバイにまたがる感触、
身体で風を切る爽快感、加速感を味わうことが出来ないのではないか」
(実際私は、若い頃何度か友人のオートバイの後ろに乗せてもらったことが
ありますが、ナナハンの後ろに乗せてもらったときは、あまりの加速に息が
出来なかった記憶があります)と言う強迫観念にも似た思いです。
「思い残すことがないように」なんて、そう言えば「折り返し点」は過ぎたのかなぁ。

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さて、「オートバイ取得プロジェクト」は開始されました。
プロジェクト第1段階は「家族の理解を得る」です。
妻帯者で子どももいる私は、家族の協力、理解なしには
家庭内で孤立(笑)してしまいます。
「家庭円満」を目指す私としては、それは避けなければいけません。

ある日、夕食の団らんの時、何気なく「実はオートバイに乗りたいんだけど」
と切り出してみました。
突然の私の言葉に一瞬呆気にとられたようでしたが、まさか本当のこととは思って
いないのか、いつもの気まぐれと思っていたのか、単なる冗談と思っていたのか
定かではありませんが、こんな言葉が返ってきました。
「オートバイなんか危険じゃないの?」これは奥さんの言い分。
「お金がいっぱいいるんじゃないの?」これは小学生の長男の言い分。
前にも書きましたが、私はもう若くはないので、若い頃のような走りはするつもりは
ありませんし、(サンデードライバーですが)長年車を運転している今だからこそ
危険を回避する術を心得ていると自負しています。
お金の問題にしても、長期的な計画を立てればクリアできると信じています。

そして、オートバイに対する情熱をうち明けました。家族は黙って聞いていましたが、
これで布石は打てたと実感しました。それからしばらくはその話題を出さず、
家族サービスに熱を入れました。

しばらくして、長女が図書館に行くというので一緒に行きました。
その時ふと、オートバイの本が目に付きました。
ぱらぱらとページをめくってみました。
「オートバイは危険な乗り物じゃない」「ルールを守って乗ろう」そんなありきたりな
内容でしたが、私の行動力に火をつけるには充分でした。

図書館を後にした私は、長女を伴い近くのバイク屋さんに行きました。中古のミニ
バイクがいくら位するのか市場調査するためです。
自転車でちょっと走ったところにあるそのバイク屋さんには、4台ほどの中古ミニ
バイクがありました。一番安いものは6万円。その上が7万3千円。
それから1万円刻みで値段が付いていました。
バイクを見ていると、店の人が出てきました。
「うちのバイクは全部整備済みだから、後は登録料と消費税、それに自賠責保険だけ」
6万円のバイクが、実際には7万6,7千円いるようです。

私の考えるシナリオはこうです。
まず、中古ミニバイクを手に入れ(もちろんどこかで資金を調達しなければいけないわけですが)
オートバイの感触、ヘルメットに慣れておき、それから教習所に通おうというものです。
もちろん、教習所に通う足としても最適です。
実は私、20年近く前、ミニバイクに乗っていたのです。ソフィアローレンが「ラッタッター」
とテレビCMし、ブームになった頃です。
確か「ロードパル」と言ったと思います。その頃はヘルメットが義務づけられておらず、
ヘルメットをかぶるのは今度が初めてです。

今年いっぱいは厄年なので少し自重して、年が明けると教習所に通う予定です。
それまでに教習所にかかる費用を貯めておかなければいけません。
ホームページで調べてみると、普通免許を持っていれば、費用は11万円位。
もちろん補習はその都度お金がいります。

順調に行けば(行けば)来年の暖かくなる頃には晴れてを免許取得。
念願のバイクはローンを組んで・・・などと考えています。

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さて、プロジェクト第2段階は「ミニバイクを手に入れる」です。

前にバイクを見に行ってから2週間ほどして、今度はまた違うバイク屋さんを
見に行きました。(チェーン店なのか同じ名前のバイク屋さん)
そこも5,6台の中古バイクがあり、しばらく眺めていました。
店の人が出てきたので「クレジットカードは使えますか」と聞きました。
「問題なく使える」という答えを確信していた私はその後の「使えるけど5%ほど
の手数料はお客さんに負担してもらいます」と言う答えに面食らってしまいました。
誤算でした。カードのボーナス払いで、と予定していた私は、少し意気消沈して帰って
きました。

何かいい方法はないか。いろんな思いが頭の中を駆けめぐりました。
奥さんに包み隠さず話し相談しましたが、なかなか色好い話は出てきません。
何度かの相談(説得?)の後、現金を出してもらえることになりました。
感謝感謝。(ちゃんと奥さん孝行するからね)

4月1日(いきなり日記風)
2週間ほどした土曜日、前回行ったバイク屋さんに行きました。
一番安いバイク(値段は6万5千円)が2台ありました。一台はブルーのホンダ、タクト。
もう一台はブラックのスズキ、アドレスです。見た目はほとんど同程度、メーカーの
好みだけか。
店の人が出てきたので、いろいろと質問。エンジンをかけてもらったり、またがってみたり。
その日は天気が良く暖かかったので、私以外にもお客さんがひっきりなしで、店の人は、
あっち行ったりこっち行ったりと忙しそうでした。
その分私はゆっくり見ることが出来ました。
「エンジン音はスズキの方がいいように思うよ」「こっちはタイヤ新品だから」
いろいろ聞いた結果、スズキのアドレスに決定。

次はヘルメット。
この前来た時見せてもらっていたフルフェイスのヘルメット(ホンダ製)が
とっても軽かったので、迷うことなく決定。
色は目立ちやすい白。

ここで見積もりを立ててもらうと、
バイク本体 65,000円。
登録料    5,000円。
ヘルメット 15,900円。
消費税    4,295円。
自賠責(2年)9,500円。

合計    99,695円。
10万円だーーーーー。
(奥さんには9万円で買えると言ってありました)

「いくらかまけてくださいよ」
そう言うと、「うーん、百円単位の端数ぐらいなら・・・」
と言うことで、9万9千円。ガソリンは満タンで話が決まりました。

「月曜日に登録しますので、火曜日には渡せますよ」やったー「じわじわと夢に
近づいている」胸は高鳴るばかりです。

そうそう、店の人に「任意保険は?」と聞かれました。
「現在車の保険に入っているんだったら、おそらく”バイク特約”をつけられると思うから、
保険屋さんに聞いてみた方がいいですよ」と言われました。
翌日、早速保険会社に電話してみました。
「対人対物の保険で、掛け金が一ヶ月あたり700円ほどプラスになります」とのこと。
自分には保険はかからないけど、ここは一つちゃんと入っておかなくっちゃね。
「じゃあ、それでお願いします」保険もこれでOK。


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