乗り替え日記1



いかん、いかん。また何やら「ムシ」がウズウズと動き出してしまった。
最初のうちは「バイクに乗れれば何だっていい」なんて思っていたのだが、
スーパーシェルパに乗り始めて半年、まだ千キロそこそこだが、「何か
違う」と思い始めてきた。

確かにスーパーシェルパはいいバイクだと思う。まず車体が軽い。車幅も
狭いのでとり回しが非常に楽で、駐車スペースにも困らない。それにこの
クラスでは珍しく、250ccちょうどあり、ライバルのセローやSLなどの中
途半端な排気量とは、ほんの少しの違いでも、それが余裕につながるのだ
と思う。低速のトルクも太いように思う。ゴーストップの多い街中では乗
りやすいと思う。



しかし不満もある。出足が遅い。特に低ギアでは回転が上がらない。無理に
上げるとエンジンが割れそうな音を発する。ブレーキが効かない。車と同
じペースで走っていて、前の車がブレーキを踏んだので止まろうとしたが
止まらなく、こわい思いをした事が何度かある。高速が辛い。ライディン
グポジションがほぼ直立しているので風をもろに受ける。90km/hを超え
ると風圧に疲れ、それ以上スピードを上げようと思わなくなる。シートも
かたい。一時間を超えるとお尻が痛くなる。将来的にはタンデムしたいの
だが、二人乗りには適さないであろう形状のシート。ガソリンタンクが小
さいので給油間隔が狭い。排気音が(好みの問題だろうが)耕運機を連想
させる。などなど。

要は「バイクに何を求めるのか」なのだと思う。
乗る前に抱いていたイメージと、実際の感覚とのギャップもある。
免許を取るまでは「オートバイらしいオートバイに乗りたい」、つまり、
ネイキッドのスポーツバイクに乗りたい、と常々思っていた。
教習所に通うようになり、CB400SFの重さを思い知った。「こんな重い
バイクに本当に乗れるようになるのか」不安になり、いつしか「バイクに
慣れるまでは、オフバイクに乗って練習しよう」と思い始めた。
その思い通り、卒業と同時にスーパーシェルパがいいタイミングで見つ
かった。そして、ようやく慣れてきた(と思う)。

さて、そろそろ次のステップに進んでもいいのではなかろうか。(などと
自分を正当化してみる)スーパーシェルパは私に充分なスキルを与えてく
れた。(と思おう)そうだ、乗り替えよう。
そうと決まれば、早いほうがいい。スーパーシェルパを高く買い取って
もらう上でも。俄然テンションが高まってきてしまった。

では車種の選択である。維持費の上から、やはり排気量は250cc。タイプ
は勿論ネイキッド。となると、現行ではホンダのホーネットと、カワサキの
バリオス2だけである。中古を遡ればまだまだある。スズキのバンディッド。
ヤマハのジール。しかし、現行でない車種というのは、やはり気分のいい
ものではない。となると二者択一である。

インターネットのホームページで、各車種のインプレッションを載せている
ページがある。これは大変役に立った。実際のユーザーの生の声である。
バリオス2のインプレは概ねこうである。良いところは、「エンジンがよく
回り速い」「シート下に結構荷物が入る」「排気量の割に車体が大きい」
など、後「値引きが良かった」なんて言うのも目立った。悪いところは
「ブレーキの効きが悪い」「始動性が悪い」「どこからかオイルが漏れる」
などである。この短所はちょっといただけない。
一方ホーネットの良いところは「スタイルが良い」「エンジンがよく回り
速い」「低速もトルクがある」「乗りやすい」「足つきが良い」「音が良い」
などであり、短所としては「燃料計がない」(これは古いタイプのみ)
「シート下に荷物が入らない」「ガソリンキャップが(給油の時など)とれ
てしまう」などであり、走行とはあまり関係ないところでの話である。
特に大きな長所も、大きな欠点もないのがホンダ車の特徴か。
スーパーシェルパのブレーキの効きの悪さに閉口していた私は、そこで選択
すべきバイクはホーネット以外ないことに気がついた。

車種は決まった。カラーは出来ればブルーが良い。インプレに「色が綺麗」と
書いているのは、みんなブルーである。確かにホーネットのブルーは綺麗だ。
他の車種で、あまり気に入ったカラーに出くわさないが、これだけは綺麗だと
思う。

スーパーシェルパを買ったバイクショップで買うつもりで、ホームページや
雑誌広告を見てみた。走行の少ないシルバーのホーネットがあるようだ。
しかし、電話するともう売れてしまったらしい。赤いホーネットが安くあった
が、真っ赤なバイクに乗るほど若くはない。「じゃあ、新車買っちゃおうか」
などと考え始め、スーパーシェルパの査定も兼ねてショップに行った。
まずは査定である。スーパーシェルパは29万円でこのショップで買った。
走行は1,300kmほどである。20万円近い数字を期待していた私は「16万やね」
と言う言葉に愕然とした。それでもホーネットの夢を捨てきれない私は、一応
見積書を書いてもらった。車両価格に諸経費を含め53万円。下取りを引いて、
37万円を現金とローンで賄わなくてはいけない。三年近くローン地獄か。

その日はそのまま家に帰り、色々と気持ちを整理してみた。ホーネットは欲しい。
バイクがすき。でも、毎日乗るわけではない。スーパーシェルパに半年乗った
ペースで行くと、10,000km乗るのに四年以上かかることになる。何か勿体ない
気がしてきた。ならば、もう一度中古車を探してみよう。特に近所でなくても
良いではないか。そう思い、中古車雑誌を探してみた。しかしやはりブルーの
ホーネットは割高なようだ。

守口のショップにブルーのホーネットが載っていた。地図を見ると、家から
そう遠くない。98年式(三年落ち)、走行5,000kmほど。値段は38万円。
電話するとまだ残っている。諸経費込みで442,700円と言うことである。
安くはないが「まあまあ」である。後は、スーパーシェルパをいくらで下取って
くれるかだ。「今から行く」と言って電話を切った。行く道で考えた。まず査定
をしてもらおう。下取り16万円以下では話にならない。「さいなら」と言って
帰ってこよう。最低でも18万円。そう、18万円ならいい。それなら2万円値引
きしたのと同じだ。

店に着くとチャパツで人の良さそうな店主が出てきた。とにかく査定額が気に
なっていたので、「先に査定して下さい。額によってはすぐに帰るから」と言った。
店主はわかりましたと言い、スーパーシェルパを一通り見てこう言った。「いくら
でとって欲しいですか」そんな質問をされるとは夢にも思っていなかったので、
来る道で考えていた「18万円」が、思わず口に出てしまって、しまったと思った。
そう、もっとふっかければ良かったのだ。ダメで元々、23万円位言えば良かった。
しかしもう遅い。言ってしまった。しばらく考えていた店主は、「うちで買って
くれるんならいいですよ」少々悔しさは残ったが、とりあえず思い通りになった。

現車を見せてもらった。綺麗なブルーだ。目立った外傷はない。クラッチがおか
しいのは「勿論直します」と言うこと。ブレーキオイルやエンジンオイルも全て
新しくなるらしい。目利きのない私はいつまで見ていても何も発見できそうにない。
まあ、こんなモンでしょう。

見積書の作成である。諸経費を込めたところから査定額を引く。端数も査定額に
上乗せしてくれた。ますますもって、もっとふっかけておけばと悔しさが蘇る。
しかし、端数も引かなかった近所のバイクショップは一体何だったんだろう。
残金は26万円。頭金を6万円入れ、残り20万円をローンにしてもらった。
U字ロックもつけてくれると言う。ローン審査の間、しばらく店主と雑談した。
さすがにバイクの話は豊富で面白かった。コーヒーも出してくれた。雑談もなしに
口のきき方もぞんざいな近くのショップが、ますます腹立たしくなってきた。

ローンの申込書と住民票を週明けにも送れば、今度の金曜日には手続きが完了する
らしい。「じゃあ、土曜日に取りに来ます」と言って店を出た。一週間後には
晴れて私もホーネッターだ。



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