柏子所貝塚は米代川の左岸、能代平野に面した洪積台地の北端に位置する、縄文後期から晩期にかけての遺跡。

日本海岸には原因がハッキリしないが、貝塚が少なく、叉あっても貝層が薄く且つ大部分がマシジミ・ヤマトシジミなど淡水産貝類を主体とする。
しかし本貝塚は貝層が薄いが、貝類の大部分が海水産である点が珍しく、昭和30年には県の史跡に指定されている。

 縄文海進が著しい縄文前期には、能代海岸周辺は長い砂浜と砂丘列が現れていたことから、汽水化した後背湿地がヤマトシジミなどの生息環境に適していた。
しかし後期から晩期になると海退に伴い汽水域から鹹水域へと漁場が変化した。

コタマガイ・サルボウ・アカニシ・ベンケイガイなど日本海岸では余り例が多くない海水産が主体となっている。特にコタマガイが過半を占める。
昭和30年以降三次にわたる発掘調査の結果、8体の屈葬人骨が土壙墓から検出された。
人骨には抜歯が認められ、頭蓋には赤色ベンガラが塗布されたり、頭蓋正面の中央部に穿孔が施されたり、鋭い割れ口が認められたり、当地独特の風習が窺える。

 出土遺物には土器・石器、土偶・耳飾りなどの土製品、勾玉・管玉・石剣などの石製品、刺突具・腰飾などの骨角製品、貝輪などの貝製品のほか、自然遺物としては貝類のほか獣骨・魚骨・炭化したクルミなどが検出された。
ここでは県内では珍しい骨角製品を紹介する。

遺跡現場 現場雪景色

貝塚は出羽丘陵の末端基部に風堆した砂丘に立地し、現在の水田面は標高約9mで、貝層の傾斜面上部では標高約30mと推定されている。

 砂丘は遠望すると、一連の台地に見える。

以下シカ骨製刺突具、シカ骨製カンザシなど、イノシシ骨製でベンガラが塗布された腰飾ほか、シカ骨製腰飾などそしてイノシシの骨とクジラ骨製アクセサリーの順番で紹介する。

 角製品の大部分はシカ骨製刺突具で、研磨により先端部を鋭く加工している。
刺突具に逆刺を欠いている点は他に余り例がなく、当地の刺突の対象であった獣類・海獣類について他例と比較・考察する余地が多いと云う。

 髪飾りはシカ骨製カンザシが主体で、頭部に抉りを入れたり、溝状の文様を彫刻している。シカ角・クジラの骨製カンザシも見られる。叉イノシシ骨製ベンガラ塗り腰飾も出土している。

 骨角製品は種類・量とも豊富で保存状態も良く、貝塚が少ない日本海沿岸においては重要な文化財であり、叉完成品が多いと云う点でも極めて貴重な資料と云える。

一方貝製品はベンケイガイ製腕輪を中心に800点余りが検出されたが、完成品が極めて少ない。しかし製作工程を知る上では優れた資料と云われる。
貝殻を擦り磨きながら孔を刳り抜き、孔の縁辺や殻の内外面を研磨して行く方法が取られていたが、刳り抜きの途中にある半製品が多く、製作工房跡地であったかも知れない。
貝輪の出土例には、新生児と思われる人骨の右手首にはめられたケースが見つかり、当地では貝輪が一般的に流行していたとも考えられる。

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