反田蜆塚貝塚は三反田丘陵の中央部の中丸川を望む標高約22mに位置する市域最大の貝塚で、東西約200m・南北約150mの規模を有している。

茨城県内には約300ヶ所の貝塚が残されているが、当貝塚は当時の動・植物遺体はじめ生活痕跡を如実に示した遺跡。
縄文早・前期の貝塚は一般に規模が小さいと云われるが、当貝塚の規模・出土遺物等は特筆に価する。
当貝塚は明治20年以降十数回の発掘調査が重ねられ、貝塚としては縄文前期から後期にかけて形成されているが、遺跡としては縄文草創期から晩期の各時期をはじめ弥生・古墳時代にかけての複合遺跡として知られている。

貝塚現場現場拡大写真

 近の平成11年市道の拡幅工事に伴う調査を含めて、これまでに大小7ヶ所の貝塚群が見つかっている。

 貝層から露出したヤマトシジミ・ハマグリ・アカニシ等が生々しく散乱している。

貝層断面貝層断面U

 ぎ取られた貝層からは、ヤマトシジミをはじめアワビ・サザエ・ハマグリなど30種に及ぶ貝類が確認され、又イノシシ・シカ・クジラなど脊椎動物やイヌ・カワウソなどの骨格も見つかっている。

 中でも今回の調査で検出された土偶・土製品・骨角製品について、各々3点づつ続けて紹介する。

 特に土壙に埋葬された形で出土した縄文後期土偶は、ハート型土偶を代表する逸品

 ハート型土偶の側頭部に孔が貫通し、紐を通して吊り下げたと見られる。
両肩に渦巻文が見えるが、背の中央にはS字状の渦巻沈線文があると云う。
もう一体の土偶は妊娠を表わす膨らんだ腹部にヘソがあり、腰と側面に粘土紐が貼られている。

 土製品では今回の調査で見つかった鳥型をした土器の把手に注目したい。

 クチバシが鋭くワシ・タカなど獣禽類の頭部を象っていると見られる。
この地域の信仰にかかわりがあるように思われる。
又土器片を加工して造った土器片錘や土製耳飾り・土笛等も発見されている。

 骨角製品では、釣針・ヤス・銛・牙斧・髪飾り・ヘラ状製品など生活用具・装身具が検出されている。
装身具には、小動物の犬歯を利用して作ったペンダントやイノシシの牙を利用した腕輪・けつじょう耳飾りなどが見られる。

 上記で説明した9点を、以下連写で紹介する。

成人女性人骨

 多く出土した人骨の中でも、左腕に装着された13個のベンケイガイ製の腕輪に注目が集まる。

 この他にも幼児の伸展葬の埋葬骨も検出されている。

石器類石器類U

 製石器・打製石器他実用的石器の他に、石棒・石剣・石刀など宗教的石器や硬玉製の玉類などの装身具も検出されている。

 この他にも多くの住居跡・土壙などの遺構も確認されており、数々の貴重な出土資料などの解明・研究が進むにつれ、三反田縄文ムラの全容が明らかになることを祈念する。

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