縄文人が何らかの楽器を手にしていた確証はない。しかし彼らが楽器にしていた可能性の高い縄文遺物が指摘されている。

 人間の本性には五感があり、自然界の音、風の囁き・水のせせらぎ・鳥のさえずり・雷鳴等縄文ムラの全ての音に反応し、生活の一部として自ら取り込んでいたと考えられる。

 特に生活の重要な一部であった祈りの表現には動作・しぐさの他に音による演出が、神秘の世界に誘い込む手段として不可欠であったと想像出来る。

 縄文人が人工的に作り出す音は、自然発生的に辿り着いた音作り、いわば無作為の行為に「叩く・ふく」が考えられる。

 太鼓らしき・笛らしきモノが縄文人の音の原点であったと思われる。

 有孔鍔付土器は縄文の音を秘めた太鼓用具ではなかったかという有力な説がある。
この土器の特異な形態と特殊な文様は、食物とは関係のない何か新しい役割を分担していたと考えられる。

長野富士見町有孔鍔付土器

 孔鍔付土器の文様は普通の土器と比較して一風変わった、踊るヒト形などに趣向が凝らされたり、全面が赤く塗られたりして、格別の扱いを受けている。

何かを暗示しているか、求めているような文様に見える。

神奈平塚市の有孔鍔付土器

 孔鍔付土器は大小の差ははなはだしいものの、基本的形態は良く似ており、土器の口にシカ・イノシシ等の皮を張って音を呼び戻したと考えられる。

 大小土器の差は大きければ大きいなりに、小さければ小さいなりに、音の変化を求めて使い分けていたのではないか!

奈良県内出土の縄文土笛

 土笛は掌の中に納まるほどの大きさで縄文中期頃に登場したと云う。
縄文後期から晩期にかけては亀の子形の土笛が発達したと云われる。

 太鼓と笛を使った無形伝統文化的遺産が今日全国あちらこちらで見受けられるように、余程音色の相性が良いと見られる。

 土笛の他にも石笛が見つかったり、又葦竹製の笛もあった可能性が高いと云う。

 太鼓と笛の織成す混成音色・リズムにより縄文人の血が通い、縄文人の生活に彩りが添えられたと思われる。

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