お・ま・け
僕はユキを抱き締めたまま、眠り込んでしまった。ヤマトに乗り込んで以来、まともに眠っていなかったし、腕の中の温かい存在が眠りに誘ったのだ。
だけど、油断大敵、ここがヤマトの中だということを失念してしまった僕がいけなかった!
ふと、気がつくと僕とユキにはブランケットが掛けられていた。
つまり、誰かにこの光景を見られた、ということだ。
「げっ!」
片手で頭を押さえながら、唸らずにいられない。
一体誰だろう、真田さんとか、山崎さんなら、助かるけれど、多分それは無いだろうなぁ。
僕のうめき声を聞きつけた、ユキが目を覚ました。ゆっくりと身を起しながら
「おはよう。」
「あぁ、おはよ。」
「どうかしたの?」
軽くあくびをかみ殺しながら尋ねる。
僕は無言で、ブランケットを持ち上げた。
「まさか。」
「その、まさか。」
二人で顔を見合わせながら苦笑するしかない。
「誰だと思う?」半分、困ったようにそして 残り半分は面白そうに彼女が問う。
「すぐに判明するだろうなぁ。」
「そうね。今日は朝から大変かもね。艦長代理♪」
ニコニコ笑う彼女の頬を両手で挟みこむ。
「笑い事じゃないぞ。で、眠れたかい?」
「もう、ぐっすりと。」
「そりゃ、よかった。ベッドマット代わりを務めた甲斐があったと言うもんだ。」
ふざけた口調に、彼女が笑う。
それだけで僕には充分だ。
彼女の頬に軽くキスを落として、僕は立ち上がった。つられて彼女も。
掛けられていたブランケットを畳みながら、開口一番は誰かしら、なんて呟いている。
ちょっと頭が痛いけれど、しょうがないか。
僕は大きく背伸びをしながら、
「ユキ、食事一緒に行こう。部屋に戻って着替えてからだけどな。」
「ふふふ、ひとりじゃ行きたくないんでしょ。」
「バカ言うなっ。」
僕は、コツンと彼女のおでこを叩いた。
「もう、痛いじゃないの。」
笑いながら、応戦してくる。
こんな何気ないやり取りが嬉しくてたまらない。
アルファ星よ、どうかこの笑顔が守れるように力を貸して、僕はまた心の中で願っていた。
そして、その後の騒動は、予想通りの展開を迎えた。
犯人?達は、しっかりと写真まで撮っていたのだ。
「古代さんの寝顔って子供みたいですね〜。」なんてのたまいやがる。
それにしても、男の寝顔なんて撮って何が楽しいんだ!
ちなみに、彼女の寝顔は髪に隠れていて、まともに撮れなかったそうだ。(本当か?)
もし、撮ってたら、力ずくでも全部取り上げてやるぞっ、なんて思ったのは当然の反応だろう。
別の意味での、悩みは増えたけれど、彼女に対する噂が、この騒動で少し沈静化したのが救いだった。
それとも、これもアルファ星の力なのだろうか?
もし、そうならば感謝しなくてはならないのだろうな。きっと。
END
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