東京シティの空港に降り立ち、僕はほっとして肩の力を抜いた。
やっと帰ってきた、そんな気分だった。いつもは比べることもできない遥か彼方の宇宙空間を飛びまわっているのに、そう感じる自分が不思議だったけど。
時間は、午後3時を少し過ぎたところだ。計画が中止になったため期間を切り上げて帰ってきた僕はそのまま家に帰らず、真っ直ぐに司令本部へと出向く。
計画の中止は、兄貴にも伝わっているはずだったが、一応報告をしておかなければならない。
もっとも、僕の身の上に起こった出来事は一言も言うつもりは無いが。
それに、本部にはユキがいる。
この1週間連絡の一つもできなかった。
島を出発する際、岡沢が1本だけなら連絡を取れるようにしますが、と言ってくれたが、気持ちが落ち込んでいた僕は、それを断ったのだ。
あの時下手に連絡したら、勘のいい彼女に何か気づかれてしまうのじゃないか、という危惧もあった。
でも、・・・今は無性に彼女の顔が見たくてしょうがない。
許可を得て通された執務室に兄の姿は無かった。
秘書の話によると、会議中なので後30分程かかるので、ここで待っていて欲しいとのことだった。
先日は、カフェテリアに追いやったくせに・・・、と一瞬思ったが、多分南部重工からの報告を聞いて、きっと兄も気にしているんだろうな。
こんな結果になるなんて思ってもいなかっただろうし。
僕は誰もいないことをいいことに、ソファにスーツケースを乱暴に放り出してドカッと体を投げ出した。
座り心地のいいソファにそのまま身を沈める。
ここが家だったら、そのまま眠ってしまいたい気分だった。流石に疲れが出てきたのだろうか、じっとしていると、なんだか目を開けているのも億劫になってしまう、ちょっとだけ、と思いつつ僕は瞼を閉じる。
―――そして、僕はまたあの白い世界をかいま見ることになってしまった。
何も無い白いだけの世界が目の前に広がる。
あの神経を引っかいていくあの細い泣き声が頭の中に響き渡ってくる。
そして、またもあの白い影の姿が現れる。姿はまるで蜃気楼のように頼りないのに、だが響き渡る声はまぎれもなく、僕へと届き僕を引き裂いていく。どす黒い血が足元から湧き立ち、まるで虫がはいずるように僕の体へとまとわりつこうとする。
( 罪深いお前に存在意義はない。 )
( 何故お前はそこに居続ける。 )
僕はどうすることもできず、その声を聞き続けることしかできなかった。
耳を塞ぎたいのに、指一本動かすこともできず、声にならない声で「やめろっ」と叫び続けるしかできなかったのだ・・・。
そして、声はそのまま僕をいたぶる様に切り刻んでいく。
不意に体が揺り動かされ、僕はハッとして目を開けた。見上げた先にあるのは、見慣れた兄の顔だった。
「あぁ、兄貴・・・。」
呟きながら、身を起す。僕は全身に汗をかいていた。なんでもない振りをしながらも体が震えていないかと、確かめる為に自分の指先を見つめた。
僕の動揺を兄には知られたくなかった。
「大丈夫か?進、うなされていたぞ。」
じっと自身の手を凝視する僕に向かい、心配気な顔で、覗き込んでくる兄の視線が痛かった。
「ゴメン、つい眠ってしまって。」
質問をはぐらかして答える。
本当は次に兄が何を尋ねてくるんだろう、と内心ビクビクしてしまっていたのだけれど。
だが・・・・。
「すまない。」
兄は、いきなり僕に深く頭を下げた。突然のことに呆気にとられた僕は目を見張ってしまった。
そんな僕に向かって再び、兄は、すまない、と謝罪を繰り返した。
「に、にいさん?」
考えもしなかった兄の態度に目を白黒させている僕に向かって、言いにくそうに顔を歪めながら
「岡沢から・・報告を聞いた。俺も岡沢と同様に本気にしていなかった。だからたいしたことはないと思ってお前に話を振ってしまった。」
言葉を探しているのだろうか、少し間を置き兄は一気に喋る。
「お前を危険な目に合わせて、嫌な思いもさせてしまった。兄として、いくら謝っても足りないが謝らせてくれ。すまなかった。」
再び、頭を下げようとする兄を僕は慌てて止めた。
そりゃあ最初は、何も情報をくれなかった兄に対して腹を立てたけど、2度目は自分が選んだのだ。
それに、何よりもこれは自分が承諾して引き受けた仕事だったのだから。
それなのに、ここまで、あの自信家の兄に謝られてはかえって居心地が悪すぎる。
「もう、止めてくれよ。僕はなんとも思っていない、今日は一応報告に来ただけで別に文句を言いにきたわけじゃない。」
「しかし、」
言葉を遮り、僕は立ち上がり姿勢を正して兄に、いや先任参謀に向かって敬礼をした。
「報告します。先日の南部重工からの依頼の件ですが、先方の判断により開発は一旦中止、それに伴い自分は予定を繰り上げて戻ってまいりました。」
目に戸惑いを残したまま、答礼をしながら先任参謀は「ご苦労だった。」と僕をねぎらう。
お互い報告が終わると、何を言うべきかわからず二人とも沈黙してしまう。
けれど、口火を切ったのは、兄のほうだった。
「進、お前は何を見たんだ。」
「・・・・・・・・・」
言えなかった、僕は唇をかみ締めたまま視線は床の一点を見つめ続けた。
「教えてくれないか。」
「・・・・・・・・・」
言うわけにはいかない。あの時のことは、こんな僕よりも兄の中に深いキズとなっているはずだ。
僕は愛する妻をあんな形で失ってしまった兄が今でも可哀想でならないというのに。
そして、今も最愛のサーシャと別れて、仕事に没頭している振りをしている兄の傷をほじくり返すような真似はできなかったし、絶対にしたくはなかった。
自分一人の胸に秘めておけるのなら、僕はそちらを選ぶ。
「・・・不思議な体験だった。それだけだよ。」
僕は、兄の視線を避けた。身を屈めて放り出していたスーツケースを手に取る。
「疲れたから、帰るよ。兄さんが心配するようなことは何もないから、もう忘れてくれよ。」
「進。」
これ以上尋ね続けられると、またあの白い影が頭の中をよぎってしまいそうで僕は話を強引に打ち切った。
無理やり顔に微笑を浮かべながら、
「じゃあ。」
まだ問いたげな兄に向かって軽く手を上げて執務室を早足で後にした。
帰る、と言ったものの廊下を歩きながら、足は自然にユキのいる秘書室の方へと向いていた。
腕時計を見るともう定時を過ぎている。忙しい彼女のことだから部屋に行ってもいないかもしれないが、いなくても何処にいるか、くらいは教えてもらえるだろう。
でも、できればいて欲しいんだけど。
無性に彼女の顔を見たいと願う僕がそこにいた。
ひょいと、頭だけを覗かせると彼女はそこにいてくれた。
「やぁ。」
いきなり現れた僕の姿に驚いた彼女は固まっていた。
目をパチクリさせて驚いている、その顔が可愛くて僕はクスクス笑ってしまった。
同時に心の中では、いてくれて良かった、なんて叫んでいたのだけれど。
そして、さっきまでどんよりとしていた気分が、少しだけれど軽くなっていった気がする。
我ながら単純なものだ。
「ただいま。ユキ。」
ゆっくりとした歩調で部屋に入り、彼女に近寄る。
「古代君、どうして?」
見上げる顔に、予定じゃ、まだまだ先の帰還のはずなのに、と書いてある。
「予定変更、だからさっさと帰ってきちまった。」
「予定変更って?」
聞きたげな彼女の唇を指で軽く封じる。
「話すわけにはいかないんだよ。・・・判るだろ。」
僕を上目遣いで見つめながら、渋々彼女は頷いた。そんな様子にほっとして、部屋の中をグルリと見渡した。
「まだ仕事終わらないのか?一緒に帰ろうと思って寄ったんだけど。」
「・・・あと少しあるの。すぐに片付けるから、待ってて。」
気を取り直して、いつもの笑顔で僕に笑いかけると、そこに座っててとイスを指差す。
言われるまま引き寄せたイスに座りながら、彼女の様子を眺める。
テキパキと仕事を片付けていく彼女を見ていると、本当に楽しそうに仕事をするんだよな、なんて思ってしまう。
看護婦と秘書とヤマトの生活班長、よくもまぁこんなに色んな仕事をこなせるものだ。
自分なんて専門馬鹿もいい所だよな。と心の中で自嘲せずにいられない。
しかし、ストレスが溜まるだろうに、喰えない輩ばかりいる、こんな司令本部の中で働いていて。
ふと、そう思った僕はつい尋ねてしまった。
・・・今までこんなこと聞いた事はなかったのだけれど。
「なぁ、秘書の仕事って楽しいのか?」
えっ、と彼女が振り向いた。
「どうして、そんなこと聞くの?」
「別に理由はないけど、なんとなくそう思ってさ。」
「そりゃ嫌な事だってあるし、忙しいけど、その分やりがいはあるわよ。」
手に持ったままの、ファイルをトントンと叩きながら澄ました顔をしている。
「看護婦の仕事と、どっちが好きだ?」
「うーん、難しい質問ねぇ。」
「なぁ、どっちだよ。」
「・・・どっちなんて選べないわよ。もう、今日はどうしたの?変な質問ばっかりして。」
「・・・・・何もないよ、ちょっと聞きたかっただけだから。」
自分が振った話題ながら、なんだか立場がなくなってきたような気がして、僕はそっぽを向いた。そんな僕に
対して彼女は肩をすくめて、目だけで笑っていた。
「さ、終わったわ、帰りましょ。こ・だ・い・くん。」
パソコンの電源を落としながら、からかうように声を掛けてくる彼女に向かって肩をすくめて見せて立ち上がる。
「今日はテイクアウトで何か買って帰ろう。」
「どうして?」
時間はまだ早いのに、と不思議がる彼女の肩を抱き寄せ一瞬頬に唇を寄せる。
「・・・・ユキちゃんとのんびりしたいから。」
そのまま耳元にささやくと、途端に耳まで真っ赤に顔を染めた彼女がバチンと僕の背中を思い切り叩いた。
ちょっと痛かったけど、今度は僕が、その顔を見たまま笑ってしまった。
こういうユキッて、マジに可愛いんだよなぁ。
「本当に妙なことばっかり覚えてくるのね。もうっ!!」
照れた彼女は真っ赤に染まった顔のまま、抱き寄せた僕の腕を払いのけて怒った振りをしたままヒールの音を高く響かせながら部屋を出ていく。
僕はそんな彼女のあとを追い部屋を後にした。
食事を終えた後、僕は隣に座っている彼女の膝にコロンと頭を乗せて目を閉じる。
彼女は何も言わずに、ただ僕の髪を撫で続けてくれていたのだが。
やはり興味があったのだろう。静かに尋ねてくる。
「ねぇ、どんな所だったの?」
ウトウトしかけた僕は、面倒くさそうに答えるだけだ。
「・・・・綺麗な島だったよ。」
「それだけ?他にはないの。」
「・・・言えないって言ったろ。」
目を閉じたまま僕は答えた。そっけない答えにちょっと膨れたような気配がするけど目を開けることができなかった。
本当に綺麗な島で、最初はユキにも見せたいって思ったけれど、やっぱり心の半分は、あんな体験はもうしたくない、と思う。
それを彼女に感づかれたくなくて僕は話を打ち切りたかった。
「南の島か、ねぇ、いつか行きたいわ。」
「・・・・・いつか・・・連れてってやるよ・・・。」
話しかけてくる彼女の言葉を聴きながら、話半分に答え、僕はそのまま眠ってしまった。
だって彼女の膝が温かくて、撫ぜてくれる手が優しくて心底安心している僕がそこにいたのだから。
翌日から宇宙勤務に戻るという日の午後、岡沢から改めて連絡が入ってきた。
とりあえず中止という形ではなく、完全にあの開発機の研究は中止になったのだという。
それに伴い、僕の搭乗したCT−Vと数機作られていた機体は、スクラップにされるのだという。
迷惑をかけたと謝罪する彼に、僕のほうも謝罪するしかできなかった。
そして、もう二度と巡り合うことのないCT−Vに向かって、心の中でそっと別れを告げた。
その連絡を受けたあと、一人で英雄の丘へと出掛けた。
自分の中に漂っている複雑な思いを、沖田艦長に聞いてもらいたかったのだ。
ユキや兄貴には、その後も何も言ってはいない。
それどころか、ふとした拍子に湧き上がるようになってしまった不安を隠す為に、我ながら馬鹿なことしている、と自覚しながら、彼らに対してふざけてしまっていた。
・・・・そんな自分にも少々疲れていた。
目の前に、沖田艦長の姿を臨みながら、心の中で話しかける。
と、言っても自分の中で、何一つ整理がついていないのを自覚させられるだけだったけれど。
影ってくる陽の中で、沖田艦長の顔までが憂いを帯びているように見えてくる。
そして、つくづく己が自立していない甘ったれた奴なんだと、叱責を受けてしまった気分にもなってしまった。
振り返ると、眼下に拡がる都市の様が目に突き刺さる。正直、この光景は嫌いだった。
造られた美しさはあるけれど、それが傲慢な人間達の所業があからさまに映し出されているとしか、僕には思えない光景だから。
ふと、あの白い影が目の前を過ぎった気がした。
落ち込んでしまった気分が、益々鬱々としたものに変わっていく。
ぼうっと立ち尽くしていた僕の目に、階段をゆっくりと上ってくる2人の人影が映った。
逆光の中、それが誰なのか凝視する僕に、そいつらはゆっくりとした歩調で近づいて来る。
「ようっ」
軽く手を上げて声を掛けてきたのは見なれた人物達だった。
「・・・・島、南部。」
ぼそりと、呼びかけると、僕の真ん前に立つと妙に神妙な面持ちをしていた南部が、いきなり頭を下げた。
「!!???」
驚いている僕に向かって、
「迷惑掛けてしまってすみません。」なんて謝る。
何のことだと、一瞬戸惑ったが、すぐに例の件だと思い当たった。
「・・・・なんでお前が謝るんだ。」
言い難そうに彼は
「一応、俺の実家ですし、詳しいことは教えてもらえませんでしたが、かなり危険な目にあわせてしまったみたいじゃないですか。」
「・・・お前と南部重工は関係ないんじゃなかったのか?」
「そうですけど、しかし・・・」
「だったら、忘れろ。任務上でのことなんだから、南部が気にすることじゃない。」
成り行きを見守っていた島が口を挟む。
「なぁ、何があったんだ。ユキも守さんも、お前の様子がおかしいって心配しているんだぞ。」
「 おかしい? 」
繰り返した僕に、真剣な顔をしていた二人が顔を見合わせた。
「まさか、バレてないなんて思ってたのか、お前。」
「・・・・・・・」
「この間も言っただろ、俺達を信用しろって。」
「・・・信用ならしてるさ、けど、言いたくないことだってあるんだ。頼むから聞かないでくれ。」
髪をかき上げながら二人に背を向ける。再び沖田艦長の顔を見上げた。
そして、そのまま言葉を繋ぐ
「―――心配掛けてすまない。でも、今は本当に話したくないんだ。」
海から吹いた風が、僕達をつつみ、後ろに佇む森の木の葉達を揺らして過ぎて行く。
ザワザワとした音が、耳の奥に響き渡る。
「古代さん。」
横に南部が並び立ち、同じように艦長の顔を見上げた。そのままの姿勢で
「じゃあ、今は聞きません。だけど約束して下さい。いつかは話してくれるって。」
横に立つ、自分より若干高い彼の視線と視線を合わせた。いつもと違う真剣な瞳がじっと僕を見据えていた。
そして島も同じように横に立つと、大げさなほどに大きな溜め息を吐いて、同じことを告げる。
「・・・・いつかな・・・。」
口の中で小さく呟いただけだったが、その声が聞こえたのだろう。二人の表情が和らいだ。
それを見た僕は感謝せずにいられない。
そして、とりあえずでもいい、鬱々とした自分に区切りをつけよう。そう、決心した。
そうさ、あの白い影が何を告げているのか今はわからなくても、何かあった時に頼りになる仲間が自分にはいるのだから。
何が有っても、きっと乗り越えられると信じよう。
その心の変化が態度にも現れていたのだろうか、沖田艦長の顔を見上げ続けていた僕の背を同時に思い切り二人が度突く。
いきなりのことに、思わずよろめき振り向いて二人をギリッと睨みつける。
「なにしやがるっ。」
悪びれない二人は、カラカラ笑うと大きな声で艦長に向かって文句を付け出した。
「沖田艦長、この馬鹿を思いっきり叱って張り倒してやってくださいよ。俺達の言うことなんてな〜〜〜んも聞きゃしないんですから。」
「そうですよ。それでいて、いっつも巻き込まれて、走り回されるのは俺達なんですからね。」
「お互い、苦労するよな〜〜、どっかの誰かさんのせ・い・で。」
「そうそう。」
黙っていれば、延々と好きなことをのたまいやがる。
「おまえらなーっ!!」
睨みつけたまま思わず拳を振り上げた僕を見て、二人は再びおどけたように笑った。
「おぉ、久しぶりにやるか。」
そんな僕に対して島が、構える。だが、目がしっかり笑っていた。
「子供じゃあるまいし、誰がっ。」
バツが悪くなり、ぷいとそっぽを向いた僕の姿に、ますます笑い転げている。
「じゃあ喧嘩の代わりに飲み行きましょうよ、勿論、古代さんの奢りで。」
いつものおちゃらけた雰囲気で、無遠慮に肩に手を掛けて顔を覗き込んできた南部の頭を僕は思いっきり引き倒した。
「なんで奢りなんだ。割り勘だ、割り勘。」
首をさすりながら、ずれてしまった眼鏡を掛け直している南部と島がお互い親指を立てているのをチラリっと横目で見ながら、二人を残して僕はズカズカ歩き出した。
また、うまく乗せられた。
と、ふてくされながらも、心の中で僕は感謝していたのだけれど。
それを知られるのが恥ずかしかったのだ。
英雄の丘から続く階段を下りながら、振り向かずに後ろを歩く二人に向かって話し掛ける。
「なぁ。」
「なんだ。古代。」
「・・・いつ、ヤマトに戻れるんだろうな。」
「そうだな・・・。」
「・・・・戻りたいですね。」
三人でしばらく茜色に染まった街と空の姿を見守る。遥かな向こうに広がる海も、同じ茜色に染まっていた。
そして、キラキラと反射する波の姿が目にまぶしかった。
だが、そんなしんみりとした空気を吹き飛ばすように
「でも、戻ったらあの地獄の訓練が待ち受けてるからなぁ。そん時ゃ、お二人とも手加減して下さいよぉ。」
両腕で自分を抱き締めるように南部がふざけて懇願する。
僕と島はその姿に爆笑してしまい、南部も大きく笑った。
チラリと見上げた英雄の丘から、沖田艦長がそんな僕らを優しく見守ってくれていた。
だが、次の航海が突然始まるなんて、その時の僕は想像もしていなかった。
END
Another World INDEX