オーストリア旅の思い出
2014年7月3日〜20日

オーストリアは北海道よりもやや大きいくらいで,北海道より北に位置する.けれどもこの年は予想外に暑かった.
降雨量も東京の半分以下なのに,天気予報は連日雨.しかし,朝方か昼過ぎに一度さっと降れば,あとはからりと
晴れて,雨の日も気持ち良く過ごせた.
オーストリアはこじんまりしているという印象だ.ガイドブックの地図を見て歩いてもすぐに目的地に着くし,列車での
移動も全く長距離ではない.人々はおだやかで,やさしい.これまでの旅行では「できるだけその国のことばで挨拶し,
いい印象の観光客になろう」と気を使っていたのに,今回は「ツァーレンビッテ(お勘定)」の他はついつい気をゆるして,
英語で済ませてしまった.観光客が多いせいでもあるが,それほど,英語が自然に通じる.特に,ウィーンでは日本語で
話しかけられた.「今夜,コンサートに行きませんか?」「ちょっと待って下さい」「おいしかったですか?」「さようなら」
彼らの方が気を使ってくれるのだ.
今回は「観光コースでないウィーン」に行きたいとの正さんの希望で行き先が決まった.彼の意気込みがいつもとは
ちょっぴり違う.というわけで,当日の朝に,「ちょっとここへ寄ってみよう」とか,散々歩いて疲れた後にさらに
「あのバルコニーを是非見ておきたい」という具合で,暑さのせいだけでなく,へとへとに疲れたというわけだ.
年のせいかもしれない.記憶力も悪くなって,明日行くための地下鉄の目的地と乗り換えの駅の名前や,列車の出発時間が
なかなか覚えられない.1日歩きまわったら,足の裏にまめができ,ふくらはぎが痛くなった.「いつまで2人で旅行できるかな」
なんて考えたりした.私が明日の予定を考えているのに,正さんは「昨日行った城はなんて名前だったかな」なんて聞いてくる.
旅行の報告を即座にフェースブックにアップしているのだ.そして,路面電車に乗ったら,私が次の駅の名前を必死で確認しよう
としているのに,のんきに居眠りをしている.それでも,ひとりで何度も中国に旅行したせいで,海外旅行の自立度は以前より
アップしたような気がする.
オーストリアの列車の時刻表はとてもよく整備されていて,すべての鉄道が一括で管理されている.そして,旅行の途中で
気づいたのだが,地方のバスの時刻表も列車と同じサイトで検索できる.すっかりシステム化されているのだ.
去年行ったドイツでは,直前まで運行時間や乗り継ぎに変更があったが,オーストリアでは3か月前に調べたのと運行時間の
変更は全くなかった.ドイツでは列車が遅れて,20分取ってあった乗り継ぎにも失敗したが,ここオーストリアでは,列車から
バス停まで歩いて5分なのに,乗り継ぎ時間5分という綱渡りも大成功で乗り込んだ.みんなとても親切に教えてくれる.
バスの運転手さんもとても親切だった.

 ウィーン-1

シュテファン寺院


ウィーンの紋章


王宮
7月4日(金)晴れ,ホテルから歩いてウィーンの街をめぐる

ホテルを出て少し歩くとシュテファン寺院に出る.ウィーンの中心だ.12世紀にロマネスク様式の教会として建てられ,後にゴシック様式に改築された.寺院を日本語オーディオガイドで回ったのははじめてだった.石造りの美しい説教壇がある.
エレベーターで北塔に登る.屋根にタイルで鷲の柄のウィーン市の紋章が描かれているのが見える.タイルの模様も鮮やかだ.塔にはプンメリンという巨大な鐘がつるされている.オスマントルコ襲来の折,トルコ軍が残していった大砲を溶かして造られたという.大晦日やオーストリア大統領の国葬の時に鳴らされる.シュテファン寺院の前の広場にはモーツアルトの髪形と服装の男性が立っていて,「今夜コンサートに行きませんか」と日本語で話しかけられた.
ペストの終結を神に感謝して建てられたというペスト記念柱,ペーター教会を見て,いよいよハプスブルク家の王宮へ.日本語オーディオガイドで,ハプスブルク家最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の妃エリザベートの波乱に満ちた生涯の物語を中心に豪華な部屋の数々が紹介される.銀器,金器,磁器など食器の数も膨大で宴会のテーブルに据えられたセンターピースはみごとなものであり,公式セレモニーの食事会で使われるナプキンは複雑な特別の折り方だと紹介されていた.
王宮図書館であったプルンクザール「豪華なホール」は,床から天井まで積み上げられた本の数々に圧倒される.大理石の柱も天井のフレスコ画もすばらしく美しい部屋だ.
王宮を外れた辺りにあるインフォーメーションでバッハウ渓谷の列車の時間を調べ,地下タバコ店で地下鉄8日間チケットを買ったあと,「観光コースでないウィーン」に紹介されたカフェハウスをいくつかみてまわる.18世紀からウィーンのカフェは社交と情報交換の場所だったのだ.
ホテル近くのレストランで夕食.ガイドブックに載っていた日本語メニューのあるレストランだ.日本人の女の子2人がウィーン西駅からわざわざ地下鉄に乗って来ていた.値段は高い.明日は違うレストランを探そう.日本語メニューがあっても,英語メニューがついていても,料理は結局よくわからない.量はやたら多くて,半分も食べたら,飽きてしまう.ヴィナーシュニッツェルはオーストリア料理の定番だが,子牛肉の平たい大きなカツレツが3枚もあって,付け合わせはじゃがいもだけだ.
ワインの赤と白をたくさん飲んで,正さんは早くに寝てしまった.

王宮図書館プルンクザール
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