2009年
チェコ・ポーランド-3.テルチ,オロモウツ
 
 コステレツから目的のテルチへはまた単線で,駅は少し離れたところにあった.待ち時間は1時間ほどある.ホームだけの駅は閑散としていて風が吹き通し,だんだん寒くなってきた.女性が一人,しばらくして年寄り夫婦,それから時間前には7,8人が集まってきた.ホームが低いので,正さんは重いスーツケースを列車に持ち上げるのに一苦労だ.
30分ほどで着いたテルチの駅も小さな駅だった.駅前にタクシーもバスも待っているわけではない.石畳の道を10分程歩いて旧市街のホルニー門に着いた.人はあまりいない.寂しいくらい静かだ.すぐに予約したペンションを見つけたが鍵が閉まっている.「しまった!何かミスったか.連絡忘れ?」顔が青ざめる.「今夜は路頭に迷うのか」ちょうど通りかかった小さい女の子を連れたお父さんに「予約しているのにペンションが閉まっていて困っている」と言うと,見に来てくれ,ドア横の呼び鈴を鳴らして「お客さんが来ているよ」みたいなことをチェコ語で叫んで,中の人を呼んでくれた.やさしそうな女性が出てきて歓迎の握手をしてくれ,ほっとする.
キッチン,キッチンテーブル,リビング,ソファー,ベッドルームが2つ,シャワールームの他にバスタブもある.家族経営のペンションなのだ.2階に自宅がある.おしゃれな調度類と鉢植えの植物.朝食はドアの外まで運んでドアをノックしてくれるとか.これまで泊まった中の最高の宿泊だ.

テルチ駅 
 
テルチ城
9月30日(水)曇り時々雨
テルチ城はチェコ人のカップルと4人で,チェコ語のガイドツアーで回った.チェコ語はわからないがガイドの目線で何を説明しているか想像できる.「ここは写真OKです」は英語で,そしてなんと「象の耳」は日本語で言ってくれた.天井の装飾がすばらしい.大広間の床は柄付きのフローリングで,見学コースに絨毯が敷いてある.説明の時だけライトを当てる.部屋も絵画も調度類もすばらしかった.アフリカの動物の剥製が部屋一杯に飾ってある.とら,わに,鹿,さい,等々.猟銃もこれらの動物を仕留めた人の肖像画も飾ってある.とにかく天井の飾りはこれまでに見たことがない程すばらしく,靴の上にスリッパを履いて,たくさんの部屋を見学できた.
少し雨が降っていたが,周囲の池の周りを散策する.静かで気持ち良い.大きな木々,沢山の実をつけた木,くぬぎとかマロニエとかくるみのようだ.池に映る赤い屋根の家々も美しい.
 
10月1日(木)曇り時々晴れ
朝起きたら霧.少し日が出ても雲はあまり晴れない.池の周りを散策する.街に出てみるとテルチの駅まで来ていた.迷っても教会の塔が帰りの道しるべになる.
昼すぎに出発.テルチからコステレツまで,来た時と同じ単線を戻る.コステレツからは予想通りやはりバスだった.コステレツでは担当者が出ていてバス停まで誘導してくれた.しかし,どこまでバスなのだろうか.ブルノまでは列車で2時間以上の距離だ.結局,列車の2駅間がバスだったようで,私たちの荷物がバスから降ろされるのを窓越しに見て,あわててバスを降りる.そして,何度も確認してあれだと言われた列車に線路から乗り込むと列車はすぐに動き出した.検札が来てOKだったのでやっと一安心.
ブルノは大きな町だった.多くの路線が各地から集まってきているらしい.到着したホームから一旦外に出て,駅の正面から入り直して乗り換えのホームに向かった.列車の表示はまだ私たちの乗る列車になっていない.スーツケースが重いので,正さんが荷物を見ている間にホームに上がって確認してくることにした.ホームには別の列車が止まっている.女性の車掌さんに尋ねたら,早口のチェコ語で説明し始めた.するとそばにいた女性が英語で一生懸命に説明してくれた.そしてもう一人若い女性が「何かお役に立てれば」と寄って来てくれた.チェコの人はみんな親切だ.「この列車が出た後ここで待っていればいいのね.あなたもオロモウツに行くのね」「そう,そのとおりよ」安心して正さんを迎えに行く.
オロモウツに着いたのは7時前であたりはもう薄暗かった.ここのホテルは駅前で,簡単だと思っていたのになかなか見つからない.駅前が広く,工事をしているので道路を渡りにくい.親切な若い男性が声を掛けてくれてやっと見つかった.広い通りをはさんで駅に面した8階建てのビルなのにすぐに見つからなかったのは,ホテルの看板が小さく,ネオンサインにも照らし出されていなかったからだ.6階の室に落ち着いてやっと人心地がついた.ホテルのレストランで夕食を取る.
 
 


オロモウツ・ホルニー広場
 
 10月2日(金)曇ったり晴れたり
ここオロモウツがチェコ最後の町になる.駅のインフォーメーションで両替の場所とトラムチケット売り場を聞く.丁度両隣だった.両替所の閉鎖時間と明日土曜日も開いていることを確認する.チェココルナからポーランドのズオティーにも替えられそうだ.帰りのも含めてトラムチケットを4枚買う.駅を出た所で日本人の年配夫婦に「旧市街地へはどう行けばいいの,タクシーで行こうと思うのだけれど」と聞かれたので,トラムに乗って4つ目で降りればいいと教えてあげる.何も下調べしないで来ているのだろうか.
聖バーツラフ教会の横の大司教博物館は展示物が数多く見ごたえがあった.各部屋の職員が次はどこを見学すれば良いかていねいに教えてくれる.案内してもらわなければ見落としそうな程たくさんの展示会場がある.ここにも金の馬車が展示してあった.入場料はシニア料金で半額,その上このチケットでオロモウツ美術館にも入れるという.この美術館には広重の浮世絵が展示されていた.他にも数多くの絵画がある.また,いろんな年代の本の表紙と裏表紙が展示されていて,これもなかなか興味深かった.気がついたらもうお昼,クネドリーキの付いたポークとキャベツスープのチェコ料理を食べる.私たちもだんだん慣れてきて,食べたい物を注文できるようになったというわけだ.
旧市街地を端まで歩き,帰りは川沿いの静かな道を帰った.川幅は狭く,流れはゆるやかだ.左手の町との間は高い崖になっている.川との間に自転車用の道が続いていて,ここは恋人の散歩道になっていた.
帰りのトラムでは年配の女性が子供を立たせて私に席を譲ってくれた.チケットに打刻している内に空席が埋まってしまうのだ.チェコの人は皆親切だ.しかし私も席を譲られるほど年寄りに見えるということらしい.
   つづく