2005年6月
フランス-2


古代闘技場アリーナ


フォンテーヌ庭園
6月10日(金) ニーム,晴れ
今朝は一人でパンを買いに行く.焼きたてのバゲットが美味しい.
ゆりをキャデラッシュに送っていく.昨日と同様に高速を使う.昨日問題なくキャデラッシュまで行けたのでゆりも油断していた.「あ,今の所」と言っているうちに車はキャデラッシュで降り損ねてあっという間に次のマノスクまで行ってしまった.マノスクはゆりのボスが住んでいる町だ.引き返したが,キャデラッシュに着いたのは9時過ぎていた.別に出勤時間が決まっているわけでもなく,この時間に出勤してくる車もあったが,ゆりは今日は早く仕事を始めたかったようだ.「金曜日には植物の実験室が早い時間に閉まってしまうのよ.何かフランス的でしょう?」とゆりは文句を言った.
今日は,プロバンスでは西の端にあるニームに行く予定なので,キャデラッシュで再び高速に戻ったが,標識を読むのが遅れてエクスで一般道に降りてしまった.フランスでは橋桁マークの青色標識が高速道路で,緑が一般道路だ.去年はこれを理解していなくて,高速で行くつもりがいつも一般道に出てしまっていた.高速料金は日本ほど高くはないのだが,高速道路に入る前に大抵一般道への出口が作られているのだ.
サロンドプロバンスから,さあ今度こそと高速道路へ入ったが,肝心の運転手さん,ちょっと疲れたからとパーキングに入って眠り始めた.昨日遅くまでメールでフランス旅行の報告をしていたに違いない.ちょっとむっとしたが,黙って待つしかなかった.
ニームは美しい町だった.駅の駐車場に車を入れて出かける.ニームの古代闘技場アリーナは外から見ただけでもその大きさがよくわかった.アリーナを通り過ぎて北へ行くとギリシャ神殿メゾンカレが見えた.道路向かいに近代美術館カレダールが建っていてその対比がおもしろい.さらに少し北に行ったところにフォンテーヌ庭園があり,マーニュ塔に登るとニームの町が一望できた.
夕食は羊肉を焼いて,ソーセージを3種類茹でる.付け合せは茹でたじゃがいも,サラダ,ポタージュスープ.外で食べるより作って食べた方がずっとおいしい.
6月11日(土) レボードプロバンス,晴れ
毎朝おいしいパン屋さんにバゲットを買いに行く.手元だけ小さい紙に包んでくれるので,歩きながら焼きたてのいい匂いがしてくる.
洗濯をしてからマルシェで大きなたらを一匹買った.明日はBさんのところで日本料理を一品作ることになっている.生ではもたないから三杯酢でしめることにする.野菜,果物,チーズ,ワインも買う.
2時にミゲルを迎えに行って一緒にレボードプロバンスに行く.ミゲルはゆりの同僚,エクスの南端に住んでいるので,毎朝キャデラッシュのバスに一緒に乗り合わせるポルトガル人である.
レボードプロバンスはかつては城塞都市であり,中世にはボー家が勢力を誇った所だ.アルミニウムの鉱石ボーキサイトはこの町の名前から来ている.蜂蜜のクレープを買って食べた.
帰りは遅くなったが,マルシェでムール貝を山盛り買っているので,家で夕食を作る.ベーコンが足りないと言うとミゲルが買いに行ってくれた.ついでにオリーブを買ってきてサラダを一品作ってくれた.ワインを入れたムール貝のスープ,そら豆とグリンピースとベーコンのスープ,パプリカ,オリーブ入りサラダ.
ミゲルは私たちの話もていねいに聞いてくれる.夕食の後,正さんの写真集の話をしているうちに随分遅くなってしまった.11時半,ゆりのアパートから結構距離があったと思ったけれど,ミゲルは歩いて帰って行った.


レボードプロバンス


ハト小屋


ジュークJouques
6月12日(日) Bさん宅で,風が強い
朝もう一度マルシェに行くが,やはり生で使える程新鮮な魚は売っていなかった.昨日の三杯酢に漬け込んだたらを使おう.ごはんを炊いて寿司太郎を混ぜる.錦糸玉子ときゅうりといんげんを飾って,おふの味噌汁を作ることにする.12時半にジュークのBさんの家に行く約束だったが,大家さんのデニスが魚を焼く時にとハーブを一束持ってきてくれて話していったので少し遅くなる.Bさんはエプロンをしてパンタード(ほろほろ鳥)を2羽オーブンで丸焼きにしているところだった.偉い学者さんなんだけど,エプロン姿がとてもよく似合っていた.6歳と8歳の娘たちはプレゼントのぬり絵を気に入ってくれてすぐに色鉛筆で塗り始めた.
食前酒にパスティス,私たちが作ったちらしずしと味噌汁は前菜となり,メインはおいしいソースのかかったほろほろ鳥とゆでたじゃがいも,サラダ,その後奥さんお手製の大きなチョコレートケーキ,それからエスプレッソコーヒーとさくらんぼ.テラスで気持ちよい風に吹かれておしゃべりしながらゆっくりと食事は進んでいった.
庭は広い芝生で,周囲にさくらんぼ,オリーブ,アーモンド,ハーブ,竹,ぶどうなどが植わっている.二人はパリ出身.職場に近く,おしゃれで綺麗なこの町とこの家が気に入っているそうだ.私たち3人でジュークの町を少し散歩して帰ってくると,大きなヨーグルトの入れ物に一杯さくらんぼが入っていた.私たちのおみやげにと奥さんと子どもたちとで庭のさくらんぼを摘んでくれたのだ.
昼はご馳走だったので,夕食はソーメンにした.
6月13日(月) アンモナイト,晴れ
今朝はおいしいパン屋さんは休みだった.土曜日に営業していたので月曜は休みにするらしい.土日に全部のパン屋さんが閉まってしまうことのないように調整しているようだ.
8時半,スムーズにキャデラッシュから高速に乗る.正さんが夜間中学の理科の先生とメールで話して,フランスではアンモナイトとヨーロッパの歪んだ大地を見るようにと勧められ,今日の行き先はディーニョとシステロンとなった.マノスクよりさらに北の町だ.ディーニョの観光案内所でアンモナイト岩石のことを尋ねると町の地図をくれて,その地図の東の外れの方に行けばいいと教えてくれた.半信半疑ながら行ってみるとはたして,アンモナイトの地図と案内板が立っていた.大きなアンモナイトが張り付いた岩壁がある.近くで子どもの団体が集まって先生の話を聞いている.歩いて1時間,2km程の見学コースがあるらしい.少し歩いてみるが山道なので引き返す.先生のお話はまだ続いていた.案内板によるとアンモナイトの見学コースがまだ他にも5,6箇所あって,駐車場やレストランの表示もある.歩く距離の短そうな次の地点にいくことにする.ところが地図とアンモナイトの標識に従って進んだつもりなのに,別の駐車場に着いてしまった.ここの見学コースはさらに長くて2-3時間,6kmとあり,川に沿っての登り道になっていた.楽な見学コースを目指して再度トライするが,アンモナイトの絵の付いた標識は見つかるが結局道に迷ってしまった.しかし,静かで小さな村,美しい景色にたくさん出会うことができた.
システロンへは一般道路を行くつもりだったのに,知らない間に高速に入ってしまっていた.システロンでガソリンを入れる.50ユーロ.ここは岩の層がむき出しになった大きな山の縁に,川に沿って張り付いたように家々が並んでいる.


アンモナイト


システロンSisteron
 帰宅後エクスで買い物の後,今日はちょっと危ない目に会いそうだった.ATM機でお金を下ろして機械を離れようとした時,浅黒い男性が来て,「まだ終了していないからカードを入れ直してCOLLECTIONを押さないといけない」と言う.私は全部終わってお金も受け取ったと言うのだが,その男は「あんたはイタリア語を話すのか何語を話すのか,終了しないと次の人が使えなくなる」と言ってくる.たまたまそばに来た女性が又「そのとおり,カードを入れ直さないといけない」と言う.しつこく言われてついカードを入れて言われたボタンを押すと,「いやいや違う,暗証番号を入れろ」と言うのでこれはおかしいと思ったがその時にはカードを取られそうになっていた.巧妙に手で隠してカードを抜き取ろうとしているのを正さんが気づいて,その男の腕をきつく握ってカードを取り返してくれた.すると,男も女もあっという間にいなくなっていた.ご用心.ご用心.
 

マノスクManosque
 6月14日(火) リュベロンの北の村,雨のち晴れ
ゆりの出勤にあわせて早起きする.6時過ぎにパンを買いに行くが,おいしいパン屋さんはまだ開いていなかった.別のパン屋さんで買う.
雨が降り出したので,急遽,行き先をベルドン峡谷からルシヨンに変更.
レンタカーはアパートから歩いて5分程の駐車場に毎晩入れている.いつものように駐車場の入口で清算したが,そのカードを取ってくるのを忘れていた.出る時に気づいて取りに戻ったら,まだ清算機を使った人がいなかったらしく,カードはそのまま残っていた.ほっとして出ようとすると時間超過になって,1ユーロの追加料金を取られた.
ゆりを送った後,マノスクへ寄る.マノスクは大きな町だが,まだ朝早く店もレストランも開いていないせいか,エクスより殺風景に見えた.マノスクを出ると雨はさらに激しくなった.
 
アプトApt
 西の方,アプトへと向かう.道端で少し休憩した後,アプトに着いた頃に雨はほとんど上がっていた.アプトの町は花が沢山飾ってあって,おしゃれなお店もあり美しい.



ルシヨンRoussillon
さらに北西に進んでルシヨンに着いた.ここは観光地のようだ.丘に沿って建つ家の赤い屋根と,赤や黄色の壁が色鮮やかである.山肌の剥き出たところの土は鮮やかな赤や黄色の層を成している.これがフランスの家の色なのだ.後で家に帰ってからゆりに,赤や黄色の顔料の採れるオークルの道が観光コースになっているのに歩かなかったのかと訊ねられた.雨のため急遽行き先を変えたのでゆりに詳しく聞いていなかったのは残念だった.
ルシヨンの駐車場では料金マシンが壊れているらしく,人が集まっていた.誰かが電話して,係りの人が来るところらしい.大分待たされているらしい人たちは「きっとぶらぶら来るんだから今から食事に行く時間だってあるよ」などと冗談を言いあっている.いつ出られるのかひたすら待つしかない.駐車場に入ってくる車があった.その車がチケットを取ってバーが開いたところで,待ちぼうけの一人がそれを手で止め,立ち往生の車を一台逃がしてやった.そこへ丁度係りの女性がやってきた.当然怒るのかと思ったが,「お願い.おろして」そして,バーを持ち上げていた男性がそれを離し,係りの人も笑顔で「メルシー」と言って円満解決となった.
 地図を見ながらさらにリュベロンの小さな村々,Joucas,Mursを訪ねる.小さいが美しくてとても素敵な村だった.一方,セナンク修道院は観光地で,中国人などが大勢観光バスで来ていた.広い畑のラベンダーはつぼみがまだ固く花は咲いていなかった.7月にはきっと一面紫色になるのだろう.帰る時間を気にしながらさらにゴルドに向かう.緑の木々の間に薄い茶色の壁と赤茶色の屋根の点在する美しい村だった.
ゴルドのすぐそばのカバイヨンから高速に乗って,あとは余裕で帰るつもりだったのに,反対のアビニヨンの乗り口の方に行ってしまい,さらに悪いことにそのまま反対方向の高速に乗ってしまった.標識がまだすんなりとは読めない.ゆりが帰ってくる7時半までには買い物も夕食の仕度も済ませておこうと思っているのに,いつも何かハプニングがあって,あわててしまう.夕食は4種類のソーセージのポトフ.フランスの野菜は人参も玉ねぎも小さい.