フリブールの町


ケーブルカー

フリブールはフランス語圏とドイツ語圏の境の古い町で,ドイツ語ではフライブルクだ.商店街のローザンヌ通りをぶらぶら散歩し,チーズフォンジュの店に入る.メニューにあるのはフォンジュの種類.何々チーズと何々ワインと何々をミックスしてある云々.お店の人が勧めてくれた一番無難な白ワインミックスをとりあえず一人前頼む.パンと茹でたじゃがいもが出てきて,これをチーズにつけて食べる.ミックスサラダも食べきれないほどの量で,一人前で十分お腹いっぱいになった.

6月7日(土)雨のち曇り,スイスフリブール
まだ雨模様ながら9時過ぎに出発.町の中をサリーヌ川が流れていて,崖の上の町と下の町に分かれている.サリーヌ川にかかるツェーリンゲン橋から見下ろすと,緑の山間に赤い屋根の家がぎっしり建ち並んでいるのが見渡せた.坂道をどんどん下って行く.下の町のベルン橋には屋根が付いている.水場のそばの広場に市がでていて,テントで工芸品や衣類や雑貨を売っていた.
ケーブルカーで上の町に戻る.このケーブルカーは100年も前に作られたもので,水の力で動く.昼食後,上の町の坂道をゆるやかに登って行くと古い城壁が見つかった.ここは12世紀にできた城壁に囲まれた古い町なのだ.
今日はサッカーのワールドカップ,スイス-ポルトガル戦があるので,道行く車にはスイスやポルトガルの小旗が立てられているのだが,だんだんその数が増えてきた.ローザンヌ通りでは子供が顔にペインティングをしてもらっている.広場ではスクリーンが張られ,舞台のセッティングが始まっている.ホテルでちょっと休憩したあと再び外に出ると,人通りはすっかりなくなっていた.試合が始まったのだろう.ローザンヌ通りの脇道に人が集まっていた.通りに向いたテレビ画面の前でビールを飲んだり,つまみを食べたりしている.朝から準備されていた教会前の広場でも大勢がにぎやかに楽しんでいた.夕食に入った店にもサッカーボールや旗が飾りつけられていた.夕食はフォンジュシノアにした.しゃぶしゃぶにした肉に,からしやケチャップやタルタルソースをつけて食べる.
スイスは負けた.夜10時,外でさわいでいる声が聞こえてくる.サッカー観戦をしていた人たちが帰ってきたのだろう.夜12時頃まで,遠くでさわいだり叫んだりの声が聞こえていた.夜3時,まだ,がやがや誰かが議論し合っているような声がすると思ったら,窓が開いていた.掃除の人が開けていったらしい.
6月8日(日)晴れ,フランスへ,ストラスブール
フリブールからベルン,そしてバーゼルでフランスに入る.スイスバーゼル駅からフランスバーゼル駅へはまるで単なる乗り換えのように,歩いて通り過ぎるだけだった.パスポートのチェックもない.フランスと書いてある下の自動ドアを通り過ぎるともうフランスだ.フランスバーゼル駅の方が閑散として薄暗く感じられた.バーゼルはフランスでいうと東の外れにあたる.駅を出ると,列車はすぐに広い平野に出た.麦畑,じゃがいも畑,そしてやがてぶどう畑が広がった.
朝買ったサンドイッチを列車の中で食べる.ストラスブールの駅で,明日のコルマール行き往復切符を買った.少し並ばなければならなかったが,時刻表も手に入れることができた.
スイスでは寒くてウールの長袖セーターを着ていたのに,天気が回復したせいかストラスブールは暑かった.ホテルに着いたのは1時前だったが,部屋に入れたので,半袖に着替え,少し休んでから出かけた.ストラスブールはイル川の水路に囲まれたおしゃれな町だ.旧市街地は世界遺産に登録されている.ノートルダム大聖堂は大きくて実に立派だった.日曜日で,大聖堂にはミサに参加する人しか入場できない.息を切らせながら,大聖堂の塔に登った.
通りや広場はビールやワインを手に歓談する観光客で一杯だ.私たちは日蔭に腰掛けて,メリーゴーランドが回っているのを眺めながら,大きなアイスクリームを食べた.みんな楽しそう.プチフランスをぶらぶら行く.白壁に黒い木骨組のドイツ風の建物が並んでいる.
6時頃,ホテルのベッドに寝転がって休憩しているとほんとうに寝てしまった.8時,長袖を着て,夕食に出る.串に刺したラムの定食セット,クスクス,ナン.少し雨がぱらついたが,大したことはない.夕方の風の中を気持ちよく散歩しながら帰る.



カイゼルスブルク


リクビル


コウノトリの郷リボービレ
6月9日(月)晴れ,コルマール
コルマールまでは列車で約30分だった.今日はレンタカーでワイン街道を回る.
前の客は少々手間取っているようだ.私たちは日本で予約していったのに,それでも待たされた.町の地図もくれない.車は一般の駐車場に置いてあって,自分で探さなければならない.マニュアル車しかない.そして,正さんはバックギアの入れ方がどうしてもわからなかった.私たちの車が出ると見て,後ろにやってきた女性ドライバーに聞く.「バックの入れ方を教えてほしい」と頼んだが,何を聞かれているのかまるでわからないといった様子.「ちょっと乗ってやって見せて」と頼むと不審げながら乗り込んで操作,チェンジレバーを一度引っ張り上げてから入れる.「あー,なんだ.そうか」私たち2人が一斉に頷いたので,その女性もやっと私たちのトラブルに合点がいったらしく,にっこり笑ってくれた.メルシー,ボク.
目的地の方角,西北に進むと,ワイン街道Rue De Vinと書かれた茶色いぶどう模様の観光用標識が見つかった.行き先も「カイゼルスベルクKaysersberg」合っている.やっと慣れてきて,田舎道を快適に走り,ほどなく到着した.駐車場に止めたが,今度はキーの抜き方がわからない.まさかキーを付けたまま観光して回るわけにはいかない.さんざんさわりまわった後,今度は正さんが自分で見つけた.とりあえず食事をしてからにしようと入ったレストランでは「太陽の下がいいか,陰がいいか」と聞かれる.暑いのに日に焼かれながら食事なんてとんでもない.
カイゼルスベルクはローマ時代から中世にかけて作られた古いスタイルの民家が並び,窓辺や水飲み場のゼラニウムが美しい.町は城壁で囲われており,古い門も残っていた.インフォーメーションで地図をもらう.ここはシュバイツァー博士の故郷で,シュバイツァー記念館があった.
Rue De Vinの標識に従って行った次の町リクビルRiquewihrも美しくかわいい町で,建物がもっと大きく,観光客ももっと多かった.ここでもワインを試飲できる.私たちはおみやげにワインを買った.
急いで次の町に回る.リボービレRiveauvilléはこうのとりの里で,屋根の上にこうのとりの巣があるのが見えた.
5時過ぎ,オフィスが閉まる前に無事車を返却して少しコルマールを歩くことにする.トイレに行きたかったが,駅のトイレはもう閉まっていた.町中でトイレを見つける.30セントだ.10セントコインを2枚入れた後,5セントコインを入れたが受け付けられない.2ユーロコインもだめで,初めの10セントコインが返却されないままトイレを諦める.アルザス風木骨組みの家が並ぶコルマールの旧市街地をぶらぶらしてからストラスブールへ帰り着いた.
6月10日(火)晴れ,ストラスブールからナンシー
8時半,路面電車からは職場へ向かう大勢の人が降りてくる.朝の出勤時間帯だ.降りてくる人にマガジンを手渡す人たち.込み合った道路の向こうにケーキ屋さんを見つけた.ハム,チーズ,玉子,レタス,ツナ,えび,ごま,昼食用サンドイッチを調達.早めに駅に行って,ナンシー行きの列車番号が出るのを改札前で待つ.ホームに出ると,列車は準備完了で待機していた.
12時ナンシー着.ランスからパリへの切符を買っておく.聞いていた通りの長い行列で,その最後尾に並ぶ.
早めにホテルに入り,少し休んでから半袖に着替えて出発.カリエール広場,スタニスラス広場,アリアンス広場は世界遺産に登録されている.凱旋門,ネプチューンの門などロココは金ぴかで派手な様式だ.
夕方,正さんのたっての願いで旅行鞄を買いに行く.駅のインフォーメーションで聞いて,気に入った鞄が丁度30%オフで買えたので,正さんは大満足.夕方になってもまだ暑い.

カリエール広場

スタニラス広場

クラッフ門

ロンバートとラノールの家
6月11日(水)晴れ,ナンシー
駅の反対側にあるアールヌーボーの家を見に行く.ロンバールとラノールの家は4階建て.窓のデザイン,バルコニー,天窓の形が1つずつ違っている.マジョレルの家は2階建て,凝ったデザインの一軒家だった.建築家のアンリ・ソバージュが設計したという.ナンシー派美術館に予約すると中も見学できる.訪ねてきていた老夫婦が庭までは入ってもいいようだと教えてくれる.入って家の周りをぐるりと一周した.テラスも玄関もおしゃれで雨どいにまで美しいデザインの装飾が施されていた.
ナンシー派美術館を見学した後,その横のサントマリー公園に行く.深い緑の広大な公園で,大きな木の下の広場で若い人たちがボールを持って楽しそうに集っていた.公園のカフェでお昼にする.
旧市街地横のバビニエール公園の中のばらの美しい花壇では孔雀が走り回っていた.この公園もとても広く巨大な木々におおわれている.
夕食は鴨肉のフランベールソースと子羊の串焼き.

6月12日(木)曇りのち雨,ナンシーからランスへ
朝8時半のスタニラス広場はがらんとしていた.もう一度このあたりを歩いてから,11時にチェックアウトする.スーツケースを持ったままコース料理の昼食をとる.お腹いっぱいと思いながら,チーズ2種,デザートのタルトにコーヒーと最後まで全部平らげてしまった.
ナンシー発1時半の列車に乗る.雨の中,シャンパーニュのシャロン駅で1時間半ほどの乗り換え待ち.今日は移動の一日になった.ランスまで来るともうパリまでの距離は近い.
つづく
2008年6月
スイスからフランス-2