9月の異常事態


ダイビングの事故には、これまで事故の多い年が2〜3年続くと、ほぼ同じ年数において事故数が減っていくという減少期がおとずれるという事故発生周期のパターンがあったため、これまで続いた2年間にわたる事故の多さから、平成13年に入って、今年はダイビングの事故パターンサイクルの減少期に入るものと思い、またそう願っていました。実際今年前半はそのような事故数の推移でありましたが、本年9月に入り、死亡事故が多発し始めました。
私も全数を把握しているわけではありませんが、以下のようになっています。

死亡事故発生状況
9月8日  静岡県 男 34歳
9月9日  沖縄県 男 52歳
9月9日  三重県 女 60歳
9月15日 長崎県 女 22歳
9月23日 静岡県 女 66歳
9月24日 沖縄県 男 46歳
9月28日 東京都 女 70歳

このように、9月第1週の土日を除いて、全ての週末(土日ないしは金曜日)に毎週死亡事故が発生しました。死亡原因には明らかに病死などの事故者の責任のものもありますが、このうちのいくつかは、地元警察が業者に過失責任がなかったかの捜査を進めています。
10月になっても死亡事故は発生しています。ダイビング雑誌には、このような情報はなかなか載らないと思います。載るとしても、シーズンが過ぎてから業者に都合の悪い部分は除いて載せることで、シーズン中の事故の実態については公開はしないでしょう。そのような訳で、ダイバーの皆さんと優良業者の皆さんのリスク管理に役立てることを願って、私が確認できたものだけを掲示しました。
せっかくの楽しみに水を差すようですが、万が一事故があったら、楽しみに水を差すどころではないので、あえてお知らせしました。
皆さんの安全で楽しいダイビングを祈っています。

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※全国の皆様のお知りになっている事故情報について、今後の事故防止のための資料として活用するために、それらを確認できる形でお知らせいただければ幸いです(nakadam@hi-ho.ne.jp)。なお、お知らせいただいた情報のご提供者のご氏名などは公開いたしません。しかし確認できない情報については事故情報としての資料にできませんのでご了承下さい。

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事故は身近で発生しています。ダイビングの時の楽しみの一部を、楽しくはないけれど、事故防止の対策にまわされることの必要性を感じていただければと思います。

業者とシニア及びベテランダイバーの方々へ(また学生諸君へ)
事故が起こったとき、「予想できないことが起こった」ということでは、そもそもリスクの管理を行っていたとは言えません。「万が一」あるいは「一般に予想できない」ことが発生することに対して準備しておくことがリスクを管理するということです。ダイビングの死亡事故はいろいろな原因で発生しており、それらは一般ダイバーには情報公開はなされていないとは言え、ベテランダイバーやダイビングを商売としている方々は何らかの方法で知っているはずです。そのためそれらの発生原因を分析して、自分のところではありえない、と思っていることが起こることを前提に事故の準備をすることが法的に(指導団体の基準にかかわらず)必要とされています。このような状況ですから、事故が起こったとき、特にプロの方々にとって、一般には事故の発生原因には「予見性があった」と言われます。重大事故があったとき「予想できないことが起こった」は通じません。業者の方々が事故の時の減責・免責を勝ち取るためには、この「予見性」をフルに活用して具体的にどのような対策を事前にとっていたか、がほとんど唯一の手段と言えます。そのために、事故の実態を直視して、よく分析し、事前対応を行ってください。また、ベテランダイバーの方々も、自分や後輩・仲間のために、充分な配慮をお願いします。
安全のためにはコストがかかるということは、もはや常識だと思いますが、そのコストには精神的コスト(楽しみを少し削る)ことがあることも、一般ダイバーの方々も考えておいてください。
最後にシニアダイバーの方々へ。このホームページの沖縄の潜水医学の専門家の先生のお言葉にもあったように、40歳を過ぎた場合には、ダイビングを行う際の生理的リスクは飛躍的に高まります。充分ご注意下さい。若いときとは水中での生理的反応が大きく変わっている様です。この9月の事故でも、「中高年というリスク」が多大な影響があったと思われる死亡事故があります。具体的には過去200本を超える経験があっても「中高年リスク」と思われる死亡状況がありました。とにかくご用心の程を。


※私が9月の事故の実態を公開したことで、このような情報公開が商売のジャマになるからと、これまでも行われているような、私の口を封じることを狙って、私に対して、特に匿名での各種の嫌がらせや実力行使などを行いたい方がいるかとも思いますが、それは事故防止や自分の事業者リスク、あるいは自分は海が好きだという感性のシャクにさわるからなどという信念の役には立てないと思いますので、そのエネルギーやコストを安全管理のために使っていただければと願います。その方がかえって自分の身を守ることになると思います。たとえエネルギーとコストをかけて一個人にすぎない私をつぶすのに成功しても、事故が発生したときの自分のリスクが減るものではありません。私をつぶすもっとも効果的な方法は、人為的な事故がなくなることと、正しく徹底的な情報公開が達成されることです。
優良業者の方々にお願いです。その正しいリスク管理のノウハウの公開と展開を行っていただけるよう心から希望します。


平成13年10月12日

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