平成11年から15年の日本国内の事故の実態

下記の内容は平成11年から15年にかけての事故数の調査の結果です。1〜2例を除いて、海上保安庁のデータを基礎に、警察、消防の記録にダイビングの事故として残されたものを集計しています。個人の調査では100%の実態の把握は困難ですが、現在社会に発表されている事故数の統計資料の中では、私が知る限り、もっとも実態に近いものであります。
また、より実態に近いためか、低い数字が事故の実態であるとイメージコントロールしたい意思や背景の下に語られる事故に関する話題の場合には、この数字は採用されていないようです。

※下記の内容は学会で発表した資料の一部です。詳細はそれを聞いた方から得るか、後日ネット以外などで発表される機会に見てください。


発生年
事故件数
死亡・行方
不明件数
生存件数
死亡・行方
不明者数
生存者数*
事故者数
平成11年
46件
25件
21件
30人
34人
64人
平成12年
43件
19件
24件
19人
28人
47人
平成13年
39件
17件
22件
17人
33人
50人
平成14年
44件
16件
28件
16人
30人
46人
平成15年
69件
30件
39件
30人
79人
109人
5年間計
241件
107件
134件
112人
204人
316人

※平成11年の1名は入院1ヶ月後に死亡したので死亡者数に参入した。
海上保安庁のデータは重要なものですが、その組織上、認知できなかった事故(意識的に届けられなかったり、あるいは知られないように処理されたり、あるいは関係者に厳重な口止めがされた事故など)は統計に入りません。そのため私のように組織の別にとらわれずに(海保以外の組織の公的記録)、また隠された事故を追って(記録の確認)、一つでも多く事実を把握しようとしているデータとは差異が生じます。これはいたし方ありません。

 

件数別死亡事故率は44%という高率である。

 

平成13年は海外での日本人ダイバーの死亡事故が多く、結果として、その発生件数においても前年より多くなり、被害者も多かった。
ダイビング業界では、年中、海外でのダイビングポイントやショップなどのキャンペーンを張っているが、それを見る、またはそれが掲載された雑誌や書籍の購読者にあたるダイバーたちが海外でダイビングを行って死亡したり、障害を負う場合が少なくないことについて触れることはまず見られない。
海外での事故の実態を反映したデータは、今年4月のある学会で公開掲示する予定であるので、特に海外ダイビングを行うダイバーやそこでダイビングビジネスを行う方々で興味のある方にそれを見る機会があれば、少なくとも気を引き締めるという意味では役に立つかもしれない。

なお、漂流事故は後をたたないが、ダイバーや業者の方々は、自らのために(一般ダイバーは自らの命、業者は自らの命と客の命)、ぜひレーダーで感知できるフロートの常備を考えていただきたいものである。

死亡事故に占める業者同行比率はここ数年増加傾向を維持し、平成15年には圧倒的多数を占めるまでになった。[平成11年65.0% ⇒ 平成15年72.4%]
これは、インストラクターと称する人々の質が下がったこと(客にとっては致死性が増したこと)と、それをもたらしたのがインストラクター資格の乱売(能力や適性を問わずに、人命にかかわる資格を、受講者(=金銭的利益の元)のほぼ全員に販売(合格、あるいは認定)しているという事業そのものにあるだろうことは、少なくとも事故の実態や、事故裁判の記録研究、及び裁判時の証人尋問の傍聴などを重ねれば容易に推定されることである。
このような、能力の欠如(=イントラ・ガイドの能力を人命にかかわる商品とした場合の欠陥)=消費者にとって致死的欠陥のあるイントラ資格の販売には、三菱ふそうの事例を見ても、いずれ販売者への法的責任が問われてくることは自然の流れであると考えられる。

⇒ダイビング事故に関して、「正常化の偏見」を助長するいかなる企みも、私は支持いたしません。


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 平成17年1月27日