平成17年の状況についての雑感


 ここ何ヶ月も更新ができず、本当に申し訳ございません。

 この間、大変忙しく、ホームページの更新ができませんでした。まだしばらく忙しさが続きます。お許しください。

 平成17年は、これまで以上にダイビングが安全、あるいは事故の問題やリスクを軽視するような、これまでにもない積極的なイメージコントロールが実行されました。それはダイビングの安全を語るという学会やイベントの中で、また雑誌やムック本を通じ、さまざまな方法で行われました。その効果は、皆さんがダイビングの事故のリスクを実感視しない、あるいは手抜きの講習が行われていても、手抜きのガイドが行われていても気づかない、さらに講習やガイドの品質にあまり気が向かない、などと考えるようになっていたら、十分に発揮されたと考えるべきでしょう。

 平成17年も、こういったイメージコントロールの影響と考えられる死亡事故が起きています。たぶん、こういった事実に社会が目が向かないようにと、一層洗練された(?)情報操作への努力の傾注がなされていったのではないかと思います。

 現在、一般社会では、人身事故があった場合には、メーカーや販売店は、その欠陥商品の回収や損害の補填に誠意を尽くそうとします。そうしないと会社が倒産にまで至ることがあります。何件もあったことは皆さん、ご存知と思います。これは人命にかかわる事業で利益を得ている企業には、おのずと高い社会的責任が求められる時代になっているからです。
 また「認定」を基点とした、マンションやホテルなどの設計から施工、販売に至る一連の問題で社会問題化している状況からも、まだ一人も命にかかわる問題が発生していなくても、その危険が予見されるということで大問題となっています。
 ダイビング業界はいかがでしょうか。昨年も何人も死亡しています。過去、何百人もが死亡し、また少なからず重度後遺障害を負っています。死に至る確実な危険があります。そしてその事故にかかわる裁判ではいかがでしょうか。ダイビング業界の役務商品である講習やガイドの結果に対して法的責任が認められています。これはリスクの所在がどこにあるかを示しているということです(全てが業者の責任ではないが、大多数はそうであるという統計の結果が出ています。)。
 ダイビング業界は、この事実を何故開示しないのか。私が接する遺族や家族の方々は、皆さん、死にまで至ったダイビングの危険の情報を事前に知っていたら、と嘆いています。徹底的な情報の開示があれば、彼らは死ななかったかもしれません。
 事故の危険に関する本当の情報(改ざんや過小評価した情報ではない。)を開示しないことは、どれだけ反社会的な行為と考えるべきでしょうか。

 現在、ダイビングの事故を防ぐ手立ては、積極的な事故情報の詳細の開示と、ごく少数の優秀なプロダイバーの存在です。
 ここで言う優秀なプロダイバーが、ごく少数だけ存在するという事実は、インストラクターの資格を買った人がすべて同じような優秀なインストラクターであるとして人命にかかわる仕事をさせて利益をあげるビジネススタイルをとっている階層的事業構造の利益にとっては時に大きなマイナスとなるようです。だから、誰が優秀なプロなのか、それを見分ける本当のことには触れず、誰でも同じプロという扱いをする業務上の必要性があるのではと思います。

 少なくとも皆さん、私が書いた本にある事故の実態は、少なくとも業界の特定の人々に対する利益のために書いたものではありません。その意味で、少しは事故の事実に近づいています。それは事故の予防に役に立つ可能性があるということです。

 事故が起きてからでは遅いのです。いつものパターン(人間の過失にかかわらない事故もあるとは思いますが)なら、そして昨年のイメージコントロールの効果が現れれば、今年も何人ものダイバーが確実に死にます。平成15年の確率で見ると、その70%以上が、商品ダイビングの下で確実に死ぬのです。
 どうか、その確率を下げるためにも、積極的な事故情報の収集と、優秀なプロを見つける努力、そして自分のダイビング技量のチェックと”補修”を行った上でダイビングを楽しんでください。


平成18年1月4日

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