平成19年の内外ダイビング事故統計
■事故の実態■


遅くなりましたが、平成19年のダイビング事故統計を発表します。
この統計資料に取り上げた以外にも、事故は確実に起きています。皆さんは、事故の実態が商業ベースで語られる以上に深刻なものだということを知ってください。そしてその自覚の下、安全を確保するために思いを巡らし、自分と自分を愛する方々につらい思いが生じないようにしてください。そして、ダイバーの安全のために努力している少数の良心的な業者の方々を盛りたててください。

●この統計で示したダイビング事故は、国内分は海上保安庁提供の資料を中心に、全国の警察や消防及び自治体にダイビング関連の事故と記録されたものに、当HPの管理人が確認できた事例を加えて集計しています。またカウントした事故事例は、講習中やファンダイビング中の一般ダイバー(体験ダイビングや水中に落としたものを探しに潜るなどの事故も含む)の事故、インストラクターやガイド自身が遭遇した事故、米軍軍人や軍属が日本の水域で遭遇した事故、及びごく少数ではありますが、レクリエーションダイビング(本来の英語表現では「レクリエーショナルダイビング」ですが、カタカナ表記をする場合は日本人が聞きなれている「レクリエーション」と表記します。)と同じ手法で潜水した場合の事故を含んでいます。ただし、純粋な水中工事作業など、漁業、軍事潜水の事例は除いています。海外分に関しては、外務省提供の資料に、HP管理人が確認できた事故の事例と、日本在住でも国籍が外国などの、ごく少数ですが”日本のダイバー”と言える方々の事例を含んでいます。また外務省では水難事故と分別していないものの、ダイビングで潜ったまま行方不明となった事故1例を管理人の判断で平成19年分に加えています。
ところで平成6年から10年までの国内事故数に関しては、管理人が事故の全数を把握することを目的とした実態調査を行っていなかったため、海上保安庁のデータのみをで統計資料を作成しています。

総評:ダイビング事故遭遇者数は平成19年も高い水準で維持されています。この原因は、ダイビングのビジネスの質の低下が主要なものと考えられます。このようなビジネスの質的劣化をもたらした原因は、個人的見解ではありますが(これに賛意を示す人も多い)、「指導団体」を中心としたビジネスモデルにおける、事故に遭遇する側の視点に立った安全対策の不毛さに起因していると考えられます。またその低レベルな教育ビジネス下で指導者となった多くの(一部を例外とする)低品質指導者(受講者本人は自分が十分なレベルに達していないことを知らないケースも多い。知らされていないとも言うべきか。)よる低品質の講習(一般ダイバーの育成)やガイド及びショップ経営などの活動から収益を得るという利益追求システムによって、ビジネスモデル全体の劇的な質的劣化が進み、現在に至る深刻な事態を招いたものと考えられます。
 
警告平成19年の死亡・行方不明者数は対前年比213%となっています。つまり昨年はダイビングをしているときに大変な致死的危険の増加があったということです。生存者も含めた平成19年のダイビングの事故遭遇者数が前年比2人減っていることから見れば、ダイビングの致死的危険性は異常に増加したと言えるのです。この実態を一番知っている業界側からは、結局効果的な情報提供はなく、致死性が対前年比で倍以上になるというレクリエーション(レジャー)が営利事業として展開されていました。そして残念ながらマスコミでは、どんな悲惨な実態があっても、それが彼ら自身による「ニュース性」という収益性を図るフィルターにかけられることで、一般社会は事実を知ることが困難な状況に置かれています。
なお行政は今のところ、この問題の解決のために、法律の改正や新法立法のために努力することには関心を寄せていません。

平成6年〜19年までの事故遭遇者推移
 

平成6年〜19年までの死亡・行方不明者数推移


教訓にして欲しいこと

レクリエーションとしてダイビングを楽しむということは、安全にそれを終えて日常の生活に復帰できることが大前提です。そしてそれを可能ならしめることが、レクリエーションダイビングをビジネスとする者のなすべき義務(注意義務・・・ダイビングビジネスの最中に客の側に事故が起きると、業者はこれへの違反が問われます。本当に注意したしたから、自分は大丈夫だと思った。それにダイビングは自己責任だから、という理由は、裁判所は認めません。)です。それは消費者であるダイバーの自己責任うんぬんという業界の主張以前の大前提です。
ダイビングのリスクは致死的であるからこそ、それを軽視したり実態を少なく見るようなことはあってはならないのです。そしてリスクを甘く見るように価値観が誘導されるような意見や見解を流す”権威ある方々”や”権威ある団体”の情報に無批判で流されないようにすることも何より必要です。
最近は国内のみならず、海外でも多数の水難事故が発生しています。今回はダイビングの事故に限定して取り上げましたが、近日中に他の海外での水難事故についてのデータも掲載し、水難事故全般のリスクの存在に注意を払ってもらえるようにしたいと思っています。
どうか皆さん、安易な方向でのリスクの評価や解釈に流されずに、皆さんの家族や友人のために、勇気ある臆病さと慎重さを大切にしてください。

最後に、この統計を出すにあたって、海上保安庁、全国の警察、消防、自治体、及び外務省、そしてプロや一般ダイバーの方々からの情報提供に、深く感謝いたします。


平成20年10月27日
             10月29日一部編集

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