平成23年(2011年)の事故の一部の紹介


ダイビングの事故は確かに存在します。しかもダイバーがダイビングを行う機会が減っているのに、少なくとも2010年まではj重大事故が増えています。ということは、重大事故 発生の確率が増えていると考えられます。そして最大の事故原因は、手抜きや油断、そして健康管理の不徹底などの、人間のミスです。
事故を避けるには、ダイバー自身の慎重な思考と行動、そして、優良ダイビングショップや優良インストラクターを見つけることが必要です。

昨今は特に、個人情報保護法の拡大解釈に、それぞれの立場における異なる運用解釈と、さらに個々の“事情”が反映し、事故の予防につながる情報の公開が避けられ、リスクの認知に支障をきたすこともあるように感じています。
昨年の地震と津波からの被害も、何年も前から巨大地震と大津波の警告の声が挙げられていたにもかかわらず、「都合」や「無視」といったことが、後の被害の予防や縮小に結びつく節目ごとに起きていたことで大きくなったのではないかと、今年1が1日に、住宅の基礎だけが町のあったことを示すだけの、誰もいなくなった被災地の状況を見てきて、強く感じるところです。

少なくともダイビングの事故は、そのほとんどが人間のミス(無視や間違い、健康管理とその程度の自覚の不徹底など)から来ています。そこで、事故予防につながることを祈念して、ここに、報道された事故事例の概略を紹介します。

表面化していない事故の実態は、もっとずっと大きいことを、みなさん、決して忘れずに安全なダイビングを行ってください。そして、そういうサービスを提供する優良業者を盛り立ててください。

なお、私のような脆弱な個人研究者が、報道された事故を調べただけでも、以下のような事故の発生事実を知ることができます。
本来、事故をよく知る立場にあると考えられる「指導団体」などは、客の死亡や重大事故の予防につながる大量の事実関係を把握しているはずですが(私が調べることができた一部の裁判資料だけでも、この ように考えます)、それをあたかも本当に事故資料が少ないかのようにすることで、都合の悪い(しかし消費者には必要な情報)ことの非開示の理由として、長年に渡って、同じパターンでの事故者を生み続ける自体の改善に力を尽くさないことは、非常に残念であります。たぶん、事故者自身や、ご遺族の方々の中には、私程度が感じるような、甘い「残念」では済まない人もいると思います。

今年は、皆さん、事故に遭遇しないでください。
優良プロダイバーの皆さん、どうかその英知と経験を、より一層生かしてください。
遊びの延長でインストラクターをしている方、今年は遊びを卒業して、より自分に合ったお仕事を探して下さい。
安易なインストラクター資格の販売拡大や、手抜き講習の認定で、相当に長期間、大きく潤ってきた(※)会社の皆様、どうか、もう勘弁して下さい。m(_ _)m


◇日本国内(2011年の事故の一部)

2月25日 午後0時45分頃、沼津市西浦江梨の大瀬崎海岸の沖合で、ダイビング経験があったA子さん(49)が溺水し、一緒にダイビングをしていた夫に引き上げられて病院に運ばれたが死亡

5月1日 沖縄県・八重山諸島の波照間島の北西約1.2キロ沖で、ダイビングをしていたA子さん(25)は、この日2回目のダイビング中、浮上して助けを求めた後、海中に沈んだ。ガイドがA子さんを引き上げたが意識不明の重体。人数比は1対4。

5月4日 屋久島町の口永良部島の東海上で、人数比1対7でボートダイビング中のA子さん(24)が予定時刻になっても浮上してこず、海上保安部の巡視船などが捜索。すると水深約25メートルの海中でA子さんを発見、病院へ運んだが死亡を確認。A子さんがいないことにガイドが気付いたのは午前11時30分頃。しかし118番通報があったのは午後1時20分頃だった。

5月8日 午前11時50分ごろ、仲間の女性(31)と水中に潜り、ダイビングスポットの調査をしていたインストラクターA夫さん(53)がはぐれ、一緒に来た男性(33)とこの女性が船上から捜した。すると松江市島根町多古の北東約360メートルの沖合で、意識不明の状態で海面に浮いているA夫さんを発見。A夫さんは市内の病院に運ばれたが、約1時間後に死亡が確認。

5月15日 14日午後7時半頃から、北海道の支笏湖のポロピナイ野営場沖約30メートルで、A夫さん(27)は友人と潜り始めた。約1時間後、水深約12メートルで、2人で浮上の合図を出し合ったが、A夫さんは浮上してこなかった。午前0時45分頃、一緒に潜っていた友人の男性が110番通報。これを受けて道警のダイバーらが捜索し、15日午前6時40分頃、A夫さんが水深二十数メートルの湖底に沈んでいるのを発見。病院で死亡が確認。

6月1日 午後2時50分ごろ、京都府舞鶴市の沖合約10キロの日本海で、潜水取材をしていたNHKのカメラマンの男性職員Aさん(33)が意識不明になったと舞鶴海上保安部に通報があった。Aさんは病院に搬送され、約1時間半後に意識を取り戻した。命に別条はなかった。Aさんは潜水取材歴10年。NHKは「取材中に事故が起こり遺憾だ。原因を調査している」と報道に向けのコメントを行った。

6月4日 4日午後0時10分頃、下田市須崎の爪木崎灯台沖合約700メートルで、ダイビング中のA子さん(70)が、インストラクターに体調不良を訴えた後に、意識を喪失。ボートの操縦士が通報し病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認。死因は水死。Aさんは、ダイビングの経験者だったとのこと。

7月18日 新潟県糸魚川市の海岸沖でダイビングをしていたA夫さん(62)が浮いているのをダイビング仲間が発見。死亡が確認された。

8月6日 三重県尾鷲市の海岸でダイビングをしていたA子さん(32)が溺水し、意識不明の重体

8月8日 伊東市の海でダイビングをしていた1人が重体となった。詳細は不明。

8月13日 13日午後1時15分ごろ、豊岡市竹野町切浜沖約300メートル、水深約5メートルのダイビングスポットで、ダイビング経験のあるA夫さん(52)が突然浮上して助けを呼び、そのまま海に沈んだ。同行の友人らが病院に搬送したが、約1時間半後に死亡が確認。

8月21日 午前10時20分ごろ、兵庫県豊岡市の海岸沖でダイビングをしていたA夫さん(39)が海に沈んでいるところを発見され、病院に運ばれたが死亡。現場は水深約10メートルのダイビングスポット。A夫さんは同僚3人とビーチダイビングで午前10時ごろから潜水開始。器材に異常はなかった。なおA夫さんさんは初心者だったとのこと。

8月27日 静岡県熱海市で、A子さん(57)がダイビングスクールのイベントに参加。ボートで200〜300メートル沖合まで行き、午後0時半から、人数比1対4でダイビングを開始。その後、インストラクターが水中でもがいているA子さんに気付き、船に助け上げた。A子さんは病院に運ばれたが、意識不明の重体

10月14日 14日午前9時半ごろ、鹿児島県奄美市朝仁の海岸から約500メートル沖で、ダイビングを始めて約10分後、インストラクターが水深約20メートルでAさん(44)の異変に気づきー浮上させた。118番通報がされたが、Aさんは15日午前5時ごろ、搬送先の病院で呼吸困難による低酸素脳症などのため死亡

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◇海外

5月5日 A子さん(22)は、会社の同僚らとの旅行でプーケットを訪れ、地元のダイビングショップで前日から講習を受けていた。事故のあった当時は、日本人のインストラクターが付き添って水深12メートルほどまで潜っていたが、Aさんが急に海面付近まで浮上してしまったことで、ちょうどその時、Aさんらを現場に降ろしたボートが別のスポットへ向かおうとしてエンジンをかけたため、Aさんは動き出したスクリューに頭などを巻き込まれて死亡。現地ではAさんが浮力を調節する装置を誤って操作したとみられているとのこと。講習時の人数比は不明。

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◇意見

事故の予防につながる「危険の予見」は、物事が最悪の事態になり得る可能性を直視して、その事態の原因の排除と、起きた場合のエスカレーションの要因を事前に排除するか、損害をできるだけ低くするための方法を準備するために不可欠なことです。
これを、「とにかく安全」「とにかく大丈夫」などとして、危険やその最悪の事態を予見したり、それを要請をする者を嫌うような、いわゆる前向き思考原理主義は、予測される危険の程度が生死にかかわる、レクリエーショナルダイビングの場合、また生き残っても重度の後遺障害を負う可能性があるレクリエーショナルダイビングの場合には、最大のリスク要因となり得ります。
何年も前から出されていた、地震と津波の規模の大きさの警告や学会発表などを、軽視・無視・握り潰し、してきたのは、同じ人間であり、一般人よりはるかに事態を理解できる知見を持っていた人々であったことと、そういった人々を要する組織であったことは忘れてはいけません。
また津波で助かったり被害が小さかった地域では、最悪のことを予想して避難訓練を積んでいたり、何も起きなければ無駄とも言われそうな避難経路や巨大な堤防の構築をしていたことを思い出してください。

ダイビングは楽しむための商品スポーツです。そのスポーツ後、ただちに日常に復帰できないほどの事故に遭うことを容認しなくてはならないような、アスリートスポーツや冒険スポーツではなく、あくまでもレジャー(レクリエーション)です。
悪貨(手抜き業者→講習の内容やガイドの質での手抜き)は良貨(手抜きと油断をしない優良プロダイバー)を駆逐するという言葉もありますが、消費者である一般ダイバーと、「良貨」のプロダイバーが共に手を取って、悪貨こそを駆逐して、ダイビングという文化の発展を促してください。

今年こそ。


※別冊ビッグコミックNo.146 136p 左下コマ


 平成24年1月4日

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