レジャーダイビング"指導団体"へ、事故についての質問してみました。


私は、講習中の事故や、"ライセンス"を"取得"したあとの事故が減らない現状をを踏まえて、日本のレジャーダイビング業界を事実上支配している、最大手のPADIとNAUIに、以下の質問を、返信用の封筒に住所を書き、切手を貼った上で、返事をいただけるようお願いしてみました。
ここに、その手紙の内容と、それに対しての返答についてご報告します。


平成11年7月14日に、私は二つの大手ダイビング"指導団体"宛てに質問の手紙を発送しました。両者に対しての手紙の文面と質問の内容は全く同じものです。
その後、何のリアクションもないため、7月30日に、それぞれの本部に直接電話をして、手紙が届いているか、聞いてみました。

なお、私からの質問は、ダイビングの事故の、末端の一研究者・ダイバーとしての立場での質問をしたものであり、当然ながら先方にはそれに答える法的義務はありません。私は、ただ"法人"としての、またダイビング業界の超大手の存在としての責任感から生まれる道義的な意思からの回答を、希望的に願ったものだけです。


質問の主旨と目的、および自分の紹介をした後に、お願いした質問事項の内容の概略を紹介すると、

1.現場から収集した事故の情報は、事故防止の研究用に第三者に公開できないか?
2."ライセンス"という表現についての意識
3.事故のとき(自社ブランド下での講習中や自社ブランドのショップ主催のツアー)に、講習やツアーの客に対して、何らかの保護や援助は行う用意はあるのか?
4.海外のリゾートで取得した自社ブランドのCカード保持者は、国内カード保持者とどう区別するのか?
5.自社ブランドの講習で、手抜き講習をされて、それでも自社で"認定"したCカード保持者が、技術の未熟で事故にあった場合、何らかの責任を取る用意があるのか?
6.自社の商標を使っての講習やツアーで事故があって、それを報告してこないところがあったとき、どのような対応をしているか?

以上です。
これは、一般ダイバーにとっては知りたい事であり、"申請料"という単なる事務手数料以上のものを受け取っている会社がどんな意思でそれを受け取っているのか知りたいと思うのは、この、事故が減らない現状から当然の質問と思いました。また、彼らが世間から誤解を受けていると思っていたら、これを機会にその弁明ができるチャンスではないかとも思っていました。

さて、私がPADIに電話して、手紙が届いているかを伺った時、先方の方は「その手紙の事は知っており、A氏が預かっているが、A氏は今出張中で8月2日に戻ってくる。」との返事でした。それで、私は、「お待ちしておりますので、よろしくお願いします。」ということで電話を切りました。
次にNAUIに電話をしました。すると、先方でも手紙が届いている事は知っていましたが、「ご回答はいただけますでしょうか?」と質問したところ、電話を受けた女性から男性に代わり、「質問には答えません。」と、きっぱりと断られました。理由の説明もありませんでした。なお、この時、先方の方は、有無を言わさない強い口調でこのように言われましたが、決して感情的に怒鳴ったりしたものではない事を、先方の名誉のために断っておきます。
さて、私は、先方の方が誰か不明のままで、そのまま電話を切られそうだったので、「私は中田と申しますが・・・」と、お名前をお聞きしたら、「Bです。」と名乗られたので、「申し訳ありませんがどちらの部署の方でいらっしゃいますでしょうか?」とお聞きしたところ、「社長です。」とお答えいただいたので、会社の最高責任者である方へ、電話に出ていただいた礼儀としての御礼を述べて電話を切りました。
なお、最高責任者からの直接の意思の通知(質問には答えない、という)は、当然ながら社の公式見解でありますので、私にはこの時にはこれ以上のことはお願いできませんでした。
ただここで分かった事は、私が電話をしなければ、手紙はそのまま無視されていたと言う事です。だたし、これは極めて残念ですが、私には回答を要求する"法的権利"はありませんので、それはやむを得ない事です。(繰り返しますが、先方にも、答える法的義務はありません)

この接触で私が感じたことは、NAUIの"法人"としての公式見解を通じて、

1.一般ダイバーのレベルが切実に欲しがっているような情報の公開はしない。
2.単なる、末端の研究者のような者とは、いかなる形でもコミュニケーションを持つ意思はない。(質問に答えない理由の説明もしない、ということからも証明できる)
3.ダイビングの市場へは、自分が全面的に主導権を握った上での一方的なアクセス以外にするつもりはない。("下"からの質問に対して、その質問が生まれた背景を理解しようとする動きがないことから)
という風に受け取らざるを得ませんでした。(個人的感想です)

なお、私がNAUIに質問への返答を期待した背景には、次のような、NAUIの姿勢を信じたからです。
NAUIの「Instructors Handbook [基準と手続き]」の中のNAUI倫理規約(1996年1月1日発行)にある、『NAUIの最大の財産はNAUIに対する社会的信頼にある。(中略)また、潜水活動の普及には安全な潜水講習、管理・監督活動が重要な責任を持っていることを認識している。』という部分と、『X.倫理規約の違反 NAUIの社会的信頼の保持、ならびに安全潜水の実施のために、NAUIはメンバーに対し注意・改善の指示による処置、資格の停止、除名による契約解除処分を行うことができる。NAUIはメンバー及びメンバー以外からNAUIメンバーの倫理規約違反の訴えを受けたならこれを調査する責任を有する。NAUIメンバーはこの調査に協力する義務を負う。』という部分と、「NAUI THE MARKTING GUIDE(1991年12月24日 発行の初版第2刷)」の『はじめに』の中にある『NAUIの安全に対する真摯な姿勢と努力、そしてそれを支える高いクオリティは、ダイビング業界にあって自他ともに認めるところです。』とある部分が素晴らしいものと思ったからです。
しかし、残念ながら上記書籍の最新版では、これらは削除されたのでしょうか?

私には、今回の事が、自分たちの立場を説明する(万が一誤解があったらそれを解消するチャンスでもある)よい"広報"のチャンスでもあるのでは、とも思ったのですが。
今、世の中が、「情報公開」と言う行為に対して非常に大きな意味を認めている中でそれを希望したことがかなわず、とても残念でした。何よりも、人命に直接関係した商売をしている立場としての社会的責任を感じていただきたかったのですが。。。しかし、繰り返しますが、私には、回答を要求する"法的権利"はありません。

さて、PADIに対しては、上記の電話の2週間後にまた電話しました。
結果は、A氏が出られて、非常に丁寧な口調で対応してくれましたが、これもNAUIと同じく、「質問には答えません。その理由も申し上げられません。」とのご返答でした。PADIはますます扉を固く閉めたようでした。

以上の結果から、現在でも"指導団体"から情報の公開の希望はないということが再確認できました。「答えない理由の説明もしない。」ということがそのことを物語っていると思いました。


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