これは危ない!


■最近、講習生の安全にかかわる問題を耳にしています。それは、

今年国内外でオープンウォーターの講習中にエア切れになる事例が出てきていること。

これは、今のところ講習生がインストラクターに知らせることに成功してともに緊急浮上を行うことで事故化していませんが、実に危険なことです。

初心者や経験の浅いダイバーが水中でエア切れを起こすということは、パニックを起こす確率を高めます。大変危険なことです。もしインストラクターが水中でそれに気づかなかった場合には講習生の死もあり得ます。

次にこのような状況を受けての個人的推測や感想を持って書いてみます。

さて、エア切れを起こすような講習でどんなレベルのスキルがどのような質で習得できるとでしょうか?

講習中にエア切れ事故になったという方々の体格は、男性女性とも日本人の平均的な方でした。年齢層も30−40代であり、180−200気圧に入っているはず(状況によって残圧が180を若干下回っていることはある)のタンクの空気を、オープンウォーターの実習中に使いきってしまうほどの消費量があったとは考えられません。もし例外的にそれがあるとしたら、インストラクターは膨大な空気の消費量は吐き出す泡で分かるので(今回の事例は空気が漏れることになる器材の故障ではないそうです)、エア切れになる前に講習を中止するなど、対処はできます。できなかったら論外です。
ということは、高い確率で、講習時に利益を出すためにタンクを使いまわして空気充填の経費を削っているということが考えられます。また習中にエア切れになった方々は、セッティングのとき、エアの量を確認するよう指示されて、あるいは告げられていなかったようなのです。
素人の平均的な体格の講習生がエア切れを起こすような場合、いったい1本のタンクを何人で使いまわしているとこれが起きるのでしょうか?
ダイビングの講習では、安全のために、必ず一定量の空気(残圧)を残して浮上するという講習がなされているはずですから、通常の講習で、通常の体格の人が、オープンウォーターの講習レベルの水深の水中でなくなってしまうということは、意図的に少ない空気で行わされているとしか思えないのです。

経費削減=利益増大=そのために不適切な安全軽視=消費者の生死にかかわるリスクの増大

このような事態が国内・国外で、共に日本人スタッフによる講習で行われていること、これは恐ろしいことです。タンクの使い回しでたとえぎりぎりもったとしても、ログブックに書くときには、最初180で、などと書くように指示されば、初級者は疑いもなく書いてしまうでしょう。これで使い回しの物的証拠は隠滅されてしまします。

今年講習を受ける方、また水中で突然エア切れになった際に自分で減圧症や肺の破裂を避けながら緊急浮上する技量に自信のある方以外は特に、必ず潜水前に、タンクの残圧を自分で確認して、すくない場合には、その交換をきつく要求しましょう。自分の安全のためです。原因不明のパニックで自己責任で死んだ、のだと言われることのないように注意して、正しくタンクを提供してくれる優良業者を選んでダイビングを行って、水中の世界を堪能してください。

ダイビングビジネスの消費者自身が、優良業者がこの景気の大変な時代に生き残れるよう、自分のリスクマネジメントを行いながら、彼らの店に対して列を作ってでもそこを選んでダイビングを行いましょう。

タンクの使い回しをされてそれが原因で死ぬような事故がないよう、心から祈っております。あるいはそれが起こってしまったら、それが隠されてしまわないよう願います。

旅行業者の方々や各行政機関の皆様には、それぞれの場所でこのようなことが行われていないかどうか、ぜひ厳重な監視を願いたいものです。

※水深がごく浅いプール講習などで空気の消費はごく少ないので、ここでのタンクの複数回使用は、残圧の確認さえきちんとなされていれば大丈夫と思っています。また場合によっては、ごく浅い水域での体験ダイビングでのタンクの複数回使用は可能となる条件があるかもしれません(気象や海象の影響は様々です。)。どちらにしても、残圧管理が正直になされているかどうかは何より大切です。残圧を隠すようなところは危険なのではと、個人的に心から思います。


平成21年4月19日

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