平成13年に学会で発表した概要


 以下に、私が昨年日本高気圧環境医学会と日本スポーツ法学会において発表した内容について、その概要を公開します。

 これらの内容についてはそれぞれの学会において賛否両論があり、賛成や同感を下さった方々に対しては深い感謝をすると同時に、反対論や否定論であっても、一流の学者の方々がわざわざこの発表に言及していただけたこと自体に、特に何のコメントもないような研究と異なって、それなりの問題を投げかけられた(感じてくださった)という点で、私は嬉しく思い、また感謝しています。
 もとより、多くの優秀な学者の方々が、このダイビングにおける事故の問題に目を向けてくださって、その力量を発揮した優れた研究をたくさんしてくださり、そうした結果として事故が減少していくことになることこそが私の目的でありますので、私の研究のレベルを圧倒的に超えた優れた研究がどんどん出てきて、早く私の出る幕などなくしてくれることこそが、一般ダイバーとダイビング業界の良心の部分にいる業者の方々のためであり、またダイビングの正しい発展に繋がる、あるべき姿だと思います。
 このホームページを見てくれた学者の方々や専門家の方々が、私の研究などたいしたことはない、と思って、それを証明するために能力を示してくださることを祈っています。私がかつて、ダイビングの事故に遭遇しても死なずに生き残った意味は、まさしくこれらの方々の研究の呼び水となることにあるのではと思っております。呼び水は、本物の水が出てきたら用済みとなります。私はその時(用済みになる時)が来ることを待ち望んでいます。


第36回日本高気圧環境医学会総会発表の概要(H13.11.30 福岡)
「レクリエーション・スクーバダイビングの事故発生要因の分析」
1.事故の実像
 ・他のレクリエーションスポーツとの比較
 レクリエーションダイビングにおける日本の事故率は、推定でアメリカの約2.34倍となっている。
 ・数字の意味するもの
  「ダイビングは安全である」とか、「泳げなくてもできる」とか、「誰でも簡単にダイバーになれる手軽なスポーツ」というような宣伝や認識が事故につながる油断や軽視を生む要因となっている可能性を指摘
2.レクリエーションダイビングという役務商品の構造的問題
 @商品特性による減圧症発生事例
 ・役務商品の安全問題
  ダイビングサービス(役務商品)の現状として、客であるダイバーの生命・身体の安全にかかわる減圧症発症要因に配慮しない(客もこの商品が危険であるという認識を強く持つ講習を受けた形跡がない)商品が市場に出回っていることは問題であると指摘。
 A平成11、12年におけるスクーバ・ダイビング事故の実態
 ・年代別死亡者割合表
 平成11年(1999年)と12年(2000年)の年代別死亡者割合などの資料を提示
 (a) 対前年講習中(体験含む)死亡事故割合表
  (b) 講習事故時人数比割合
 (c) 講習中に発生した重大事故に見る、指導者側と講習生の人数比
 以上を表やグラフによって提示
4.適正人数比
 インストラクターが管理する人数比が2人を超えて4人までの時に事故が最も多いことを指摘
5.注意義務履行のための動静確認時間間隔
 ・救助可能性シュミレーション
6.適正動静確認時間間隔---5秒限界論
7.事故要因を最小化する(安全配慮義務を果たせる)ダイバー群構成 
 @1対2の構成
 A2対4の構成
8.結論 
 ダイビングの事故を生む最大の要因は、レクリエーションスポーツであるダイビングの中に潜むリスク関連情報の封鎖や、リスクに対する根拠を示さないままに「安全」に偏った情報が一般的であるということでその対策がおろそかにされるという人為的なものである。


第9回日本スポーツ法学会大会発表概要(H13.12.15 東京)
「ダイビング事故裁判における、業者に求められる動静監視の時間的間隔の推移と免責問題〜 5秒テストの提案と免責・減責判断の実態の考察 〜」
T.動静監視間隔基準
 1.事業者(指導者等)の注意義務を構成する動静監視間隔基準の指標
  ・自然相手のレクリエーションスポーツの安全管理の方法の一つについての明確な動静監視間隔基準の必要性
  ・注意義務違反を判定するためのテスト項目となり得る明確な基準必要性
  ・最高裁決定における「注視」の具体化
  ・「注視」の時間問題に関する判例および裁判例に基づいた司法判断の推移の考察
  ・致死的な要因を持つ商業レクリエーションスポーツの事故の防止のために、事業者のリスク管理の意識向上と、事故発生時の被害者の法的救済のための、事業者の注意義務違反の有無の判定テストへの応用と展開
裁判例の紹介
 @ダイバー漂流事故
 Aアドバンスコース講習時における講習生死亡事件
 B越前沖沈船ダイビング事故
 C水面移動中溺水障害事故
 2.注視状態を判断するテスト(「5秒テスト」とする)の提案
U 免責と減責の基準
 1.免責・減責基準の根拠と法的救済のバランス
 @越前沖沈船ダイビング事故
 A講習生肺破裂死亡事故
 Bファンダイビング中の初級ダイバー死亡事故
 2.免責に関する判決概観
 3.消費者契約法に対応して作られた、一方的に免責を求める文書
 4.まとめ
  ・被害者救済において法的不均衡が生じる理由


 以上が、私が発表した研究報告のごく簡単な概要です。ここでは概要だけで申し訳ございません。また当日の研究報告を聞かれた方々の、これらの内容に対しての建設的な批判は歓迎しますが、手の込んだデマを流したり暴力をもってイヤガラセを行ったり、また匿名で陰湿な行為を行う人々に対しては、私は軽蔑を持ってご返事といたします。


平成14年2月6日

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