ダイビングツアー中ボンベ爆発負傷事件

東京地裁   昭和六三年二月一日判決  昭和五八年(ワ)第一八〇三号
損害賠償請求事件
原告  A(男)ほか二名  被告  汲ウざなみほか一名
*原告の実名を隠してAとしたのは作者の判断です。

※判例全体は長文になりますので概要のみ掲載します。全体について研究なさりたい方は判例集をご覧ください。

< 概 要 >
昭和五六年八月三〇目、ダイビングツアー兼潜水指導教室において、参加者が海岸で海洋でのダイビング実習を受けるため、準備運動を行い、他の参加者が、車に積んであった潜水用高圧空気ボンベを下してそのパルブにレギュレーターを取リ付けていたところ、右ボンベが破型する事故が発生し、参加者数人が左足骨折などの障害を負った。これに対し、障害を負った参加者から、ダイビングツアーの主催会杜の代表者及び参加者に対する指導者には必要な検査をしないでボンベに高圧空気を充填した過失、ボンベの安全性を十分確認しないで便用させた過失、炎天下に長時間ボンベを置いていた過失があり、主催会社にはダイビング指導契約上の義務不履行があったとして、損害賠償請求がなされるとともに、スキューパダイビング保険契約を締結していた保険会社に対し、本件事故はダイビングの「指導に従事中」に発生したものであるとして、保険金の請求がなされた。
裁判所は、ボンベの管理及ぴ充填に関する法令によれぱ、ボンベの充填担当者は、ボンベの充填に当たつてボンベの外部検査、音響検査、内部検査を行うぺき義務があり、また充填業者には、充填担当者がこれらの検査を、十全に行うことができるように、検査方法、判断基準などを十分に指導、監督すぺき義務があること、ダイビングは、本来人間の生存不可能な海中という特殊な自然環境下で行われまた、ボンベを始めとする特殊な器材を使用することから、通常ののスボーツと比較して一つ間違えば人命にかかわる重大な事故を惹起する危険性も少なくなく、それだけにこれを指導、監督する指導員には、参加者のの安全を確保する重い責任が課せられること、等を判示した上、指導員については、外観検査を適切に行わすに本件ボンベに高圧空気を充填した過失やボンベの錆を十分点検しないで参加者に便用させた過失があり、主催会社の代表には指導員に対する指導監督を怠つた過失があるとし、また、主催会性には、ボンベの検査及ぴ取扱いを適切に行い、仮にもボンベが破裂することがないように配慮すぺき契約法上の義務の不履行があったとし、損害賠償請求を認めた。
また、スキューパダイビング保険契約につき、保険事故の範囲が「指導に従事中の損害」とされているのは、当該損害が、被保険者が当該スボーツの指導に従事している間に生じた損害であれば足りるとする趣旨であり、「スボーツの指導」とは、当該スボーツの行為それ自体のほかに、これに密接して行われる必要最小限度の行為についての指導をも含むものであるとした上で、ダイビングにおいては、現場でのダイビングボイント選択以後エントリーに至るまでの一連の行為も、少なくともダイビングに密接して行われる必要最小限度の行使に該当するとみることができるから、これに関する彼保険者の指導は、ダイビングの指導に当たると解するぺきであるとして、本件保険料の請求を認めた。


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