ダイバーの保険リスク


以下はあくまでも個人的な意見です。


 ここ何年かの間、減圧症に罹患するダイバーが増加してきています。これに反して「潜水事故なんて怖くない」という宣伝もあるようですが。

 減圧症で恐ろしいのは、これが体験ダイビングや初級者講習でも起きているという事実です。
 そして、重度の減圧症の場合、その治療費は高額であり、また障害が残った場合、重い治療費の負担が延々と続くことになります。
 このような場合、治療費の負担を考えると、現在のところDAN JAPANのダイバー保険が最も良心的なものと考えられます。
 ただし、この保険への加入はCカードを取得してからという条件が付いており、ダイビング業界への利益提供の実績がないと入れません。
 毎年のことですが、ダイビングでは体験ダイビングや初級者講習での事故は絶えません。
 こういった、Cカードを事故の時点で得ていない人は、不幸にも減圧症などの「事故」に遭った場合どのような状態に置かれるのか、ダイビング業界は普通説明を行ないません。
 一般に、疾病(病気)と傷害(事故)の両方を担保する保険に入っていれば、とりあえず入院・通院の医療費は出ます。(旅行保険やクレジットカードについている保険などはこれに当たる場合が多い)
 しかし、重度の減圧症や空気塞栓症などにかかると脊髄や脳に後遺障害が残ることがあり、その後、時間をかけて回復にいたることもありますが、少なくとも人生の一部で社会的にハンデを背負った人生を送ることになります。(ダイビングの事故は怖いのです)
 この後遺障害に対して、一般の保険は、特別の特約をつけていない限り、減圧症などを「潜水病」という、ある意味不正確な言い方に置き換えて、後遺障害保険の支払いを拒否してきます。つまりレジャーダイビング、特に体験や講習という未経験の状況で減圧症や空気塞栓症になった場合は、「潜水病」という「疾病」・「病気」なので払わないと言ってくるのです。
 ダイビング業者が減圧症などに罹患した客にその医療費や後遺障害に伴う負担を自主的に支払うということは、ごくごく一部の良心的なインストラクターやショップ以外には考えられません。そして、事故を生むような基準を作ったり、インストラクターやガイドを認定した「指導団体」も責任をとるために積極的に活動することは考えにくい状況です。
 一般的にダイビング業界側は、客の損害に対して「自己責任」という言葉を自らの側のためにのみ存在するという解釈をしてるかのように使って、事故で苦しむ被害者の客に自分たちの過失責任すら負わせようとします。(免責同意書や業者を一方的に免責することを目的とした書類では、業者側の過失で事故がおきて客が損害を受けても業者側は責任を負うつもりなどないということを客に認めさせようとしています。その場合、その書類に客の立場や意見を反映して変更する可能性も認めていません)
 これを覆すのには裁判に訴えることが有効なのですが、これは事故に遭った被害者には大きな負担となり、また体が良くなってから、と放置しておくと、時効となって、法的保護も得られなくなる恐れがあります。
 となると、最低限、ダイバーが自らの医療費のリスクの管理を考える場合、現在私の知るところで唯一減圧症などの「潜水病」による後遺障害に保険金を支払う可能性があるのが郵便局の簡易保険ではないかと考えるに至っています。
 実際に私が東京簡易保険事務センターに問い合わせたところ、『簡易保険では「潜水病」につきましては、一般的には「不慮の事故」扱いとしております。』という回答を得ました。
 したがって、この保険に加入している場合には、日本国内に限りますが、減圧症などによる後遺障害に補償が受けられる可能性がある訳です。
 ただし、回答にも「一般的には」とあるように、後遺障害保険金の支払いには入院証明書による書面確認が必要ということですので、すべてが支払われると考えないほうが良いようです。

 ここでまとめてみます。
 初めてダイビングを行なう場合、それが体験や講習の場合には、特別に減圧症などの「潜水病」によって生じた後遺障害に保険金を支払うという特約がない場合は、あくまで日本国内の場合に限りますが、郵便局の簡易保険のみが支払ってくれる可能性が最も高いだろうということことです。

 私は、私の知る限り、どうしてこのような重要な情報をダイビング業界が積極的に開示しないのか不思議です。

 なお、このページを読んで、ダイバー保護のためのいい保険の情報がありましたら、ぜひメールなどでご教示いただければと願っております。


平成16年3月15日

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