ダイビング事故が起きる典型的なパターンとは


 平成22年3月上旬だけで、私の知るかぎり4件(3件は報道済み。1件は私自身が行政機関に確認)のダイビング事故で、業者が送検されました。
 毎年の事故数を見ると、こういった事故は氷山の一角と思われます。
 ダイビングマスコミではまずこのようなダイビングビジネスの状況を、事故予防のために(消費者が手抜きショップや手抜きインストラクターを避けることに役立つ情報)公開することはないと思われますので、ささやかな個人が3月上旬の送検事例のうち、報道された3件に絞って紹介してみます。

 ところで、司法による業者の責任が毎年いくつも問われている事実があっても、ダイビング業界とその業界マスコミは、事故は消費者の自己責任(時にはそれだけに限るという印象を受ける)という主張から脱することができずにいるようです。
 そして現状のビジネスモデルとそのシステムそのものの致命的な欠陥を指摘するようなことは行わないという強い意志を継続しているようです。
 これは推定ですが、ダイビングビジネスを支配しながらその本流にいて、業界ピラミッドの上層部にいる自分たちのビジネスの実態が、消費者と社会に広く知られてしまうと、これまで何百人もダイビングで死亡していても(そして多くの業者の法的責任が問われていても)、本質的な危険情報を消費者に対して開示せずにダイビングは安全と言い続けてきたビジネスが、実は嘘の上に成り立っていたのではないかという指摘を社会から受けてしまうと考えているのではないかと危惧しているのではと考えてしまうことも可能でしょう。

 このページの情報が、優秀で自己研鑽を積むショップやインストラクターを消費者が選ぶ目安となり、結果的にその優秀なプロが繁盛することを願い、また犠牲者が少しでも減ることに少しでも貢献できるよう願っています。


1.ガイドを書類送検(海上保安庁)/鹿児島 (送検日:3月5日)

 奄美海上保安部は、ダイビングのガイドでインストラクターを業務上過失致死容疑で書類送検。
 当該インストラクターは、平成21年7月、奄美市沖で男女2人を引率したが、溺水した(溺れた)男性を死亡させた容疑。報道によると海保は、「ガイドとして求められる責任と慎重さを欠いた」とのこと。(毎日新聞の報道から)

2.講習中の死亡事故でインストラクターを書類送検(海上保安庁)/和歌山 (送検日:3月16日)

 当該インストラクター(ショップ経営)は、平成22年10月、白浜町沖で3人を対象にレスキューダイビングの講習を行っていた。このとき講習生(受講生)一人が溺れているのに気づかず、死亡させた容疑。
 溺れたダイバーは、別のグループのダイバーに、水深3mの海底で発見された。当該インストラクターは、このダイバーが溺れて助けを求めているのに気づかなかったという容疑であった。このダイバーは意識不明のまま、39日後に死亡した。(読売新聞の報道から)
 事故当時、紀伊民報と和歌山放送は、事故者は重体と報道したが、39日後の死亡の報道があったかどうかは不明である。それによると、なお事故者は海面に浮上し「助けて」と叫んだ後、海中に沈んでいった(近くのダイバーがそれに気づく)という。

3.ショップ経営者とインストラクターを書類送検(下田警察署)/静岡(送検日:3月15日)

 当該インストラクターは平成20年9月、海の状態が悪いのにもかかわらず、この日が始めての海洋実習を6人の講習生(受講生)に対して行っていたが、事故者を見失い水死させた容疑で書類送検された。ショップ経営者は、責任者であるにもかかわらず、海の状況をインストラクターに確認したり指示をしたりするなどせず安全を確保する義務を怠った容疑。(読売新聞、及び事故当時の各報道を参考に構成)

4.学校の授業として行われた講習中の死亡事故でインストラクターを書類送検(報道がなされた段階で送検元を掲示します)/某県(送検日:3月12日)
 ※この件は、私が直接に送検を行った行政機関に送検の事実の確認を行っている。

 学校の授業の一環として行われたダイビングの講習中に未成年の生徒が死亡した事件。教師も立ち会っていたがインストラクターのみ送検。教師は潜水士免許もないまま授業を行って(講習の立会い。あるいは参加。実習を委託した業者を監督する立場にあった。)いた。


 以上の送検容疑を見ると、全てが注意義務(安全配慮義務)に違反していたということです。
 溺れたダイバーを助けることができる能力とそれを実現させるためのプロとしての能力があるか、講習生を一度に三人も引率して、事故者が助けを求めるほどの事態にすら気づかず見失ってしまうというような、能力のレベルでよいのか、送検の後の経過にも注意を向けたい。
 消費者である一般ダイバーや講習を受けようとする人、または体験ダイビングを行おうとする人は、上記の事故原因につながるような傾向(ビジネススタイルや考え方)のあるショップやインストラクターを避け、あるいはそれに途中で気づいたら、多少のお金は損しても、とにかくそこから逃げるなどの自己防衛策をとってみたらいかがでしょうか。

 教訓:プロとしての能力が貧困か、あるいは利益優先主義をとるショップやインストラクターにはかかわらないように注意し、もしその怪しげさに途中で気づいたら、急いでそこから逃げましょう!


平成22年3月22日
       3月23日一部修正

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