アメリカにおけるダイビング事故事例-2


アメリカ合衆国ジョージア州でのスクリュー巻き込み死亡事故

 1989年6月4日に、P、W、S、LそしてRは、アメリカ合衆国のジョージア州サバンナからダイビングボートSH号で出航した。 
 沿岸警備隊の免許を持っているRM船長がボートを操船していた。そしてダイブマスターであったMMも乗船していた。 
 ダイバーたちは、サバンナ灯台から26マイル沖にあるスナッパーバンク(Snapper Banks)でのドリフトダイビングを計画していた。SH号がこの目的地に到着した少し前に、船長のRMが、自分のダイビングの準備をしている間、ダイブマスターのMMにSH号の操船をさせていた。 MMは、有料の旅客が乗っているSH号を操船するための免許を持っていなかった。 
ダイビングポイントに到着すると、RMはダイビングのためのポジションを決め、MMはポイントに印をつけるために先におもりの着いたブイを投げ入れた。RMはボートを錨で固定せず、ドリフトダイビングに適合するようにエンジンのアイドリングをそのままにしていた。RMはそれから潜水用の器材を身につけるためにボートの操舵装置を離れた。 
RMが自分の潜水器材を身につけていた間に、ボートはブイとは違った位置に漂流した。 MMはブイがより近くになるようにボートの位置を戻した。RMが指示の信号を出した後、最初の潜水チーム(L、W、S、RM)が水に入った。
 ダイバー達が水に入ったおよそ1分後に、残っている客達は、異常な「ひゅー」という音が右舷エンジン近辺から発せられてくるのを聞いた。ボートのエンジンはアイドリング中だった。そしてMMは変則レバーがニュートラルであったと考えた。MMは船舶の船体を打っている何かの音を聞きエンジンを切った。そのほんの少しあと、損傷したスクーバタンクとWのマスクが船舶の右舷側に浮いていた。MMはただちにそれを調べるために水に飛び込み、右舷シャフトと船体の間に押し込まれたSの体を発見した。MMはSの体を回収し、彼と他の乗客がCPRを行い、そして沿岸警備隊と連絡をとった。潜水中だったRMとLは数分後に浮上してボートに向かって泳いだ。
沿岸警備隊は、およそ1時間後に到着してSを病院に搬送したが、彼はすでに死亡していた。その日の午後になって、MMは水中捜索を行ってWの体を揚収した。 
 事故に遭った二人ともダイビングの経験があった。 WはPADIによってオープンウォーターダイバーとして認定を受けていたし、PADIのアドバンストダイバー講習の一部も修了していた。Sも同じくオープンウォーターダイバーとしてPADIのCカードを持っていた。そして事故のあった1989年6月4日は、二人とも良好な健康状態であった。
 事故の日は、RMは自分が船長でSH号の操船をする義務があるにもかかわらず、自分がダイビングを行い、ダイブマスターのMMが免許がないにもかかわらず操船を行ったため、SH号の右舷スクリューがニュートラルの状態で空転することを知らなかったMMが不用意に操船し二人を巻き込んで事故が起きたのである。
 業者側がドリフトダイビングにおける潮の流れが把握できずにいたため、事故に遭った二人はエントリーした後に潮の流れで船尾の方に流され、その状況を確認しないままにMMがボートの位置を変えるためにエンジンを回したことが事故の原因であった。
 裁判では、事故に遭った二人にも一部の過失があったことを法廷は認めたが、結果的に業者側に主たる責任があったことを認めた。


コメント:この事故に似た事故は日本でも昨年発生している。このときは事故に遭った女性は命には別状はなかったが大怪我をしている。ボートのスクリューの危険と、潮目の読めない船長などにダイビングを申し込むことのリスクの高さを物語る事件であった。


平成12年11月8日  

このホームページの内容を、無断で転載などを行なうことはご遠慮下さい。

直接このページにリンクを張ることはご遠慮ください。