海外での事故に気をつけよう


  HPからの情報提供が遅れてすみません。現在非常に忙しく、なかなか時間が取れません。

  今回は海外での事故の傾向をお知らせします。どうか皆さんは油断なく、安全に楽しくダイビングを行って、日常生活に楽しかった思い出だけを持ち帰ってください。一生続くような苦痛は持ち帰らないでください。

  さて、日本国内では、平成16年は、平成15年に比べてダイビング事故が減りました。
  これまでの何年もの状況を見ても、事故多発年の翌年は事故が減るというのはいつものパターンです。あの、人数では平成時代最高の事故遭遇者数となった異常な事故多発年の翌年がそれ以上の事故発生となったら、これはまともな話ではありません。したがって平成16年に事故が減ったのはある意味当たり前のことです。ただ事故は高止まりでした。平成15年がなかったら、前の事故多発年の平成11年以降で最高の多発年となるはずでした。
  これが、事故が減ったのでダイビングは安全になった、という宣伝の背景にあるからくりです。
  平成17年になって行われている宣伝は、平成13年問題を彷彿とさせます。

  さて、一般のダイバーにとっては、ダイビングを行う場は国内に限定されていないので、事故は海外も含めてどうなのか、と考えるでしょう。
  ダイビング業界は海外でのダイビングを勧め、ツアーの販売やショップの紹介(消費者にとっていいショップばかりとは言い切れない。)を積極的にしていることから、その責任によって、そこで起きている事故の実態を開示するべきでしょう。
  後述する消費者基本法の条文を読んでみてください。

  海外での事故は私が知りえただけでも、平成12年から16年のデータで見ると、9月は死亡・行方不明事故(以下死亡)1件、生存1件、10月は生存1件となっていますが11月は4件の死亡となっています。
  つまり海外は、日本でのシーズンが終わって、ダイバーが海外に行くと多くなる傾向があります。これは1月から2月、4月から6月に2件以上の死亡事故が起きていますが、日本のトップシーズンの夏である7月と8月には、あわせて1件の死亡事故(生存3件)しか起きていないことからも明らかです。事故はダイバーと共に地球レベルで移動して1年中起きているのです。
  これは、ダイビングが安全になった、という業界の常套句が正しいとは言い切れない現象です。

  国内の事故が減ったので(それは事実としても)安全になったと宣伝されている平成16年は、日本のダイバー(日本に在住在勤、しかも日本人と結婚しているが、国籍が日本でない者1人を含む)が海外で事故に遭った人は13人で、うち死亡は8人となっています。生存でも、複数の人がスクリューに巻き込まれ、あるいは意識不明になって病院に搬送され、また酸欠で病院に運ばれた人などがいます。平成15年の海外事故は、死亡・生存がそれぞれ1人だったことを考えれば、平成16年は、海外での事故が激増したと言えます。決してダイビングが安全になったとは言い切れません。
  なぜこの事実を隠すのでしょうか。いや、事故に触れないことは隠してはいないということなのでしょうか。
  事故を減らすには、一般ダイバーが気をつけることができるように事実を明らかにすればいいのに、何故しないのでしょうか。平成17年も、これまでで少なくとも3人も亡くなっています。もっといるかもしれません。現時点で知られただけでも、海外で事故に遭遇しているダイバーは、国内での事故多発年だった平成15年の海外での事故に比べて、すでに死亡は数倍の数字です。これでもダイビングは安全になった、という表現をすべきなのでしょうか。
  普通に考えると、最近の動静は、消費者に対する情報操作ではないかと考えてしまいます。
  なお国内では、昨年も一昨年も、ダイビング事故裁判で続々と業者側の責任を認める判決が出ています。それにもかかわらず、いまだに事故のときの責任が消費者側にあると主張して、その主張が少なくとも司法の場から否定されている事実を見ようとしないことはいかがなものでしょうか。
  平成17年になり、またもや「ダイビングは自己責任」という宣伝がさまざまな場を利用して行われています。そこには事業者の責任という意識はなかなか感じられません。

  ある事象を危険と考えるか否かはその人の自由です。しかしその自由を行使するには事実を知る必要があります。一方の立場の人だけが知っているということは、良きバランスとは思えません。

  レクリエーションとしてのダイビングは、安全があってこそです。
  その実現のためにも、情報をきちんと開示して、安全率の高い商品ダイビングを販売している業者を見つけたら、ぜひ消費者はその業者を大切にしてください。そして口コミで仲間に知らせてください。彼らをつぶしてはなりません。安全を実現できるプロの文化がなくなってしまいます。

  最後に、平成16年から施行されている消費者基本法の第五条を紹介します。これを読んで考えてみてください。
  なお法律全文は、政府のホームページなどをご覧ください。

■消費者基本法  

第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。

一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。

二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。

三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。


■ちなみに
  えらそうなことを書いている私ですが、当然私は聖人君子ではなく、単なるおっさんにすぎません。きっとこれを読んでいる皆さんや、ダイビングの事業で起業して成功している人たちの方が立派な人だと思います。しかしそれでも、事故に遭った経験があり、何人もの遺族や家族の悲しみを知っているものとして、発言することだけは許されると思っています。


このページへの直接のリンクはご遠慮ください。

 平成17年8月30日