安全のためのフロートが海上保安庁に展示されていました


今年8月17日、海上保安庁を訪問し、平成20年までのダイビング事故の統計を行った資料を入れた報告書を提出し、その説明をさせていただきました。この報告書は私個人による任意のものです。基本的に本ホームページで示しているグラフなどを使用しました。ページ数で1,2ページです。

そこで気付いたことは、広報室に救命胴衣とレーダーで感知できるフロートが来訪者に展示するように置いてあったことです。許可を得て、その状況の写真を写してきました。

救命胴衣とレーダー感応型フロート(09.8.17撮影)

このフロート(興亜化工社製レーダーシグナルフロート)は、海上保安庁が各管区で幾度も効果のテストを行ってその有効性を確認しているものです。

鹿児島湾、カヌー・いかだ体験学習中漂流事故の事例

⇒これは学校による商品スポーツ業者と同質的(スポーツの実行をプログラム化して提供)な事業者( 「国立大隅青少年自然の家」 )への委託事業である。

今年5月27日午後、鹿児島湾で行われたT中学校のカヌー体験学習( 実施者は上記事業者 )に参加したカヌー19隻のうち多くが転覆、4人が一時行方不明になった。
 当時の参加者は以下のとおり:カヌー参加者(利用者数 107人名(活動人数54 人名)/導入指導者 職員 1人/監視艇 (監視艇1号)職員1人、指導員1人)

カヌーは出艇直後強風によって流され始め、消波ブロック付近で次々と転覆して沖に流された。その数の多さに救助活動が混乱。事故発生約40分後に近所の住民の通報によって海上保安庁等が救助に加わる。やがて4人が行方不明であることに気づく。海上保安庁のヘリと巡視艇も加わって4人を捜索し、巡視艇が沖合3.5 キロ付近でこの遭難者4人を発見、救助した。さらにこの間、T小学校のいかだ6枚が自力で戻れなくなる。

事故の発生と拡大の要因
 「国立大隅青少年自然の家」 は、海上強風警報が発令中にもかかわらず体験学習を実施した。しかし、強風による事故の発生とその連鎖・拡大を予見し、事故を最小限に留めるための十分な監視・救助・連絡態勢がとられていた形跡は見られなかった。さらに強風と潮の流れによる漂流事故発生も予見可能であるにもかかわらず、精神的にも体力的にも未熟な未成年が漂流した際に昼夜間を問わずその早期発見の確率を確実に高める、漁船のレーダーでも海面捜索を可能とするような装備(レーダーが感知できる携帯型ダイビング用フロートなど)を参加者に装備させていた形跡もなかった。(救命胴衣は単機能型だった。)これは漂流のリスクを過小評価していた可能性を示している。今回は漂流者が昼のうちに発見されたが、彼らが短時間で沖合に流されていた事実は忘れてはならない。

このことを考えると、なぜ 「国立大隅青少年自然の家」 がこのフロート付きの救命胴衣を装備していなかった、また事故後の報告書でも導入に触れていなかったことは奇異に思えました。

現在、一般に販売されているフロートは目視のみを目的とするフロートであり、当然、漂流時の発見の確率を高める効果は、レーダーで捕捉できないものとは比べ物にはなりません。

しかしながら、マスコミなどはこのフロートの特筆すべき効果については滅多な事では触れません。フロートは安全のため、つまり水面で発見されることを目的とした道具なのですから、その目的にかなう要素が卓越していながら、このメーカー以外のフロートはレーダーで感知できないことからか、消費者への情報の提供はなかなか渋いようです。人命にかかわるのに。

という訳で、さりげなく置いてあった海上保安庁の安全対策グッズの意味について思うところを紹介させていただきました。


平成21年12月9日

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