「忘れてはいけない ダイビング セーフティ ブック」の内容の簡単な解説



 「忘れてはいけない ダイビング セーフティ ブック」について、簡単な解説を行いたいと思います。

第1章

 これは、ダイビングは安全で誰でもできる、という一般的な商業宣伝、及び、営利目的の団体、「指導団体」の定めた、その利益を保証するための私的基準(講習内容からそれを行うインストラクターの指導法、その能力の保証など、そのビジネス全般にかかわる)のウラで起きている実態を知ってもらうための内容です。
 ここではまず最初に、講習中にたった一人の息子さんを亡くされたご遺族の手記をご紹介します。
 この事故は、販売された商品としてのインストラクターという任意資格が、そのインストラクターの本質的能力(注意義務を果たせるための全般能力)が足りない者にさえ安易に販売されていることが、その後の社会にどんな損失を与えるかが明らかになった事故です。こうした因果関係の中で発生したこの事故の犠牲者のご遺族の悲しみとその切なる訴えを安易に流してしまう人や組織・会社は、ダイビングビジネスに携わる資格はないと見るべきでしょう。
 二つ目は、このような適当な営利目的の資格販売のための講習が、詐欺とも言えるようなビジネスによって行われていて、それがとんでもない結果を招いているという事例です。
 それは、この適当商売によってボートのスクリューに巻き込まれたダイバーの事例です。このような事故に遭って生き残ることができたそのダイバーのご好意で、スクリューで体が切られたときの生々しい傷や、開放骨折の様子を、その外見の写真とレントゲン写真を掲載しながら紹介しています。
 これまでこのような“被害者”の実態が、ダイビングビジネス関係の出版物などで語られたことはないのではないでしょうか。交通事故の予防のためには、事故の実態を知ることで、事故につながる原因に敏感となるようにという教育や啓蒙を受けます。ダイビングビジネスでは、隠すことで客を誘引している業者がいます。我々消費者が、そのような誘引に乗らず、しっかりとした業者ためを選別できるような自覚を、この事例から持って欲しいものです。
 三つ目は、旅行業者が販売したファンダイビングの契約内容(役務商品の内容)が、契約したダイバーが現地に着いてから、やめるに止められない土壇場においてより危険な内容に変えられた結果、“高所移動後のダイビング”で重度の減圧症になった事例です。このダイバーは、自分の実名と写真を公開して、この事例を今後の事故の予防になるようにとの願いから協力してくれました。
 この方の重度の減圧症というのは、最終的に車椅子の生活になると医師に告げられたほどの重度でした。しかもこの悲劇は、先に書いたように、人為的かつ適当な安全管理環境から発生したものでした。しかしこの重大事故に遭われたダイバーは、本当に必死の努力を重ね、重度の後遺障害を残しながらも、ついに自力で杖で歩けるまでに回復したのです。
 ここでは、この一連の流れを紹介することで、適当商売の招く悲劇と、それに負けずに、車椅子から杖での自力歩行ができるまで回復していった方の事例を紹介しています。この事例は、多くの重度後遺障害の励みとなるでしょう。
 さらに、初級ダイバーが水中でショップのスタッフのバディに見捨てられて溺死した後に引き揚げられたときの写真や、私が溺死しかけたときの事例をマンガにしたものを、完売してしまった拙著から再掲しています。
 加えて、「危険の程度にも致死的であるということは他とは質的に異なる」という、ダイビング業界と、その業界と密接な関係にある方のみが知っている、その内輪の認識を紹介して、ダイビング業界が語ってきた事故数より、人数でみて約40%も多かった、私が調べた事故の実態を明らかにしています。これが隠蔽されてきた真実の一部です。
 これまで、私のホームページや出版物、また学会や講演などでこれに触れても、このような数字はなかったことにして無視するというダイビングビジネス内の不文律(としか思えないこの十数年の状況があります)によって、このような、消費者によって必要な情報は無視されてきました。この数字が無視されるということは、その数字の背景にある、犠牲になった人たちの存在やその受けた苦痛や損害を無視するということであり、本来は人権無視とも言えるのでしょう。しかし私が十数年以上もこういった事実を訴え続けても「無視」し続けられていましたので、事故の実態は、無視する側にとって、私を含めた事故被害者やその家族・遺族が思うその重さと比べれば、彼らにとってまったくたいしたものではないのでしょう。
 ここの事故数やその内容を見て、これをたいしたものと思わない心理やビジネスが存在することを知ることは、一般ダイバーにとって自分を守るために大切な知識の一つだと思います。


第2章

 第2章では、まず、何でも前向きに、というダイビング時の“おまじない”の功罪について考えています。
 ダイビングをするときのリスクの最大値は死です。または植物状態、車椅子の生活、自力で歩くことができても杖や各種の人体の機能障害に苦しむことや、一見何も問題ないように見えても、実は脳障害が残って就職が困難になるケースなどがあります。
 こういった激しいリスクを回避しようと思えば、ダイビングをしないことが最善ですが、これを行うなら、最悪のケースを予想して、そのケースに遭遇しないようにするにはどうすればいいか、それでも遭遇してしまったらどうすればいいか、などを、真剣かつ深刻に捉えて大真面目で考えなければなりません。そこにはダイビング時のおまじないの入る余地はありません。いや入れてはならないのです。
 こういった、一般に流布されていることの問題について考えることから第2章が始まります。
 その上で、ある、作業潜水大手の会社の安全意識について伺ったことを記述しています。これは大変ためになる話です。
 またこでは、国民生活センターに寄せられた、ダイビングビジネスに関する苦情や相談から、その問題を明らかにしています。
 またここでは、悪質なダイビング器材の販売の実態や、あってはならない手抜き講習やハイリスクファンダイブの事例を、女優の沢井美優さんが出演した非売品ビデオからマンガ的に紹介しています。
 こうしたことがあることを前提に、安全のオーダーについての考えや、さまざまなケースでの注意すべきことについて書いています。そしてリスクが生じる場面とは、単に潜っているときばかりではないことを説明しています。加えて、漂流時に一刻も早く発見されるための器材についての紹介を行っています。
 ここでは、器材のそれぞれの種類の選び方を解説し、またこれまで明らかにされていなかった、ダイビング用のタンクに関する安全確保の方法について、そのノウハウを明らかにしています。これほど分かりやすくかつ詳しく解説した内容は、これまでのダイビング本には見られないものです。これは一般ダイバーのみならず、プロは必見の内容となっています。
 この章の最後は、女性特有のダイビング時の問題、あるいは解決しなければならないことを、知っておきたいことを、女性ダイバーによって、男子禁制の内容で詳しく解説しています。この内容は、女性ダイバーが知っておかなければならない内容であり、女性ダイバーを引率したり指導するプロダイバー側が配慮しなければならない、大切な内容である。


第3章
 
 ここは、理想的な講習とはどのようなものか、ということを明らかにするために、女優の沢井美優さんが実際に講習を受けたときの模様をレポートしています。
 これまでもずっと手抜き講習が横行しています。まったくもってひどい状況です。しかし一方で、まじめに、優秀かつ質の高い講習を行っているプロがいます。
 一般の消費者に提供されている情報のレベルでは、質の高い講習と、どうしようもない講習の区別をつけることが困難なのが、ずっと続いているダイビングビジネスの状況であり、またこうすることで利益が上がるビジネスシステムとなっていることから、これからも変わりそうもない状況です。
 ここで、質の高い講習はどのようなものかというその内容を明らかにすることで、これを基準として他の講習の品質チェックをするヒントにしていただければと思っています。


第4章
ここでは、若いダイバーにも非常に役立つ、シニアダイバーのための情報がたくさん紹介されています。
 シニアダイバーのリスクは、若いダイバーのリスクとは比べ物にならないほど高いものです。だからこそ、そういった年代層に必要な情報というものがあります。
 ここでは、困ったダイバーとはどのような人かを示し、またベテランダイバーからのアドバイスなども掲載されています。どれにも大切な警告が含まれています。


第5章
 これまでダイビングビジネスの基準は、安全に関するものも、業者からだけのもので、消費者からのものではありませんでした。
 私は賛同者たちと共に、ここに初めて、消費者から見た優良業者の基準について考えてみました。ぜひ皆さんも考えてみてください。
 ここでは、安全に関する品質の宣言をした業者の方々や賛同者の方々、またそれとは別にベテランのプロの方々を紹介しています。どうかプロであるべき水準を見る際の参考にしてください。

特典情報

 最後に特典情報として、プロのための法的リスク解説を行っています。
 これはダイビング雑誌などやインストラクターマニュアルなどにはまず載っていない、プロが知っておくべき、または知らねばならない法的問題(義務・責任も)について解説してある者です。プロの方は、どうか熟読してください。
 


平成20年3月29日

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