レベル2宣言ショップの今年のビジネスは?


今年のダイビングビジネス

 今年のダイビングビジネスは厳しい状況だったようです。ある業界関係者は次のように語っていました。
 「今年のダイビングビジネスは、経済環境のさらなる悪化もあり、業界全体として下降傾向にあったようです。理由として講習内容や安全管理の薄いショップや不透明な経営をしているスクールが一部あるために、ダイビング業界全体が不信感を持たれたことも影響していると思われます。」
 しかし業界の中には、ダイビングの講習やガイドの品質を下げずに、しっかりとしたダイバーを育成するために努力しているスクールも少数ながらあり、こうした品質を通じて安定した業績を保っているダイビングショップやスクールもあるようです。
 私が聞いた話に限れば、一般のダイビングショップは相当に苦労されていたようです。しかし厳しい状況だったのは、もしかしたら現場で体を張って働いているショップやプロダイバーだけだったかもしれません。
 
※参考:別の機会にあらためて掲示しますが、「指導団体」としてダイバーやインストラクターの養成事業を行っている某資格販売会社は、あの、死亡・行方不明者が大量に出た平成19年(2007年)に、より事故者数が少なかった12年前の平成8年(1996年)とほとんど同じ売上(H8 1281百万円、H19 1282百万円)を確保し、しかもこの12年間で最高かつ驚くべき税引き後の利益(H8 98900千円、H19 213000千円)をあげていました。12年前の倍以上の税引き後利益を出しているのです(データは帝国データバンクから公表されているものを使用) 。この利益の半分でも安全のために使われていたら・・・もしかしたらその中の誰かを救えたのではなかったか・・・などと考えるのは、くだらない私の単なる妄想でしょう。 ただあの、清潔かつ社会的に高いイメージをもって日本に君臨しているここの親会社は、当然この状況を知っているはずですが・・・どうなんでしょう?私のような愚か者には想像もつきません。


レベル2宣言ショップの今年はどうだったのか

 今年レベル2の宣言をしたショップのうち、東京都にある東京アクアラングサービスと静岡県にある安良里マリンサービスにお話を伺いました。

東京アクアラングサービス

 この夏、拙著「忘れてはいけない ダイビングセーフティーブック」でも取材させていただいた、新宿にあるダイビングスクール、東京アクアラングサービスをのぞかせてもらった時に、スケジュールボードを見ると、特に土日は講習やツアー、体験、チェックダイブなど、活動の予定が一杯で、さらに夏休み期間は平日にもたくさんの予定が入っており、まさしくフル回転で仕事をなさっていました。このショップでは学科講習を、ただビデオやDVDを見てきてくださいというだけの内容ではなく、対面式のきちんとした講習から始めて、水域での実習は1対1で行うという丁寧な環境で行い、チェックダイビングや体験ダイビング、またファンダイビングも安全第一で実施しているため、予定人数枠を超えたメンバーを受け入れることができなかったようです。このように一度に扱う人数に制限があることから、少しでもお客さんの求めに応じるには活動日が増えるという状況になっていました。
 このような、ダイビングサービスがその品質を維持する努力を継続しているところで今年ダイビングができたダイバーの方々は、良い品質のサービスを手に入れることができたという意味で幸運だったと言えるのではないでしょうか。
 これは別の話ですが、今年、ここがレベル2の宣言をしたことで、本当に他のショップとダイビングサービスの品質が違うのかどうかをチェックするということで来られたダイバーの方がおられたようです。この話から私は、安全というビジネス品質を評価の対象として見るダイバーが確実にいるのだということを感じました。

 このショップでは11月も終わりに近づいてから、やっと一息入れている様子でした。

・店舗情報

東京アクアラングサービス
東京都新宿区新宿2−4−1−102
島田誠一
03−3354−0880
URL: http://www1.ocn.ne.jp/~tas/
e-mai: tas246j@crocus.ocn.ne.jp
営業時間 12時〜21時 定休 火曜日

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安良里マリン

 ショップオーナーの加藤さんによると、私が書かせていただいた「忘れてはいけないダイビングセーフティブック」を、こちらに来られたビギナーからダイブコンレベルのすべてのダイバーの方々に、ダイビングマニュアルのサブとして読んで下さいと勧めていただいたということです。
 またこの本を読んで安良里マリンさんに来店し、中身の濃いレスキューコースやスペシャルティコース等を受講した方もいらっしゃったということです。レベル2宣言をされたことが、こちらのお客となったダイバーの方とショップの双方に満足いただく結果となったそうです。
 安全に高い価値を持たせたビジネスを行っているショップへダイバーが集まることは、ダイバーの意識がダイビングビジネスの品質を育てるということにもなることを物語っています。

 ←ショップ外観

  ←海からのショップ外観

・店舗情報

安良里マリン
〒410-3502 静岡県賀茂郡西伊豆町安良里84-1
TEL/FAX:0558-56-1501
URL: http://www.arari.jp
携帯サイト: http://www.just.st/303681
e-mail: info@arari.jp


感想

 かつて環境問題を語る人たちは、社会から白い目で見られたり歓迎されなかった時代がありました。しかし今や環境こそが時代の求めるところとなり、さらにはファッションやライフスタイルにまで影響を与えるに至っています。
 ダイビングではまだまだ人身事故が相当に多く発生(その多くは何らかの形でダイビングビジネスの低品質の部分が関係している。)しています。現在のダイビング業界やマスコミ、及びその関係(あるいは影響下にあったり利権が関係している)団体などでは、このような事故の背景に、民事責任や刑事責任までが続々と問われていっている、一般のダイビングビジネスの品質の著しい低下が横たわっていることはタブーとして触れられずにいるようです。広告主や何らかの背景を持つ業界の利益の方を、お客の安全や被害者となった方々の立場より、”とっても大人の事情による深い配慮”があるように感じます。
 このためこれからのダイバーの方々は、何より自分や家族、そして友人のダイバーたちの安全のために、安全確保を第一とし、そのためにあらゆるリスクについて正しく情報を開示し、リスクを共に直視して安全を求めてくれるショップやプロダイバーを選んで付き合って行く必要があると思います。
 安全のために正直に努力するダイビングビジネスこそが、それこそ高い品質のライフスタイルを実現し、その品質こそがファッションであると評価され、それが未来につながって発展することを願っています。そしてそれこそが、日本のダイビング文化の品格の向上につながっていくことでしょう。そう願います。

 来年、ダイバーとしてデビューしたかったり、また再度海へと思っている方々は、来年のシーズンの前に、ちゃんとした講習を受け、あるいはチェックダイブを行って自分の技量の点検を行っておくことをお勧めします。そうそう、この12月もダイバーが死亡しています。毎年年末年始に誰かが死亡しています。くれぐれも用心してください。

※以上は平成20年12月12日現在の状況をもとに執筆したものです。


平成20年12月12日

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「忘れてはいけない ダイビング セーフティ ブック」 「商品スポーツ事故の法的責任」