最高裁の判決に思う


 平成18年3月13日、最高裁第二小法廷は、裁判官全員一致で重要な司法判断(平成18年3月13日 第二小法廷判決 平成17年(受)第76号)を示しました。

 この事件は、雷雲と雷鳴が響く中行われた高校のサッカーの試合中に落雷の直撃を受けて重度の障害を負った高校生(当時)が高校と主催者の高槻市体育協会を相手に損賠賠償を求めたものです。

 最高裁は、引率の教諭に落雷事故を予見する注意義務があったがこれを怠ったとし、高槻市体育協会を主催者と推認するのが相当であるとしました。
 また落雷事故は全国で発生しており、これを予防するための注意事項が多くの文献にある、として「知らなかった」ではすまないことを明示しました。

 現在のダイビング業界(「指導団体」、ショップ、イントラなど、ダイビングマスコミ、業界団体、業界賛助あるいはその影響が及んでいる学会や学者など)では、事故の実態やその原因についての情報開示に非常に否定的です。そして事故の原因や責任についても、例えばイントラに対してさえ、必ずしも事実を告げているわけではありません。以前、某イベントで、業界と個人的に友好関係にある某捜査関係の方が、業者の方からの事故の責任に関する質問に一部誤った回答をして”安心”させていましたが、こういったイメージコントロールに影響されることは大変危険です。事故が起きたら事故の責任問題の実態(司法判断など)を知らなかったから責任はない、という言い訳は通用しないからです。
 この最高裁の判断は、あらためてこの事実を明らかにしています。

 特に某ダイビング業界団体は、研究できる事故例が少ないので事故の研究が進まないなどということを主張していますが、これは明らかに事実に反します。
 日本図書館協会の選定図書にもなっている拙著「ダイビング事故とリスクマネジメント」(大修館書店)には大量の事故例が載っていますし、それ以外にも何冊もの拙著で事故の実態に触れています。加えてこのHPでもいくつもの事故例がありますので、このような事実を無視した主張は明らかのに意図的に事実に反していると感じます。そしてその意図の背景には、特定の誰かの利益を守るための愚民政策(個人的印象からの比喩に過ぎません)の影を感じます。

 プロの皆さん、「知らなかった」ではすまないことを、よく考えてください。


平成18年3月14日

 このページの内容の無断転載をお断りします。
 このページへの直接のリンクを貼ることはご遠慮ください。
 当ホームページへのリンクに関してはトップページの注意事項をお読みください。