2011年の事故が2012年の事故多発につながっている
〜ダイビングの劣化が起こっているのか


平成23年(2011年)、つまり大震災と津波があって、ダイビングビジネスが客の減少で大きな困難に直面した年、それでもダイビングの事故は盛大に起こっていました。

「盛大に」というのは、ダイビング人口(活動ダイバーとそのダイビング回数)が激減したとも言える状況でありながら、結果としての数字上は事故が減ったかに見えながら、実はほとんど減っていなかったということで、実質的に、事故に遭う確率、そして死や行方不明、植物状態に陥る確率が上がっていると言える状況からの表現です。

皆さんの接するダイビング業界や、その手で読む雑誌などのダイビングマスコミは、この事実をダイバーにきちんと教えてくれましたか?

昨年は多忙でなかなか平成23年(2011年)の事故実態をまとめられませんでした。
現在でも、意識不明の重体となった方々のその後(例えば海保では事故24時間以降は生死は捉えていない、警察も短期間の生死確認以外はしていない。事故後25時間で死亡となったならば、その管轄が海保であれば生存とされ、同じく警察でも一定期間(せいぜい1週間程度か)たてば、その後死亡となっても「生存」と記録してそう発表するのです。

そのような情報のハンデを踏まえて見ると、海保、警察、消防、自治体へ出された報告書からの情報、海外分は在外公館が把握した情報(外務省管轄)を総合すると、確認できただけで、

■平成23年(2011年)の事故(国内)は、

事故発生件数で46件

救助などで生存(減圧症や怪我、溺水の影響などの状況の程度は区別せず)だったダイバーは32人(このうち40歳以上のダイバーは24人)

この他に、重体だが生存と記録された以降の状況が不明で、事故で意識不明(うち1名は植物状態)となったダイバーが3人(このうち40歳 以上のダイバーは2人)

死亡・行方不明者(内1名は事故で重体となり、24時間以降に死亡)は13人(このうち40歳以上のダイバーは8人)

でした。

平成23年(2011年)の事故(海外の邦人)は、

事故発生件数で7件

救助などで生存だったダイバーは2人(このうち40歳以上のダイバーは2人)

死亡・行方不明者は5人(このうち40歳以上のダイバーは3人)

でした。

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これは、震災により海外でダイビングを行ったダイバーが増えた可能性も考えると、事故がダイバーと一緒に海外に”連れて行かれた”とも考えられます。なぜなら、海外のダイバーの死亡・行方不明は、在外公館が把握している分で見ると、平成21年(2009年)で死亡3人、生存3人、平成22人(2010年)は、死亡0人、生存3人だからです。
海外の事故が激増した、という表現が適切でしょう。
皆さんの接するダイビング業界や、何らかの形でダイビング商品を紹介する旅行業界、海外のダイビングを紹介するダイビングマスコミからの情報で、このような、自分を守る意識を高めるために大切な情報はちゃんと提供されましたか?
安全に関わる情報を隠さず開示してくれる優良業者を選ぶ大切さが、ここにあるのです。事故に遭ってからでは遅いのです。

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大震災でダイビングビジネスが重大な影響を被って、ダイバーの活動が大きく減った平成23年(2011年)、日本のダイバー(国内では国籍が日本だけとは限らない。しかし海外では国籍が日本でなければ日本人の事故とはカウントされない。)が 国内外で死亡行方不明となったのは、現時点で判明しているだけで 17人でした。

重体や植物状態の方は、これに加えて3人

事故件数は合計で53件

事故者総数は55人です。

以上は、私が個人的調査で把握できた範囲に過ぎませんが、そこからはダイビングが安全に行われていたという感想は持てません。

 

あれだけの大震災でダイビングを行う機会が大きく減った年に、平成時代に入っての通常年平均約20人の死亡・行方不明者数に迫る事故者の状況は、ダイビングを行うダイバーと、そういったダイバーを指導したり、潜水計画を販売する上での安全管理への意識や装備への努力といった、ダイビングという現象そのものの劣化を示しているのではないでしょうか?
何年も前から傾向が見られてきたこの劣化こそが、2012年の事故に結びついているのではないでしょうか。

少数ながら 現場で努力している優良ダイバーの事業を、安全軽視の手抜きでコストを削減した低価格競争で疲弊させて苦難に追い込み、さらには廃業にまで追い込むビジネスモデルとそのシステムのあり方と、何でも安ければいいと、自ら安全への意識を低下させて事故を招き寄せている消費者としてのダイバーの 意識と行動パターンの劣化が、現在に至る事態を生んでいると言えるのではないでしょうか。
消費者が、ダイビングという致死性を持った遊びで頼る「優良業者」と「非優良業者」の区別ができない、あるいは区別できる目を養おうとはしない風潮は、ある意味絶望的な未来への道を示しているとも言え なくはないでしょう。正さなくてはなりません。

事故は、やってくるものではなく、招くものなのです。
 


平成25年1月6日(1月7日一部修正)

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