あなたが死亡したときのために

★ご遺族となる方々への伝言を忘れずに★


  あなたがダイビングの事故で死亡するということは、少ない確率とは言え、 決してありえないことではありません。少ないけれど現実的な確率であることを知ってください。そのような自覚こそがこの確率を下げるために有効な手段なのです。

  さて、ダイビングの事故が起きた後、ご遺族となった方々は、基本的にダイビングのことを知らないばかりでなく、たとえ知っていても、事故の実態やその後の対応の方法を知っている方はまずいません。
  そして、このような事故が起きると、ご遺族の感情として、ご遺体に傷をつけるのはいやだ、ということで、司法解剖を避けることが多々見られます。
  しかし事故後、警察の捜査や、その後の損害賠償についての裁判(ないしは和解交渉や調停)で、事故の原因を特定するときに苦労するのもまたご遺族です。遺族として残された家族は、将来の生活をどうしようか、あるいは自分の子供を亡くしたあとの人生をどう生きていったらいいのか、という現実問題に、いやおうなく直面します。
  このような負担を少しでも下げるためには、事故は起こりえないことという先入観を捨てて、遺族となる方々に、自分が事故で死亡した場合、可能な限り司法解剖をおこなってもらうように事前に告げておくことを考えることが必要です。
  あなたが事故で死亡した場合、水中では証拠や当時の状況(潮の流れや透明度などはなおさら)を示す形跡はまず残りません。したがって、その原因を探る手立ては、あなたの体に残ったものだけとなることが多いのです。
  また解剖時には、減圧症を示す兆候(水中で急に意識を失って溺死した場合、減圧症によって意識を失ったということも考えられる)、体の傷(パニックになった場合、ウニのとげや毒性を持つ生物に接触したことも考えられる。)、肺水腫などの兆候(呼吸ミスだった可能性⇒レギュレーターの故障、また水中で誰かに払われてとれたなどの可能性)、垂体内出血の有無、心筋・脳梗塞の可能性、他に血液成分なども確認された方がいいのではと思います。
  それと、ダイビングコンピューターや、潜水データの記録可能なダイビングウォッチを持っている人は、必ずそのメーカー名と製造番号を教えておいて回収(誰かにひそかに回収されたりすりかえられるということも状況によってはありますので)してもらってください。レンタルで借りる場合は、そのシリアル番号を携帯メールで誰かに送って保存しておくこともいいかもしれません。
  またログブックはまめにつけ、講習やガイドダイビングでも、できるだけ詳細に記録をとっておいてください。魚を見た感動などの楽しかったことは別のノートにまとめておくことが良いでしょう。ログブックはデータの記録用に徹するといいと思います。
  そして、そのときに一緒にダイビングを行った方で、ダイビングの前後に写真を撮っていた方がいたら、そのとき写したどんな写真でも手に入れておいてください(その写真が撮られた状況を撮った人から写真の裏に書いてもらっておくのがよりよい方法です)。事故が起きた後、亡くなったダイバーの腕にあったはずのダイビングコンピューターが紛失してしまっていたり、データが消滅してしまっていることもあります。常日頃たとえレンタルでもダイビングコンピューターかダイビングウォッチを身に付けていたかどうかの習慣性が写っている写真にあるだけでも、証拠として有用と考えられます。
  また自分が死亡し、すぐその遺体が回収されたら、自分が発見されたときの状況を仲間に写真にとっておいてもらうように頼んでおくことも必要です。それは装備の状態などをあとで確認するために必要だからです。
  これだけでも、あなたが死亡したときに、ご遺族の方々にとって、ずいぶんと助かることになります。

  あなたが万が一死亡に至ったとき、その後はご遺族が対応せざるをえません。そのためにも、このような準備はぜひ行っておいた方がいいのではと思います。  

  このテーマは刺激的すぎるかもしれません。ご不快に感じられた方にはお詫びいたします

  しかし、ならばこそ皆さんの印象に残ることでしょう。そこから出てくる認識こそが、皆さんの事故を防ぐ手立てになるやも知れません。


 このページへの直接のリンクはご遠慮ください。

 平成17年3月17日
         4月18日一部編集