「神子元島での潜水死亡事故について」 平成9年10月19日(日)南伊豆下田沖の神子元島西側の「江の口」で2人のダイバーが別のグループのダイビング船のスクリューに巻き込まれ、うち一人はインストラクターがかろうじて助けた(肩甲骨骨折・頭部裂傷・臀部裂傷で入院加療1ヶ月)」が、もう一人はスクリューに巻き込まれて死亡した事故。(下田海上保安部) この件については、平成9年某日、私も某業者(関係者)に取材をしたのですが、その時「この件はダイビングの事故とは言えないので、この事故を“ダイビングの事故”として取り扱ったら私共にも考えがあります」と再三強調されたため、私が直接行ったその業者側からの取材からの記載はここではしません。恥ずかしいことですが、これは私の“自己保身”のためです。よって下田海上保安部の協力による、事故のマスコミ発表資料及び各マスコミによる報道からの引用という形でこの件についての報告とします。下田海上保安部発表資料(平成9年10月19日) 神子島ダイバー死傷事故関連
の事情聴取及び某の実況見分を実施し次の状況が判明した。 2、インストラクターによると、死亡した○○、負傷した○○他女性1名の初心者グループを引率し、潜水開始から30分経過のころ浮上の合図をし浮上を開始したが、水深10メートル付近で○○・○○の浮上スピードが早くなるとともに水面上に船底が見えたので、両名に上を見るよう合図し着用しているBC(浮上調整ジャケット)の空気ブローを実施するとともに浮上を抑えるため両名を掴み船に近づかないように試みるもそのまま某の船底にうつ伏せ状態で接触した。その時、プロペラは回転していなかったが離脱しようとしているうちにプロペラが回転し吸い込まれそうになり、○○が離れていった。自分と○○はどうして離脱出来たかはっきり覚えていない。 3、某は1006頃ダイビングポイントの神子元島江の口に到着、辰丸のダイバーが上がる時間であること及び同初付近に潜水していることも知っていたが大丈夫だろうと思いポイントに進出、機関を停止し自船のダイバー7名の潜水開始を確認した。その後船を移動させるため機関を最微速前進とし航行を開始、一挺身程前進したとき大きな音と振動を感じダイバーを引っかけたことに気づいた。 4、第某丸は自船ダイバーを潜水させた後付近で待機していたが浮上時間が近づいたのでダイバーの気泡に注意していたところ某がダイバーを乗せ自船に接近、浮上するのか等の無線交信をしてきたことから本船ダイバーの位置を理解しているものと思っていた。ところが、某は本船ダイバーの付近に進出しダイバーを潜水させた。事故を知ったのはダイバーのオーイ、オーイと呼ぶ声で始めて知った。 5、○○○○は、浮上中水面上に船がいるのを知り避けようとしたが船底にはりついてしまった。後のことはよく覚えていない。 6、某船底の推進器付け根付近に死亡したのダイビングスーツ等が絡まっており、同付近船底にボンベによると思われる船底塗料の剥離及び一部曲損が確認された。 (追加情報…下田海上保安部発表) 人身事故発生状況 その後、判明した事項 被害者2名は、某社の主催するダイビングスクールに参加していたもの。 一行18名は(インストラクター、アシスタント3名、練習生15名)は第某丸(7.30トン船長66才に乗船し13名が神子元島(西側・江の口水深約21m)向け、残り5名は、小稲港内で待機とした。 0900頃出港し、神子元島で班は2班に分かれ、0940頃からダイビング開始1020頃、別のダイビンググループのボート(某号16トン船長60才のスクリューに2名が接触し1名死亡、1名負傷したもの。 負傷者は、救急車で伊豆下田病院に搬送され、頭部裂傷・臀部裂傷・肩甲骨骨折全治3ヶ月(その後入院加療1ヶ月と訂正…注)。 死亡者は、当部において共立湊病院・飯島 譲 医師立ち会いのもと検視した結果、頭蓋骨骨折・頚椎6・7番骨折で即死。(つまり、事故を報道した某写真誌の記事によると首が体から分離していた。また片腕も後日海底で発見回収…注) 以上が下田海上保安部発表の資料です。氏名・住所などを伏せているのは下田海上保安部の希望です。ただし、以下に紹介する新聞記事や雑誌の記事には実名で明記されています。 新聞記事:平成9年10月20日(月)各紙朝刊各紙からタイトルのみ
その後雑誌ダイバー平成10年1月号でこの事故を「マスコミに報道されなかった神子元島潜水事故の全容」としてモノクロ2頁で紹介しています。毎年何十人ものダイビング中の死亡事故が発生している中、通常はそれら(死亡)事故が多数発生しているという事実の存在に極力触れないでいるダイビングマスコミが、この手の事故をダイビング雑誌が記事として取り上げるのは異例のことではあります。これは首都圏(全国)のマスコミに多数報道されたための危機感からではないかと勝手に推察しています。なぜなら、私自身過去数年の新聞記事(主に地方紙)のダイビングの事故の記事を収集していますが、事故の全てではありませんが、一般に知られている以上の数は報道されています。しかしダイビングマスコミでは、中央で事件・事故として大きく報道されない限り、ほぼ100%その事実が“記事としては”無視されています。地方紙ということで全体への影響が少ないからでしょうか? さて、ダイバー誌に紹介されているレポートの内容ですが、事故の様子の紹介と当事者としての業者側の言い分(裁判の前のこの時点においては言い分のみの紹介という点では妥当であると思われる)のみが紹介されています。いつものことながら、過去に発生しているスクリューに巻き込まれての死亡事故との比較検討や、事故全般への問題提議などの展開はありませんでした。記事中、このような雑誌側のコメントがありましたが、この部分に限れば、前述のとおり個人的には正しい見解と思います。 |