リスクを知ろう。リスクの軽視や無視で死ぬな。


 今年のダイビングシーズンを控えて、雑誌などでは広告満載で最新号が出ています。
 しかしそこには驚くほど安全のための記事がありません。一部に事故を防ごうという記事がモノクロページで見られますが、事故を防ぐための人為的ビジネス的原因(技量不足のダイバーやインストラクターを生み出す真の原因)について知らされることは決してありません。またポイント別のリスクについての情報開示もありません。
 今年のダイビングでは、現場でダイビング船を座礁させたりする事故(怪我人が7人出ている)も起きています。
 さらに漂流後20〜30分で溺死したり、減圧症で死亡したり入院となったりなどの事故も起きています。

 事故情報の収集は、個人ではなかなかに難しいところではありますが、その私でさえすでに上記の事故を含む13件の事故を、そしてそのうち6件で7人が死亡する事故を聞いています。海外でも複数人が事故に遭い、少なくとも1人が死亡しています。
 なお助かっているダイバーたちの中にも減圧症で高気圧治療を行っている複数の人が居ますので、追跡調査ができればと思いますが、彼らに必ずしも後遺症が残っていないと言い切れるのかどうか心配です。

 安全・簡単・誰でもできる・100%Cカードが取れる・100%インストラクターに合格できる、などという宣伝文句の背景にある危うさを忘れずに、「ダイビングは安全」という幻想に頼ったダイビングではなく、より安全となるような配慮の上でのダイビングを皆さんは実行し、楽しんでください。

「ダイビングは本質的に危険である。」という評価は、近年のダイビング事故裁判でのほぼ全てで示されている評価です。またダイビング業界の内部資料でも、「ダイビングの致死性の高さは他のスポーツと本質的に異なるものだ。」という認識が示されています。
 こういった本当のことはダイビング業界から語られることはまずありませんし、またそれを考えることは楽しくないから、都合が悪いからと言って無視していいことではありません。

 プロダイバーの方々も、自分の技量を過信せずに、また一度に大きな利益を追うようなことをせずに、しっかりした潜水計画の下に、安全ダイビングを実施してください。そしてダイバーの方々は、こういったことを実行している業者の方々をぜひ盛り上げてください。

 今年も刑事裁判でインストラクターの有罪が確定しています。また幾人も送検され(既に複数人送検されている)ていますし、その少なからずはここ1〜2年の裁判をへて有罪となる可能性があります。送検される人の中には、インストラクターでない、事故を起こした事業の経営者もいます。インストラクターに全ての責任を押し付けることができる時代は去ろうとしています。そして有罪にならなくても彼らには損賠賠償請求訴訟が行われることになるでしょう(その可能性は高い)。
 これらすべては目先の楽や人気取り、そして小金を稼ぐために安全のための方策を軽視することから生まれています。また一瞬の油断から生じています。そういった軽視や油断のもたらす結果は、たとえそれが上部から植えつけられた価値感によるものであっても、事故を起こした方々も当然負うことになります。(いずれそういった価値感を植えつけたところの責任も問われてくる時が来る日も遠くない可能性がありますが。)
 ショップの経営者やインストラクターの方々、そしてダイバーの皆さんは、例え臆病と言われても、真の勇気を振り絞って安全のために力と知恵を尽くしてください。また危険を平気で強いる、あるいは軽視したり無頓着なショップの経営者やインストラクターそしてダイバーは遠ざけてください。
 陸上での日常ではいい人であっても、ダイビングでは陸上でのいい人という価値感よりも、ダイビングの全工程における安全配慮ができる人の価値こそが優先することを忘れずにお願いします。


平成18年5月18日

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