あるダイビングショップの事例
この事例は、自分がダイビングショップを選ぶ参考にして下さい。
なお、以下の分の私のコメントは、あくまでも個人的な感想です。


 私は、これから書く女性に直接お会いして、その後何度かメールのやりとりを行なって細部の確認を行ないました。そして実際に、申し込みのきっかけとなった広告の実物や、その他の資料のコピーももらっている。また、後述するが、私自身も実際にそのショップに行って、特に重要な点については確認してきました。したがって、この事例は実際に行われている講習の実態の一つとして重要事例となるものと思います。

 なお、この女性の保護の為に、つまり犯人探しの対象とされないためにわざと発表の時期をずらしました。ご理解下さい。


  ある20代の女性が努めている職場には、同僚にダイバーが多くいた。そのため彼女が彼らからダイビングの話を聞いて、自分も「いつか始めたいな」と思っていたところ、1999年の春のある日、たまたま地下鉄で無料配布されていたタブロイド版の新聞形式のPR誌に載っていた広告を見た。  

広告文

『Cカード取得のチャンス スクール無料受講券 20名』

『泳げなくても大丈夫!ダイビングの基礎知識から基本技術、楽しみ方をわかりやすくレッスン。ダイビングツアーも開催中。通常3万9千円の講習券を。

(宿泊・交通費、器材レンタル料など、別途費用がかかります。)

(住所略 Aスクール[○○]係 (3月末日)』・・・屋外でのリゾート地のようなところでのプール講習の写真が載っている。特に「イメージ写真」という注釈もなし。

 彼女は「抽選によりCカード取得無料」の広告をみて、応募し、"当選"した。

会社の同僚のダイバーの達は、講習に行くと張り切っていた彼女のために、新品の3点セット(マスク・フィン・グローブなど)を贈った。その彼女が同ショップに正式に申し込みに行ったとき、「器材はショップで買ってもらったものでないと"安全ではない"のでレンタルにしてください。」と言われ、器材を全てそのショップで買うか、ショップのレンタル器材を使うかの二者一択を申し渡された。さらに、「無料コースはかえって高くなるから」と、ダイビングの講習システムの知識のない彼女に、半ば強引に有料コースを勧め、結局レンタル代込みで48,000円(税込み50,400円)となってしまった。この際、このショップが「無料コースはかえって高くなるから」ということの明細と、有料で販売した講習のコースについての詳細な説明はなかったとのことである。この時点で彼女はショップの言い分を善意で解釈していた。

 ダイビングを習いたいという気持ちで来た彼女は、ダイビングの講習とは全てこのようなものだと思い込み、この金額をその場で払った。後日職場の仲間にこの話をすると、「それはおかしいよと」と言われたそうであるが、彼女は「変なクレームつけて、講習中に意地悪されるのもやだから、」ということでこのまま講習を受けることにした。

 このショップのパンフレットには「発行されるCカード」として、S・E・A、NAUI、JP、CMASのブランド名が載っていた。彼女はPADIのCカードが欲しかったのでそのことを言ったところ、別途5,000円をプラスすればPADIのCカードでも取れるとの説明を受けた。(NAUI、JP、CMASに対しても5,000円の追加料金が必要なことがこの時初めて判明)…一応パンフレットには、"通常のコース"の紹介のところで申請料に触れてはいたが、それ以外の部分では触れていない。

 講習が始まると、使用した教材はS・E・Aのものだけだった。

 次にプール講習になりったが、その時渡されたレンタル器材はかなり痛んでいた。この時の器材の状態は、彼女によると次のようなものである。

・ウェットスーツ:とにかく厚みは全くと言っていいほどない。袖口、足首のところは擦り切れ状態。肩、二の腕のところは表面が剥げてビロビロ状態(彼女の言)。

・手袋:指先 両手合わせて10本のうち、人差し指、中指の先が表面が剥げてビロビロ状態。手首に回して止めるもの(マジックテープが両面についてるとこ) も、半分くらい切れていて、きちんと止まらない。

ブーツ:物自体はそんなに古くはないが、1足づつバラバラのものでセットになっていない。

BC:中圧ホースを通す肩口のバンドが半分切れていて使いものにならない。

 講習では、使ったプールは狭い上に、耳抜きがうまく行かなかった彼女がきちんとマスターできるような適切で丁寧な指導がないまま(彼女にはこの時点では、このような講習でも海洋実習で問題がないかどうかの判断はできない)終了となった。

 プール講習後、S・E・Aの学科のテストがあり、その終了後に、参加していた3人の女性たちは、テストの結果の話をするということで個別に個室に呼ばれたが、彼女に対しては、テストの結果の話は10%くらいで、あとの90%は「海洋実習の時には自分の器材を買うように」としつこく言われ続けている。この時点で、彼女は既に嫌気がさしていたそうであるが、あと二日頑張ればと思い、レンタル器材で大瀬で講習する決心をし、その手続きを取った。

 この時の模様を彼女はこう語っている。

「狭い3畳ほどの部屋で、入口を入ったところに机があり、そこにインストラクターが座り、その横にパイプイスを置いて、向かい合って話している感じです。ただ、部屋の中は倉庫のような感じだったような気がします。すみません。あまり覚えてません。ただ、汚かったのは覚えてます。狭くって、薄暗い印象でした。」

 プールの講習が終わった後に、ショップ側にCカードについて聞いたところ、この講習の後に取れるCカードは、オープンウォーターではなく、潜水に限定条件がつく(ガイドの同行が必要)スクーバダイバーカードだと、"初めて"言われた。

 大瀬での海洋実習の時、水温は18度で、また小柄な彼女に対して、ショップ持ちこみの重いスチールタンクを背負わせ、(最近はアルミタンクが主流)、さらにインストラクターの指示で4キロのウエイトを付けさせられ初めての海洋での潜行をさせられた。

当日、渡された器材はプール講習の時よりさらに痛んでいるものであった。(つぶれた穴あきウェットを着せられ、BCの中圧ホースの押し開く弁がないなど)

 この日の他のショップでの講習生が身につけているレンタル器材を見ると、彼女の身につけているものと比べてはるかに状態がよかったそうである。

 彼女が参加した海洋実習では、潜行ロープ(ガイドロープ)につかまってはいけない、というインストラクターの指示で潜行を始めたが、自分の体格に比して重すぎるウェイトをつけさせられた彼女はバランスを崩して耳抜きも出来ないまま急潜降し、その際、プール講習での耳抜きの講習が確認されないままであったためもあり耳抜きがうまくできなかった。

 このときの状態は、「潜行ロープの横で、潜行を開始しましたが、すぐにバランスを崩して、仰向けとまではいきませんが、お尻から降りていってしまったような感じです。で、インストラクターは私の足がほぼ海底に到着する寸前に腕をつかんでくれました。」とのことである。

 水中でも、インストラクターから、急潜行に伴う異常がなかったかの確認も無く、そのまま潜水講習が継続された。(彼女にとっては初めての海洋での潜水であり、このような場合があることや、このような場合は潜水を中止して浮上すべき判断もあることなど、それら身を守るための正確な情報は事前に与えられていず、またその訓練もされていなかった。しかも急潜行という危険な状態下での、インストラクターからのサポートもなかった)

 結局彼女は耳を壊してしまい、水圧で鼓膜がかなり奥まで押し入れられて中耳に水がたまり、それが炎症を起こしてしまった。彼女はこの時、「海洋実習が終わるまであと少しの我慢だ」と自分自身に言い聞かせて終了している。

 その後彼女は2週間もの間、毎日耳鼻科に通う事になっている。耳がかなりひどい状態になっていたため、治療中のある日、平衡感覚が無くなって倒れてしまうこともあったそうである。(その後完治)

 さらに当日2本目の潜水実習のとき、潜水する前に、水面でレンタルのマスクのストラップの後頭部側の上の方が切れてしまったため、インストラクターに「マスクのストラップが切れているんですが」と申し出たところ、「手で押さえて入ったら?」と、彼女の不安感に対する配慮も無く、ほとんど相手にされなかったそうである。

 このときの模様を、『バディと共に歩いて海に入り、膝下くらいまで海水がきたところで、お互いに支えあい、フィンをつけました。で、マスクを付けようとしたときに、ストラップの下の部分が切れてしまい、私たちの前5mくらいのところにいるインストラクターにバディと2人で「ストラップが切れちゃいました〜」と言って、手を前に出して見せたのですが、インストラクターは「はぁ」というような表情で、「大丈夫です。」とだけ答え、バディと「えぇ〜」という声を出しましたが、「海の中で切れたらこうやって押さえて潜ればいいんです。」と頭の後ろに手をやってマスクを押さえる仕種をしていました。冗談なのか本気なのか解からないような、何も解からない私達は不安ながらも見にもきてくれないので、仕方なくそのまま潜行の準備をしました。』と語っている

 海洋実習の後の夕食の時に「あと40,000円払って2本潜ればオープンウォーターが取れますよ」「どこのショップでも最初はオープンウォーターの前のものしか発行できないシステムになっています」「今回皆さんが取得するものは、オープンウォーターでなくても、Cカードに変わりはありませんから、自分たちはウソは言っていません」という内容のことを言われたそうである。このときの状況を彼女はこう語っている。

 『講習の後の食事のときに(宿には食事は着いていないので外のファミリーレストランにご飯を食べに行きました。)説明をうけました。6人掛けの席で、インストラクターともう1人の生徒が並んで座り、私は女性3人でその前の席に座りました。ちょうど、インストラクターが頼んだサラダが出てきて、インストラクターはそれをフォークでつつきながら・・・という感じでした。』

 ショップでは、この時になって、この講習がS・E・Aのスクーバダイバーカードであることを初めてきちんと明かしている。この時、講習に参加していた何人かで「Cカード取得」と広告に書いてあった、と言ったところ、前述のように「これもCカードの一種です」と業者側は押し切っている。

 結局、彼女はNAUIのブランドを選択したのだが(もちろんオープンウォーターレベルのものではない、パスポートダイバーというもの。S・E・Aの基準による講習だったにもかかわらず、NAUIのインストラクターが同行することが義務付けられている)、この際、一般的には必ず渡される、正式なCカードが来るまでの間に使用する仮のカードすらも渡されず、そのまま何週間も待たされることになった。

 

 次に、このショップから彼女に渡されたパンフレットを見てみる。

ここには、

1.最初の講習がオープンウォーターのものでないことは一言も書かれていない。(もちろん、オープンウォーターにならない講習ともかいていない)

2.講習の内容について、「Cカード」とあるだけで、その説明は一切ない。

3."持ちこみ器材禁止"については全く書かれていない。

4.レンタル器材が危険なほど痛んでいる事の注意書きがない。

5.『「安全で楽しいダイビング」をモットーに23年間に渡り数多くのダイバーを育てた 実績と、一度のトラブルも無く確立された完璧なスクールカリキュラムで・・・』 とあるが、それが客観的事実であることを判断する手段は示されていない。(実際の講習は「完璧」には程遠いものであった)

6.4種類のCカードのブランドの好きなものがあり、それぞれのCカードの写真を載せているが、S・E・A以外のCカードには、別途5,000円の追加料金がかかることは記載されていない。("通常のコース"を書いている部分にはある)

7.記載されていないPADIでも5,000円払えば手に入ることが記載されていない。

8.Cカードのブランドのそれぞれの"団体"(会社など)ごとに異なっている講習の基準があるにもかかわらず、全ての講習がS・E・Aの基準でのみで行われることが記載されていない。

9.S・E・Aの基準と教材で、何故、基準や教材が異なる他のブランドのCカードが取得できるのか、その理由についての説明はない。

10.「泳げなくても大丈夫」という記載がある。

11.Cカードはライセンス(免許の類)ではないのに、「ライセンス取得」という文言を使って、あたかも何か公的な印象を与えようとしている。

12.事故のときに補償される保険の内容について記載が全く無い。(保険が存在するのか無いのかの判断すらできない)

 

以上から問題点を考えてみる。(以下はあくまでも個人的な感想である)

 

1.パンフレットを見ると、オープンウォーターの講習を受けたことがある私にも、これがオープンウォーターの講習ではない、と判断できる材料は見当たらない。(錯誤を故意に誘引?)

2.各種の文言に、その使用に不適切なものが多い。(不実告知、誇大広告)

3.事前の説明がきちんとされていない。(説明義務違反)

4.講習生の健康と安全性、および不安感に対して、義務として取るべき適切な配慮がされていない。(安全配慮義務違反)

5.レンタル器材に関して、講習生の生命の安全に関係するものであるにもかかわらず、それに配慮されていないばかりか、器材の販売のために意図的に危険な器材を使わせているように見える。(安全配慮義務違反)

6.インストラクターが、講習生の体格や習得した技量レベルなどで判断すべき適性ウェイトのことや、急潜行による肉体のトラブルの可能性について適切な判断ができていないし、危険な状態下でのサポートもしていない。(インストラクターの技量不足、安全配慮義務違反)

7.必要な技術について充分な指導がされていない。(契約義務違反)

8.水中での生存のための適切かつ充分な情報が提供されていない。(契約義務違反)

9.講習内容について、S・E・A以外の選択肢が無い事の説明が無い。(説明義務違反)

10.S・E・Aの講習でありながらそれ以外のブランドのCカードを取ることによるリスクの説明がない。(説明義務違反、不実告知、契約義務違反、安全配慮義務違反)

11.このようなショップからのCカード発行の申請を、無審査で受けて、"申請料"を受領している各"指導団体"の無責任さ。(企業としての責任感の欠如、および"申請料"という金銭の授受のシステムが合法なのかどうかの問題も含む。これに対しての、法律の専門家によるマルチ商法の疑いはないのかの検討が必要ではないかという意見の存在)

※指導団体が違うと、水中で交わされるハンドシグナルが全く違う事があり、これは、水中でのトラブルの際、意志の疎通がうまくいかなくなり、場合によっては致命的な重大事態になる可能性が含まれている、というリスクなどの説明のことである。また、指導団体が異なると、ダイブテーブルという、ダイバーの命と健康を守るための道具(数値)が違ってくることが多いことから生まれる危険についてもある。


 自分自身による直接確認(ここでの感想もあくまでも個人的なものである)

私は、1999年8月21日、ここに出てきたショップにいくつかの点を確認に行った。

確認したかったのは以下の点である。

 

1.自分の器材を持ちこむ際の「追加料金」なるものが本当にあるかについて

2.レンタル器材について

3.講習の内容について

4.講習の説明とCカードについての説明について

5.総経費について

 

 まず、「1」の件だが、私も、上記の女性からいただいたコピーのもととなった同じパンフレットと、"〇〇キャンペーン"とうたった、一枚もののチラシを受け取った。通常39,000円のところ、18,000円と書かれていた。

 私が「器材はレンタルで。また自分は目が悪いので、昔買った度付きのレンズ入りの自分のマスクと、他にグローブとブーツを持っているのでそれを使いたいのですが。」と話したところ、(度付きのレンズはレンタルしていないのに)「器材の持ちこみ料がかかります。」と言ってきた。安全性についての言及は無かったが、目が悪くてメガネが無くては生活できない自分が、レンタル品にない度付きのレンズの入ったマスクを自分で用意した事に対して「持ちこみ料」を徴収するというのは常識的な理解を超えていた。また、手や足が大きくて一般的にサイズが無いため、これも本人が用意した、(大きいサイズのレンタル品はないと言われている。)のも「持ちこみ料」がかかり、ワザとウェットスーツを持ちこむとは言わずにいたところ、Tシャツでも3LサイズかアメリカのXLサイズを着ている私に、「小さくてもがまんして着ていただきます。」と言ってきた。

 またレンタル器材の明細は、チラシにもパンフレットにもなく、レンタルの総額を聞いたら、3日間の講習で、本来のフルレンタル料30,000円に、4,500円の持ちこみ料を加えて34,500円と言われた。(このことはチラシにメモしてもらっている)

 「持ちこみ料」を取られる分の器材レンタル料の減額はなかった。また最後まで、何をレンタルするのか教えてもらえなかった。(こちらも無理には聞きませんでした)チラシには大きく「ダイビングに必要な器材」と、17種類の商品が紹介されていたが、レンタル品に、この「必要な」もの全てが含まれてはいない場合は、「必要」なものをレンタルしないで、全くのシロートにダイビングの講習を受けさせる、ことになるのではないかと思った。とにかく肝心なところの説明はない。(17種類の器材については、その必要性に関してはほぼ問題ないと思われる)

 「2」の「レンタル器材」の状態だが、ダイビングの器材は、基本として全て"安全のため"が目的で作られている。しかしこの日店の前の歩道で干していた器材を見ると、店の名前が入ったグローブの指先に穴が開いてた。水中で何かに触るとき、潮の流れが発生したときに岩につかまるとき、毒を持ったくらげなどを払うときに怪我を防ぐことなどを目的としてグローブをするのだが、この店で料金を取ってレンタルしているグローブには穴が開いていた。このグローブのサイズは女性用だったが、この穴のために怪我をする可能性は高いと思える。穴の開いたグローブで手の指先にちょっとした怪我をしたときにも雑菌による化膿の可能性がある。BCは、歩道の公共の植え込みの上に広げて干してあったが、裏返していたために痛み具合はわからなかった。ウェットスーツは、これも女性用のが店内に吊り下げてあったが、裏返しになっていたため、手首と足首のファスナー部分がかなり痛んでいたのと、ひざの部分が一部剥がれて(穴は無かった)いるのがわかった程度である。しかし、裏側でこの状態なので、表側はさらに痛んでいると容易に推定できた。

 レンタルの器材なので、新品同様である必要はないが、ダイビングの器材は、ダイバーを、本来人間が生存できない水中で怪我と生命喪失から守る事がその存在理由であるので、その機能を果たせない器材をレンタルして金銭を徴収することは、単に「ショップの方針ですから」という言葉では言い訳できない重要な問題を含んでいる。

 次に「3」と「4」のことをまとめて書いてみる。

 パンフレットにはPADIのことは書いてなかったが、先方の、説明をした女性は「PADIのCカードも取れます。」とパンフレットに書き加えた。この時も"申請料"についての説明はなかった。もっとも、パンフレットの"通常の"講習の部分には"申請料5,000円"とあったので、チラシには書いてなくても徴収することになっていると思える。

 さて講習の内容についだが、パンフレットやチラシには、一見してオープンウォーターの講習のように書いてあり、このチラシで講習を終了した後に、特定のインストラクターが同行しない限りダイビングができないということになることについての説明は、当然書いてもなく、口頭でも説明はなかった。

 また、先方から、「講習後はどのCカードでも取れます。」と言われたときに、「では、それぞれのCカードの講習をするんですね?」と聞いたところ、「いいえ、一つのでやることになっています。」と返答された。

 取得できるCカードの種類は、S・E・A、NAUI、JP、CMAS、そして手書きで加えたPADIであるが、S・E・Aの講習だけで好きなようにCカードを得られるというのは奇妙と言える。それぞれの指導団体では、自らの講習プログラムの優位性を強調するために独自性を強調している場合が多い。しかし、このショップが行っていることをそのまま受けている指導団体は、自らの基準に添った講習プログラムが正しく実施され、まちがいなくそれが講習生によって習得されたかを全く確認しないまま講習の修了を認定している。これは、講習生に対して請け負った内容を履行していない(講習生が選んだCカードに付属する内容の講習義務がショップ側にある)ことは、明確に契約違反である。あるいは、不実告知と言える。

 ここにダイビング業界を支配する主たる指導団体とショップの事業形態の欠陥と違法性の側面が確認される。つまり、講習の最終的な修了を認定する立場をとっている各指導団体が、その最終認定の結果としてのCカードを発行することを請け負っていると解釈しなくてはならない申請料の存在があるのにもかかわらず、指導団体が定めたCカード発行基準の習得の有無に関係なく、またそれを確認する努力をすることなく行っているということで、申請料という金銭の受領に対する義務を果していないと言う点で違法性があると言える。

 「5」の件だが、このショップで、私が講習を申し込むと、自分の身体的ハンデ(目が悪い)による安全確保の為に度付きのマスクを持ち込み、先方でレンタルできないサイズのグローブとブーツを使った場合の料金は、〇〇キャンペーンに書いてある18,000円から、別勘定の諸経費(交通費7,000円・宿泊費3,000円・教材費7,000円)に必要なレンタル器材代30,000円と、持ちこみ料4,500円を加えて69,500円となった。また、お好みのCカードの申請料の5,000円を加えて74,500円となる。それに消費税5%税金を加えると、総額78,225円となる。これで私がこのショップで講習を終了しても、オープンウォーターのCカードを手にすることはできないのである。(講習中に2サイズも小さいウェットスーツやBCで講習を行った場合、水中で自分が安全を確保するために満足に動ける自信はない)

 講習生の安全を確保するために十分なレンタル器材がないのなら、器材の購入を希望しない者に対して講習は行えないのにもかかわらず、サイズが二サイズも小さいウェットスーツのように、水中で肉体の自由が大幅に制限されて、十分な安全確保ができないことを知りつつ講習という商品を販売することは、もしそれが強制された場合には、あるいは例えばこの事例の女性のように、契約後に安全を確保できない器材のレンタルがあった場合には、明確に故意の欠陥商品販売となる。


 以上の事例を、特に新規にダイビングの講習を受けようとしている方は、ショップを選ぶ際の参考にして下さい。

平成12年1月9日