スクーバダイビング用アルミタンク破裂事故について


 2000年6月30日に、沖縄県宮古島でスクーバダイビング用アルミタンクに空気を充填中に、そのタンクが破裂し、作業員が怪我をしました。(重傷ではありません)
幸い、この空気の充填は、半地下式の水槽で行なわれていたため重大な事故になりませんでしたが、これがダイビング現場で起こったら重大な事故になっていた可能性が極めて高いと思います。
 この破裂した容器を高圧ガス保安協会で分析した結果、容器の肩の破断面には疲労疲面特有の波状の紋が見られました。
 高圧ガス保安協会では、同時期に製造されたタンクを、沖縄県から3本、東京都から3本の計6本を取り寄せて調査しました。8月10日現在、沖縄県の容器3本に破裂試験(1本)を行なって、残りを切断(2本)して、内面の非破壊検査をしたところ、事故のときと同様の割れが確認されたとのことです。また1本にはねじ部の近くに製造時の材料欠陥が発見されました。東京の3本分については8月14日に結果が発表されたはずですが、今のところ情報が入っていません。
 なお、破裂したタンクは、10.3リットルのアルミ製容器で、材質はA6351、外径185ミリ、長さ628ミリ、厚さ13.5ミリのオーストラリア製です。メーカーはLuxferです。
 このスクーバ用タンク(A6351のアルミ合金製)のこれまでの破裂事故は、高圧ガス保安協会によると、宮古島のを含めて現在まで7件発生しています。内、人身事故は、今回の宮古島のを入れて5件でした。死亡事故は幸いありません。
 事故は94年6月にアメリカフロリダで、98年1月にオーストラリアニューサウスウェールズで、同年2月にアメリカフロリダで、同年8月にニュージーランドで、同年12月にアメリカフロリダで、そして2000年6月30日に宮古島で発生しました。原因はクラックの成長が5件、不明が2件、メーカーはLuxferが5件、Walter Kiddeが2件でした。
 現在日本に入っている、このA6351の材質のスクーバ用タンクは27,158本です。(廃棄分は不明)です。Luxferでは、1990年5月以降はアルミ合金の材料をA6061に変更しており、この容器のトラブルは現在のところ報告されていません。
 以上の情報は、高圧ガス保安協会の2000年8月11日付け、「スキューバ用アルミ容器の破裂事故(中間報告)」からです。

 この件は、県によっては(ダイビング産業が盛んなところなど)、既に各充填業者に対して連絡済みです。したがって、空気充填業者や、そこからタンクを借りているダイビング業者は当然知っていなければならないことです。この情報は、ダイビングの業者なら、事故防止のために本来知っているべきことであり、ダイビングショップの人が、ダイビングポイントでレンタルタンクを講習生やガイドに提供する際にはタンク業者から提供されるものを事前にチェックしているはずです。「知らない」とか言っても、それは本当に知らないとしたら業者失格でしょうし、知っていて隠したら、今回の某自動車メーカーのリコール隠しと同様の事例になります。(人身事故に繋がるという点で重要です)
 しかし、皆さん自身で一応確認してください。私のような業界外部の者ですら知っていることについてさえ、もしチェックをやっていない業者がいるとすれば、これはなんとも言いようがありません。皆さんも、自分で自分の身を守るために、借りたタンクをご自分でチェックしてください。また、自分で買って持っている方は、ぜひ一度チェックして、該当するタンクであったら、メーカーか購入した店に今後の件をご相談ください。


平成12年8月30日  

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