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 小野くん文庫の小説第一作「死神を呼ぶ男」は、学生時代に描いていたマンガ用のメモが元になっています。
 なにしろ一見楽そうでボロもうけ、そんな漫画家にあこがれてました。

 そのマンガのタイトルは「死神交換」
 死神が部屋に立ち入るため、ちり紙交換になりすましてやって来る、というのが最初のアイデアでした。
 何じゃそれ!
 ということで、小説化したものとはずいぶん設定がちがっています。
小説
○題名:「死神を呼ぶ男」
○主人公:サラリーマン。鈴木一郎。
○死神:正直に自己紹介して入り込もうとする。なんと名刺持参。
○範子:鈴木の恋人。
○範子が落ちる理由:勢い余って。
○遊びに行く場所:ディズニーランド。
○ボツになったエピソード:マンガでは死ぬ日の朝、受けてもいないK大学から不合格の通知が来て、主人公が破り捨てるシーンがあった。それを隣の受験生がこっそりと見ていて、ガス自殺を図るのだった。
マンガ
○題名:「死神交換」
○主人公:大学受験を控えた高校生。鈴木明宏。
○死神:ちり紙交換に化けて侵入。トイレットペーパー持参。
○範子:鈴木を一方的に恋する片思いの子。
○範子が落ちる理由:失恋のショックから飛び降りを図るが、やめようとしたときに足を滑らせる。
○遊びに行く場所:海水浴(冬の受験シーズンにこの設定はおかしいぞ、ということで小説ではボツ) 

 以下は絵コンテとは呼べそうもないただの落書きです。
 ホームページの隙間を埋めるつもりで、抜粋で掲載します。
 
 さあ、これから受験勉強に励むぞ! と張り切る主人公「鈴木明宏」
 ところが「マーヤ」と名乗る女の子が訪問してきた。しかも自分の部屋に住み込むと言い出してきた。
 マーヤはメッチャかわいい女の子。
 鈴木の脳裏に良からぬ考えがもんもんと浮かんでは消えていく。
 マーヤが死神だとやっと納得する鈴木。
 でもどうやって死ぬのか教えてくれないマーヤ。
 風邪気味だった鈴木に「たぶん、風邪をこじらせるのね」とひとこと。
 しかし次の日、鈴木の風邪は全快。
 マーヤもどうやって死ぬのか知らない事が発覚。
 学校にまで押し掛けるマーヤ。
 担任の紹介に鈴木のアパートに同棲してることをつい白状してしまう。
 鈴木に恋こがれる範子が、その話にショックを受け、飛び降りを図る。
 駆けつけた鈴木が必死に説得を試みる。
 その説得が「世の中には生きたくても死から逃れられない人がたくさんいるんだぞ」と、自分のことを言うのが笑いを誘います。
 ぷぷっ
 飛び降りをやめる範子に校庭から沸き上がる安堵の歓声。その歓声の方に目をやる範子。その高さに改めて驚き、めまいが彼女を襲う……。

 足を滑らせ、屋上から落ちる範子を鈴木が空中キャッチ。
 範子は布団たたきのように壁に打ちつけられてしまい、しかもお尻を丸出し状態。
 こんなことならだまって落ちた方が良かった?
 この子は何に驚いているのかというと、自分が裸だったということに驚いています。

 人間の姿に戻り、改めて人生を楽しむマーヤ。
 鈴木にお願いして海水浴へ行く約束を得る。
 イタズラ心から、ビキニの上にバスタオルを巻いて鈴木を驚かそうとするが、タオルを止めた安全ピンに水着が引っかかっていた。
 勢いよく「どうだっ!」とバスタオルを取り払うマーヤに鈴木は目を覆う。
 「ホントは水着を着てるのよ」と言って主人公を驚かすつもりがトップレスの自分に自分がビックリ。
 どこのご家庭にもある、ありがちなエピソードです。
 鈴木に恋心を抱くマーヤ。でも自分は死神なので叶わぬ恋。
 鈴木は自分のことをどう思っているのか?
 あの範子の時のように自分のことも助けてくれるだろうか?

 マーヤは、ちょっと試しに飛び降りてみることに……
 おいおい

 唯一泣かせるために用意したシーン。
 死神が死んじゃうなんてあり得ないのに、単純な主人公はビックリして泣いてしまいます。
 倒れていたマーヤを抱き上げ「マー」と叫んだ後、絶句。

 これはイタズラだったとバレて、あとでビンタを頂戴するマーヤ。
 「痛いじゃない!」と怒ってはみるものの、本心は助けに飛び出してくれたことに喜んでいるのだった。
 そしてマーヤは心の中で「ごめんね、本当はとってもうれしかったの」とつぶやくのだった。

 死の日を迎え、改めて自分の顔を見る鈴木。
 心労でやつれたその顔。

 自分がどんな理由で死ぬのか相変わらず知らない鈴木は、他人を巻き込むのを嫌って人気のない河原へ出かけるのであった。
 ストーリーは大ざっぱだったので「近日公開」と書いてうやむやにしてしまいました。
 この「近日」が、20年ほどになったわけです。

 ちなみにこの爆発するアパートは、私が学生時代に入っていた月1万7000円の安アパートがモデルになっています。

 先日、20年ぶりにこのアパートを見に行ったら、荒れ地になって無くなってました。
 月日は川の流れのように……

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