「ちょっと隆也達、ここで何やってるのよ」 その春子の声に隆也のロープを張る手が止まった。隆也は4人の同級生と基地作りのために枝を結束していたところだった。 <こんな山の中で春子に会うなんて> その春子もクラスメートを4人引き連れていた。 「なんだよ、ここは俺らの陣地だぞ。女は入るなよ。おまえらどっか行けよ。なあ、みんな」 隆也は自分が引き連れてきた4人の仲間に同意を求めた。その同級生達は一同に「そうだそうだ」と意気を上げた。 「なーんだ、秘密基地ごっこか...子供ね。でもその場所は私達が最初に見つけた場所なのよ。隆也達こそどっかへ行きなさいよ。ねーっ、みんな」 春子も引き連れた仲間に同意を求めた。春子の仲間達も一同に「そうよ、そうよ」と騒ぎ立てた。 「ふーんだ、後から来る方が悪いんだい。おままごとならよそでやりなよ。ここはもう俺達の場所って決めたんだ」 「ままごとじゃないわよ、ハイキングよ」 「おんなじだよ。なーっ」 隆也の仲間がまた一層、意気を上げた。その勢いに押されたのか春子は意地を張るのをやめた。 「いいもん、私達の場所はここだけじゃないもんね。みんな、次の場所へ行こ行こっ」 「はははは、ああ、行け行けっ」 隆也は春子達が去った後、みんなとしばらく基地作りを続けたが、なぜか熱中できなかった。その理由を考えてみたが、はっきりとした理由が分からない。ただ最初ほどの楽しさが感じられなくなっていたのだ。 そんな隆也に、ふとアイデアが浮かび仲間に提案した。 「なあみんな、あいつらどこに行ったか探しに行こうか。それで、突然現れて驚かしてやろうよ」 仲間達も、この作戦にはずいぶん乗り気だった。 そして女の子達も、何か面白いことが起こるのを待ち望んでいた頃だった。 |