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「ロボ子−P」  注:変な題名ですね

 「撃つなー!」
 そう言った彼の言葉を引き金にしたかように何発かの銃声がとどろいた。
 彼は銃声の発生元よりも標的の方に近かったので、弾丸がその標的を射止める音の方に反射的に反応し、体を踊らせた。
 これは俺を撃った訳じゃない。だけど体が反射的に避ける。だけど撃つなら俺を打て!
 撃たれた目標物は胸の辺りに火花を散らしながら弾丸の勢いに押されてその重心が後ろへ移動した。そのためその体を転倒させまいとして自ずと後ずさった。

 第一段階でその目標物は倒れることがなかったので、第二段の狙撃が始まった。その目標物に対する急所らしきものを見極めきれず、今度はポイントを特定されずに撃たれた。
 それでもその目標物は倒れることがなかった。

 屈強な男達がライフルでねらいを定めているその目標とは一見か弱そうに見える若く美しい女性であった。

 「やめろー!彼女は人間だ!」
 彼女はそう叫んだ声の方に顔を向けた。彼女の内部で一つのデーターが入力された。
 「私は人間。メモリーに記憶しました」

 「博士、ロボ子は作り直すことが出来るんでしょ?」
 「うむ、確かに膨大に修正がかかった設計図は儂の手元にある。あのロボ子と全く同じものは何体でも作り出すことは可能じゃ。しかしな...」
 「しかし?」
 「そう、しかしじゃ、今のロボ子はロボ子であってもうロボットではない。この2週間の間で自ら体験した記憶というものがある。彼女の行動を決めているのはその膨大な記憶が元になってのことじゃ。おまえがロボ子らしいと思うのもロボ子自信が収集したロボ子独自の記憶によるもののためなのじゃ。その記憶がなければ外見はいっしょでも全く別物になってしまうじゃろう。もうロボ子とは呼べないじゃろうな。人間といっしょじゃよ。うり二つの人間がこの世にいても育った環境や境遇で受け答えが全く別になるように...」
 「じゃああのロボ子が助かるには?」
 「主記憶のハードディスクが破壊させされなければ何とかなるのじゃが...元々ロボ子にはその記憶を守るように初期的なプログラムは施しておったが、この状況で果たして守りきれるかどうか...」
 「ロボ子、死ぬな!」

 頭部に埋め込まれたハードディスクが破壊され、それを認識したロボ子は主メモリ上で思った。
 「私は人間。さようならみんな」