悪魔紳士録その1




Agares−変化の公爵−
 巨大な陸ガメにまたがった、弱々しい老人の姿であらわれるとい
います。しばしばカラスを右手首にとまらせていて、震える声で話
します。
 敵の心に恐怖を吹きこむ力があり、また、逃亡者や脱走者などを
連れもどすことができるとされています。地震に関しても影響力が
あるようです。


Aim−炎の公爵−
 人間の男の身体に3つの頭をつけた姿であらわれるとされていま
す。頭の1つは人間、もう1つは蛇、3つ目は仔牛だといわれてい
ます。人間の頭の額には2つの星印があり、また片手には永遠に燃
え続ける火の玉をもち、真夜中の闇のように蒼い大とかげに乗って
いるといいます。つねに紅い煙の雲につつまれ、木や紙は触れただ
けで燃え上がらせることができます。火を使うのを好み、ただ火の
燃えるのを見たいという理由だけで、大火事を起こすこともあると
いいます。


Alloces−戦士の公爵−
 獅子の頭を持つ男の姿であらわれます。燃える石炭のような瞳と
赤い金のような肌の持ち主で、輝く鎧を身につけて軍馬にまたがっ
ています。無情な、とどろくような声で話し、また彼の瞳をのぞき
こんだ者はしばしば視力を失い、その寸前に自分自身の死の有様を
見るといいます。
 流血を好み、戦いには喜んで手を貸してくれるといわれますが、
戦いがないと自分を呼びだした者に攻撃をかけ、むさぼり喰ってし
まおうとします。


Amdusias−一角獣の公爵−
 銀色のユニコーンの姿であらわれますが、数瞬後、トランペット
の音とともに、白いあごひげを生やした、やせていて長身の男の姿
になります。
 樹木に命令をくだし、自在に操る力があり、また、楽器に造詣が
深く、楽器から音をかなでさせるような力があるともいわれます。


Asmoday−地獄の王−
 公爵とされるより、王とされることの方が多いようです。人と、
雄牛と、牡羊という3つの頭を持ち、蛇の尾をつけ、足にはガチョ
ウの水かきを備えていますが、体の他の部分は人間であるといわれ
ています。地獄の竜にまたがり、旗印をつけた巨大な槍をもってお
り、また3つの口の内では炎がめらめら燃えているといいます。姿
を見せた時、
「あなたはAsmodayですか?」
と尋ねれば、否定はしません。
 この悪魔に仕えれば、短期間、獣の姿にしてもらえるといいます。
また、処女を1人捧げれば、この悪魔を仕えさせることもでき、そ
の結果、無敵の、何者でも打ち勝ち難い存在にしてもらうことがで
きるとされます。


Astaroth−恐怖の公爵−
 この悪魔は、元来、フェニキア人の崇拝した、古代セム族の豊饒
と生殖の女神であって、またギリシャ人やローマ人は月の女神と考
えていました。ところがキリスト教の布教により、いわゆる”邪神”
とされ、最後には大悪魔として扱われるようになってしまいました。
事実、「赤い竜」という中世の有名な魔法書では、地獄の3大権力
者としてすでに扱われています。
 その姿はミルトンの「失楽園」では女性的な美貌の堕天使として
いますが、地獄に落ちた後の姿については別の資料で述べられてい
ます。それによれば、地獄の竜にまたがって、唇を血で濡らした黒
い天使の姿で出現し、左手には毒蛇を、右手には、餌食となった者
が長く苦しんで死ぬように特別にしつらえられた巨大な棍棒を持っ
ているとされます。進んで残酷になり、心地よげに苦痛や疫病につ
いて語り、口からは毒の煙を吐くとされています。


Barbatos−美徳の公爵−
 4人の王と3人の騎士をひきつれた、騎士の姿であらわれます。
あるいは、4人王にひきいられた、実体のない1群の兵士の中で、
狩人の姿であらわれるといいます。狩人の姿の時は、赤いふさのつ
いた緑のフードと灰色のマントという装いだといわれます。鳥や獣
の言葉や科学にくわしく、さらには宝物や場所にかけられた魔法や
呪いを、触れただけで消滅させる力があるといわれます。


Bathin−蒼の公爵−
 蒼白いやせこけた男の姿で、蒼い馬にのって出現します。この悪
魔の声は柔らかく、哀しく、その声を聞いた者はこの悪魔を愛さず
にはいられなくなるとまでいわれています。人間を空中に飛翔させ
て遠方まで運ぶことができるといいます。


Berith−野蛮の公爵−
 赤い服を着て、赤い馬にまたがった兵士の姿をしています。顔は
古傷と生い茂った黒いあごひげで覆われており、激怒していない時
は微妙な声で話すといわれます。頭には、金の王冠を頂き、呪文に
よって呼び出されたり、感情的に刺激された時(激怒した時)など
には、それが炎に包まれるように見えるといいます。過去・現在・
未来のできごとを知る力があり、人1人の命とひきかえにその知識
を与えます。あるいは、触れただけで金属を金に変える力も持って
いるともいわれます。
 残酷な性格で、拷問好きです。自分の美しい衣装を大変自慢して
おり、そのため、鎧をつけることはありません。


Bune−竜の公爵−
 3頭の竜の姿をしているとされ、1つの頭は人間の男、2つ目の
頭は犬、3つ目の頭はグリフォン(鷲頭獅子身の怪物)のように見
えるとされます。全身の鱗はすべて翡翠であるといわれます。美し
いが高慢さを感じさせる口調で話します。
 この悪魔には、人間を賢明に、雄弁にする力があり、うまく操れ
ば智恵と富を与えてくれるといいます。ただし、命令を聞く前に、
1つの頭について1人の生け贄を要求します。これには処女や赤ん
坊が喜ばれるようです。また、この悪魔には死体の位置を変える力
もあると伝えられています。


Crocell−浴場の公爵−
 流れるような銀髪と、黄色い猫の瞳を持った、黒い天使の姿をし
ています。大きな、すべてを圧倒するような声をしていて、神秘や
秘密について語ることを好みます。
 その肩書きからもわかるように、水に関わる力を備え、水を自在
に暖め、あるいは冷やしたりすることができます。さらには、どん
な砂漠でも水をみつけることができ、水の幻影をつくりだしたりも
するといわれます。武器として、地獄の氷でできた長剣を帯びてい
るといわれます。


Dantalion−顔の公爵−
 どんな姿の人間としてでもあらわれることができますが、その顔
は絶え間なく変化しつづけているそうです。また、右手に本を持っ
ているとされます。
 この悪魔の能力にはいろいろあって、秘密の計画を教えてくれる
とか、恋人の幻影を見せてくれる、なども知られていますが、最も
有名なものは右手に持つ本にまつわる力でしょう。その本にはすべ
ての人間の思考が記されているといわれ、この悪魔だけがそれを読
みとることができるとされます。この本ゆえに、この悪魔は人間の
思考を意のままに変えることができるともいわれます。ただし、こ
の悪魔はこの本に書かれていることを他者に話すことはできないの
だ、という説もあります。





★この記事はTRPGの資料としての掲載を目的としており、他意
 はありません。


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