とよたま愛読会126回
     「
霊主体従 5巻 20章 〜 42」    
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            記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成19年03月25(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語   霊主体従 5巻(辰の巻)20章:猿蟹合戦 〜 第42章 :神玉両純

★ 報告
 国祖ご退隠後の世界は以下のような状態でした。

常世彦の暴政により、聖地エルサレムは倒壊。国祖の後を襲った盤古神王と常世彦は、アーメニヤに遁走して都を遷しました。

その混乱に乗じて、大自在天は常世城を奪い、自ら常世神王と称してアーメニヤに対立をします。これにより、地上神界はアーメニヤと常世城の二大勢力に分かれます。

この状況に、ご退隠中の国祖は、野立彦命となって天教山に現れます。豊国姫命は野立姫命として地教山に現れます。二神は宣伝使を召集し、予言と神示を伝えて地上神界に秩序を取り戻そうと活動を開始します。

 野立彦命・野立姫命の出現に当たり、三つのことが行われます。

金銀銅の天の浮橋により、神柱たる身魂の選抜が行われます。宣伝使も黄金の浮橋を無事にわたる事のできた者だけが任命されました。

天教山は大爆発を起こし、地下に落ちて艱難辛苦をなめていた身魂が、地上神界中に撒き散らされます。各地に配られた身魂は美しい神人と現れて、神徳を発揮することになりました。これは地獄の釜の蓋が開く、また天の岩戸開き、と言われます。

七十五日間の天変地異の発動。これは地上神界の神人らの試練として、神教への気づきを促すために行われた、と説明されています。

 そして、各地での宣伝使の活躍が語られ始めます。特に第三十四章「水魚の情交」から第三十五章「波上の宣伝」にかけては、野立彦命・野立姫命の神教が始めて、一般の聴衆に向けて語られる様が述べられている、重要な章であるかと思います。

 宣伝使・祝部神(ほふりべのかみ)が、船中の聴衆に説いたのは、以下のような教えです。

無限絶対・無始無終の主神の存在。

主神の分け御魂である国祖の存在。

国祖ご退隠の由来。

霊主体従こそ主神の教示である、という規範。

 また第三十八章「回春の歓」では祝部神が鷹住別を滑稽な歌で勇気付け、足を直すくだりで、人間は笑い勇むことによって神徳が備わる身魂と生まれさせられているのだ、と人間の本質についての教えが示されています。

★ 拝読箇所で気のついたこと
霊主体従 辰の巻
第三篇 予言と警告

第20章 猿蟹合戦(220)

顕恩郷の南には、エデン側をはさんで桃園郷という部落があった。顕恩郷の住人が蟹に変化するのに対し、桃園郷の住人は、猿のような出で立ちをしていた。

桃園郷は異常気象に見舞われて積雪・寒風吹きすさび、住人たちは飢えていた。ついに桃園郷の王は、顕恩郷を占領しようと企てた。

桃園郷の住人たちは夜陰にまぎれて顕恩郷に襲来し、果実で飢えを満たすと、鬨の声を上げて攻め寄せた。桃園王は大刀を引っさげて南天王の宮殿に暴れこんだ。

不意を突かれた南天王は桃園王の一撃に深手を負って、山中の鬼武彦の石像まで逃げて行った。

そこへ桃園郷の追っ手が迫ってきたが、鬼武彦の石像から怪しい光が発射し、強熱で桃園郷軍を追い払った。エデン河に追い立てられた桃園郷軍は、蟹と化した顕恩郷軍にさんざんに敗北した。

鷹住別の南天王は、最初の敗北と逃走で、顕恩郷の人々の信頼を失ってしまった。これはいつしか鷹住別が心を緩めて慢心し、祭祀の道をおろそかにした故であった。鷹住別夫婦は顕恩郷を飛び出して、モスコーへ逃げ帰ることになってしまった。

第21章 小天国(221)

鷹住別の南天王夫婦が去ってしまったため、顕恩郷では蟹若という強者が指導者に選ばれた。顕恩郷の人々は鬼武彦の石像を頼りにし、日夜礼拝を怠らなかった。

あるとき、顕恩郷をものすごい旋風が襲うと、雲の中から鋭い光がひらめき、石神像のままの神が現れた。これは本物の鬼武彦に他ならなかった。

鬼武彦は大江神と改称し、顕恩郷の人々に天教山の野立彦命の教えを伝えるために現れたのであった。

大江神は、『三千世界一度にふさがる泥の海、月日と地の恩を忘れな、心次第の援けの神』と唱えた。神人らは、平和な顕恩郷がどうして泥の海になるのだろうか、といぶかしんだ。

大江神は大神の神示を伝え、顕恩郷の恵みを飽食して暮らすだけではなく、貧しい桃園郷の人々と分かち合う道を説き諭した。

顕恩郷の神人らは大神の神意を悟り、桃園郷に大江神とともに出向いて顕恩郷への移住を勧めた。

顕恩郷の恵みは移住者を受け入れても、十分に有り余るものであった。これより神人らは大江神の教えを守り、敵対していた二つの種族も今は仲良く暮らす小天国が建設された。

第22章 神示の方舟(222)

大江神はこの小天国の神王となった。蟹若と桃園王がその補佐となった。大江神は果実が実らない木を伐採し、方舟を多数作らせた。人々はいぶかったが、蟹若はただ、大江神を信じて従うのみ、と神人らを諭した。

神人らの働きにより、三百三十三の方舟が完成した。舟には残らず果実や家畜、草木の種を満載した。

すると、顕恩郷の東北に立っていた鬼武彦の石像が立つ棒岩は、音を立てて回転し、天に向かって伸張し始めた。これを天の逆鉾という。顕恩郷の人々は逆鉾の下に来て供え物をし、祝詞を唱えて顕恩郷の繁栄を祈願した。すると天の逆鉾から宣伝歌が聞こえ、そして沈黙した。

後に地上の大洪水が起こったとき、この郷の神人らは残らず方舟に乗ってヒマラヤ山に難をのがれ、二度目の人間の祖となった。

第四篇 救世の神示
第23章 神の御綱(223)

聖地エルサレムが崩壊し、八王大神らがアーメニヤに逐電した後、橄欖山の神殿は鳴動し、竜宮城の三重の金殿が空中に向かって延長し、上端は東西に伸びて丁字型の金橋を形作った。

この金橋は緩やかに回転し、橋の各部から美しい細い金色の霊線が発生して、柳のように地上に垂下した。霊線の先には、金・銀・銅・鉄・鉛などの鉤がついていた。これを「神の御綱」、または「救ひの鉤」という。

中空に金橋が伸びて回転する様を見て、地上の神人らは怪しみ不安の念にかられた。宣伝使たちは各地を回って、教えを受け入れ正道に帰順した神人には、ひそかに見えない「神」の印をつけて歩いた。

しかし、ウラル彦の体主霊従の宣伝歌も勢いを得て、これに狂惑される神人らも多数あった。

そんな中、「神」の字がつけられた神人は、金橋の霊線の鉤にかけられて中空に引き上げられるものが多数出てきた。引き上げられるものの中にも、行いや心がけに応じて、苦しみつつ引っかけられるものもあれば、帯に鉤がかかって易々と金橋に上るものもあった。

中には耳、鼻、あご、首、腕などを鉤にかけられ、苦しみの余り地上に落下してしまうものも沢山に現れた。

このとき、天橋には第二の銀色の橋があらわれ、銀色の霊線を地上に垂らし、中の身魂の神人を引っ掛け始めた。また同じく銅色の橋が銅色の霊線を垂らし、同様に相応の身魂の神人らを引っ掛け上げ始めた。

第24章 天の浮橋(224)

天橋は、竜宮城の顕国玉の神威の発揚であった。金・銀・銅の橋は、それぞれ上中下の身魂の神人らを救い上げた。

瑞月の前には銀色の霊線が下りてきて、たちまち腹部の帯に鉤がかかると眼もくらむばかりの速さで空中に引き上げられた。『眼を開けよ』という声が聞こえた。するとはるか空中の銀橋の上に立たされていた。

頭上から国姫神の神示が聞こえ、小松林命の神名を授かった。そして、天上の光景を両親兄弟朋友知己に語って悔い改めを促し、神の道に就かしめるように、との命が与えられた。

頭上から降ってきた金線を掴むと、あっという間に地上に降ろされた。そこは広々とした原野で、恐ろしい猛獣が散在していた。しかし猛獣たちは不思議にも、立派な館に住んでいた。

国姫神より、黒布が授けられた。この黒布をかぶってみると、猛獣たちは人間であり、自分の親しい友人たちも混じっていた。

そうするうちに、また金線が下がってきて上空まで引き上げられた。今度は金橋の最高点で、国姫神が現れて、金橋について語った。

それによると、この橋は黄金の大橋といい、また天の浮橋という。地球の中心である火球から金気が上り騰がり、顕国の玉となり、この玉の威徳によって、国の御柱が空中に高く延長したのである。

御柱の頂上は左右に分かれ、左が男神、右が女神が渡る橋である。この橋はなめらかで欄干も無く、暴風が吹いて、油断すれば再び地上に転落してしまう。一足も油断無く、あらゆる心を配って渡るべき橋は、実に神柱たるもののつとめである、との神示であった。

王仁はその教訓を拝して一歩一歩はだしで進んでいった。たちまち金橋が回転を始め、危機迫る思いに顔色をなくしてしまった。すると、勇猛・果断たれ、毅然として神命を敢行せよ、恐れるな、との声が聞こえた。

この声に恐怖心はすっかり払拭された。金橋は回転を速めて旋回し、また元の東の位置に戻った。するとそこは、天教山の頂であった。そこには木花姫命をはじめ、多数の神人らがいて、歓迎の意を表した。

王仁は天教山の山頂に、神々とともに停立していた。

突然山上を吹きまくる吹雪の寒さに痛みを感じ、烈風に吹かれて山上に倒れ伏した。額を打って両眼から火光が飛び出したと思うと、王仁の身は高熊山の岩窟に静座して、岩角に頭を打ち付けていたのであった。

第25章 姫神の宣旨(225)

瑞祥あふれる天教山に、木花姫命をはじめ宣伝使たちは意気を休めていた。神々らは天眼鏡を片手に地上の様子をおのおの眺めていた。

木花姫命は一同を集めると、さまざまな色の被面布を授け、現界・幽界で神言を伝える際には、この覆面を必ずかぶるように、と言い渡した。神々は変装して、野立彦命の神教を宣伝するため、八方に手分けすることになった。

このとき天教山は鳴動を始め、その音響は次第に強烈になってきた。木花姫命は、天教山の鳴動は火球の世界から大神の神霊が現れ、スの種を世界にまくばる瑞祥のあらわれである、と諭した。そして自らは天教山の中腹に転居した。

木花姫命は神々らにヒマラヤ山に一度集合して、野立姫命の神教を拝受した後、宣伝使となって世界を救済するように、と凛とした威厳をもって宣旨した。

天教山はついに大爆発を起こして中空に火花を散らすことになった。

第26章 艮坤の二霊(226)

轟然とした大音響と共に、天教山の頂上から多数の星光が打ち上げられ、世界の各地に落下した。これは、神示の宇宙で示した地球の中軸の大火球(=根底の国)に落ちて、種々の艱難辛苦をなめた神人らの身魂が、時を得て、野立彦命の神徳により、地中の空洞(天の岩戸)を開き、天教山の火口から爆発したのであった。

これがいわゆる、地獄の釜の蓋が開く、ということである。また、「天の岩戸開き」というのも、このことを言うのである。

地上に散布された星光は、根底の国の労苦によって洗練され、天授の真の霊魂に立ち替わり、美しい神人として地上にそれぞれ身魂相応の新徳を発揮することになったのである。

これが、木花姫命が説き諭した、三千世界一度に開く梅の花、開いて散りて実を結び、スの種子を養う、ということなのである。つまりこれは、野立彦命が、世の立替、立て直しの先駆として、まず世に落ちていた正しい神人を一度に地獄の釜を開いて救い、世界改造の神種とした、深遠なる御経綸なのである。

木花姫命が宣伝使とともに天教山の中腹に下ってくると、銀橋を渡って天教山にたどり着いた神人らが、歓呼の声で迎えた。このように天教山には、上中下の身魂の神柱がおのおの部署を定めているのである。

地上に星光として散布された身魂は、美しい神人となって各地に現れた。この宣伝者の教えを聞いて随喜し、説く者と聞く者の意気が合するときは、神の正しい教えが身魂の奥にしみわたり、磁石が鉄を吸い寄せるような密着の関係を作ることができる。これを因縁の身魂という。

木花姫命の宣旨を奉じた宣伝使たちは、ちょうど回転して来た銀橋に乗り、そのまま空中をめぐって無事にヒマラヤ山に降り立った。ヒマラヤ山では神人らが木を伐採し、夜に日を継いで盛んに建築をしていた。一行はその中を丁寧に一礼しながら、山上の野立姫命の神殿に向かって粛々と登っていった。

第27章 唖の対面(227)

一行は、ヒマラヤ山の山頂の白銀の宮にたどり着いた。そこでは高照姫神が一行を出迎えたが、その場には、いったん根底の国に退去したと思われていた、宣伝使たちの妻神たちが居並んでいた。

しかし神人らは互いに神命をつつしみ、ただ目と目を見合わせて言問うことを控えていた。高照姫神は、野立姫命は今は蔭の守護となっており、面会することはできない、と伝えた。

高照姫神をはじめ一同は、祝部神がいないことに気がついたが、その場はひとまず解散となった。少彦名神は、祝部神を探してにぎやかな建設現場の方へと歩いていった。すると、声勇ましく汗みどろになって立ち働いている祝部神を見つけた。

祝部神は木花姫命からもらった被面布も失くすほど夢中で立ち働いていたが、少彦名神に気をつけられて、被面布を探し出し、白銀の宮に登っていった。

白銀の宮の前では、妻神の祝姫が心配そうに待っていた。二神は顔を見合わせ、ただ無言のまましばし休憩した後、それぞれの持ち場に戻っていった。

第28章 地教山の垂示(228)

高照姫神から授けられた野立姫命の垂訓は、『朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも欠くるとも 大地は泥に浸るとも 誠の力は世を救う 誠の力は世を救う』という宣伝歌であった。

宣伝使たちは諸方宣伝の旅の門出に当たって、祝いの宴を振舞われた。そして一行は世界に散って行った。

祝部神は祝宴もそこそこに一目散にヒマラヤ山をどんどんと下って行った。山麓では神人らが大勢集まって、飲めよ騒げよ、とウラル教の歌を歌っていた。

祝部神は負けじと宣伝歌を大声で歌い始めた。神人らはこの声に非常な苦痛を感じ、祝部神に打ってかかった。祝部神が追い詰められているところへ、ちょうど山を下りて来た天道別命、月照彦神らの一行が出くわした。

天道別命らも、一緒になって宣伝歌を歌い始めた。山麓の神人らは天道別命らにも打ってかかったが、被面布をかぶった宣伝使たちの姿はたちまち、見えなくなってしまった。

そうするうちに天に荘重な声があり、山麓の神人らを諭し、高山彦・高山姫に従って地教山に仕えるように、と聞こえた。神人らは驚き畏れ、ひれ伏して宣伝使たちに謝罪した。

そこへどこからともなく天の磐船が現れて、天道別命ら一行を乗せて天高く、東西南北それぞれの方向に姿を隠してしまった。

第五篇 宇宙精神
第29章 神慮洪遠(229)

宣伝使が選定されて各地に配置された後、金銀銅の天橋の光は消えうせた。そして東北の天に十六個の黄金色に強く輝く大星が輝き、西南には銀色に輝く十六個の星が現れた。

たちまち天は墨を流したように暗黒となり、また血のように真紅の色となり、さまざまな色に変化した。そして暴風、日照り、寒風、火山、地震などの天変地異がしきりに発生した。

神人らは神頼みでいっせいに地に伏して嘆願する惨状を呈した。この天変地異は七十五日続いた。これは大神が地上神人の身魂を試したご経綸であったが、真の神の恩を感得した者は、千分の一にも満たなかった。

大神の悲嘆の涙と吐息は天変地異を発現させるため、穢れ曇った地上世界の様子をご覧になっても、泣くにも泣かれず隠忍していた。しかし数十万年のうちに体内に蓄積した涙と吐息は抑えきれず、ついにいつ体外に勃発するかもしれない事態に至った。

体内に溜め込んだ吐息は鼻腔よりかすかに漏れて大彗星となり、宇宙間に現れては消えていった。しかしその邪気なるガス体は宇宙間に飛散して、一切の生物の寿命を害するようになった。

第30章 真帆片帆(230)

暗澹とした天地の光景は一変し、穏やかな日となった。地中海の渡船場にひとりの異様な旅姿の宣伝使があらわれ、乗船を迫った。

船戸神は宣伝使を差し招き、一点の雲もない空の下、穏やかな海面を船は出港した。風のない海面で船は遅々として進まずに漂っていた。神人らは四方山話にふけって時を費やしていた。

連日の無聊に退屈した神人らは、ウラル教の宣伝歌を歌って騒ぎ始めた。これを聞いていた宣伝使は身を起こし、涼しい声を張り上げて天教山の宣伝歌を歌い、手をうち足を踏みとどろかして舞い狂った。

神人らはこの歌声につり出されてともに興に乗って踊り始めた。

この光景に苦々しい面構えをした巨大な神人が立ち上がった。

第31章 万波洋々(231)

船中の宣伝使は、祝部神であった。一方、これに対抗して立ち上がったのは、ウラル彦の宣伝使・牛雲別であった。

祝部神はかまわず、牛雲別を揶揄するこっけい歌を歌って挑発した。船中の神人らは祝部神の大胆さにあきれて様子を見守っていた。

牛雲別は大口を開けてがぶがぶ酒を飲みながら、酒を賛美し祝部神を罵る歌を歌って、船中の神人らに酒を振舞った。神人らは牛雲別の酒を振舞われて、酒を賛美する歌を歌って踊った。

祝部神は元来酒好きであったが、ここは神の試練とぐっとこらえて、声を張り上げ宣伝歌をふたたび歌い始めた。

第32章 波乱重畳(232)

へべれけになった神人らには、祝部神の歌う「三千世界云々」の歌に苦痛を覚えた。やがて夜もふけて静かな丑三つ時ごろ、酒に酔いつぶれて寝ている神々らを嵐が襲った。

神人らはいっぺんに酔いもさめて激しく波風に揺られ翻弄される船の中にただ震えていた。祝部神はここぞとばかり声を張り上げて、悔改めの宣伝歌を歌い始めた。

やがて船は一つの島に打ち上げられた。

第33章 暗夜の光明(233)

船が打ち上げられたのは、地中海の牛島(サルヂニア島)であった。ここは、黄金水の霊から現れた玉のうち、竹熊に奪われなかった残りの瑠璃光の玉を、高杉別が従者・杉高に命じて密かに隠させた場所であった。

玉を島の頂上の岩石に隠し、その上にしるしの松を植えて杉高に守らせたのである。

先の天教山の爆発に際して、天空から十一個のうるわしい光輝の宝玉が瀬戸の海に落下した。海神はそれを杉高に奉ったため、牛島には十二個の宝玉が揃うことになったのであった。

これは玉を守る杉高の真心に感じて、国祖が賜ったものであった。後に、杉高は十二個の宝玉を奉じて高杉別とともに神業に奉仕することになる。

さて、暗中島に打ち上げられた神人らは、この苦境の中で、祝部神の歌う宣伝歌に感じてその意を悟り始めた。祝部神はさらに、改心を促す歌を歌った。

祝部神の歌が終わるとともに、朝日がさんざんと輝いた。牛雲別はこの苦難のうちに自らの非を翻然として悟り、酒を廃して祝部神に帰順した。

牛雲別は祝彦を改名し、杉高は杉高彦と名乗り、共に祝部神に付いて宣伝使となった。牛島の十二個の宝玉は天の磐船に載せられて、地教山の高照姫命のもとに送り届けられた。

第34章 水魚の情交(234)

牛島に打ち上げられた神人らは、山の杉の大木を伐りだして船を作り、ふたたび海に漕ぎ出した。祝部神は、船中の神人らに船旅の意図を尋ねた。

神人らの中の長と思しき神人は経緯を語った。神人らは小郷の酋長たちであった。先ごろの天変地異に対して里の神人らの不安は一方ならない中、西南の銀色の十六個の星が何事かを暗示していると思われるため、西南に向かって真相を確かめに行く途中である、と明かした。

意見を求められた祝部神は、主神の存在を説き始めた。そして体主霊従の邪気によって世界が悪化し国祖がご隠退されたために、現在の天変地異が引き起こされた経緯を説いて、悔い改めを諭した。

そして、自分たちは野立彦命、野立姫命の神勅を伝えるために旅をしていることを明かし、福音に耳を傾けるようにと説いた。並み居る神人らは緊張した面持ちで祝部神の話しに聞き入った。

第六篇 聖地の憧憬
第35章 波上の宣伝(235)

祝部神の教示を聞いていたかの酋長は、もし宇宙の独一真神である大国治立尊が存在するならば、何ゆえ天変地妖をを鎮めて地上の神人らを安堵しないのか、と尋ねた。

祝部神はこともなげに、全知全能の大神の経綸は、我々の知るところではない、と言い放ち、吉凶禍福は神の命じるところであり、我々はただ神の教示に従って霊主体従の行動を取ればよいのだ、と喝破した。

祝部神は雲の出現と行く末さえも、我々は予知することができない、と続け、ただ大神の意思に従順にしたがうのみである、と宣伝した。船中の神人らは大神の無限絶対の霊威に感嘆し、「惟神霊幸倍坐世」と高唱した。

おりから寒風が強く吹いて霰が船に降り注ぎ始めた。祝部神は立ち上がり、宣伝歌を歌って船中の神人らを勇気付けて宣伝を続けた。

船は荒れ狂う海を越えて、かろうじて西南の岸に着いた。ここは埃(え)の宮、または埃(え)の港という。一行は勇んで上陸した。

第36章 言霊の響(236)

埃の宮では、天教山・地教山の宣伝歌を節面白く歌う宣伝使に神人らが群がっていた。祝部神はその声に心勇んで、祝彦、杉高彦とともに声のする方に進んでいった。

埃の宮で吹きすさぶ烈風にも負けずに歌う宣伝歌は、月照彦神と祝部神であった。その宣伝歌は地教山にまで届いた。地教山の高照姫神は黄金の幣を取り出して、烈風を払った。

真澄姫神は地教山の高殿から、埃の宮で宣伝を続ける夫神・月照彦神のために歌を歌った。その歌は埃の宮の宣伝使たちに届いた。二宣伝使は勇気百倍して、宣伝を続けながら聖地エルサレムを指して進んでいく。

第37章 片輪車(237)

烈風ふきすさぶ埃及(エジプト)に現れた宣伝使一行はここに別れを告げ、月照彦神は東方を指して、祝部神一行はエルサレムを指して進んでいった。

風がおさまってからりと晴れた中、前方からやせ衰えた女人が車を引いて、北へと向かっているのに出くわした。車には、足がきかない様子の男子が乗っている。

祝部神はこの様を見て驚いた。女人は祝部神を見ると、袖にすがりつき、自分はモスコー八王の娘・春日姫であると明かした。そして、祝部神に、貴下は天山の八王・斎代彦ではないか、と問いかけた。

祝部神は黙って春日姫の口に手を当てた。春日姫はその意を悟り、そ知らぬふりで自分の思い違いであると宣し直した。祝部神は、自分はただ、素性の卑しい宣伝使であり、そのような尊き神人ではない、とだけ言った。

祝部神は車上の男子が鷹住別であると気づいて、驚いて声をかけた。鷹住別はたださめざめと涙を流すのみであった。

第39章 回春の歓(238)

祝部神は、めそめそする奴は大嫌いだ、と言い放つと、杉高彦、祝彦とともに面白歌を歌って踊り始めた。

その歌は、鷹住別と春日姫の仲をからかう滑稽な歌であった。この面白い歌に車上の鷹住別は思わず立ち上がって足を踏みとどろかせて一緒に舞い踊った。

鷹住別の足が立ったのを見て、春日姫はうれし泣いた。祝部神はまた、泣く奴は大嫌いと言って面白い歌を歌って踊り、溝の中に落ちた。落ちながらもまだ歌い踊っていた。

その様を見て一同はどっと笑い転げた。難病の足が治ったのも、ひとえに笑いと勇みの効果である。

天地の間のことはすべて、言霊によって左右されるものであれば、笑い勇んで暮らすべきである。万物の霊長と生まれた人間が、この世を呪い悲しむべきではない。この世を怒り憂い悲しむ禍津の心を取り直し、いかなる大難にあっても決して悔い悲しむべきではない。

勇めば勇むだけ神徳が備わるべき人間として生まれさせられているのである。

第39章 海辺の雑話(239)

西に高山、東に万里の海を控えた浜辺に立って、怒涛のごとく荒れ狂う波を眺めながら、雑談にふける四五人の男たちがあった。

男たちは、宣伝使が最近あちこちに現れては、三千世界一度に開く梅の花、大地が沈むとも真の神は世を救う、という福音を宣伝していることについて、あれこれと品評をしていた。

そんなことがあるものか、といって互いにけなしあいながら、おかしな話をしていた。乙はウラル教の教えこそ天国の福音だ、と言う者もいた。

そこへはるか前方から三人の宣伝使が、予言の宣伝歌を歌いながらやってくると、ウラル教を賛美していた乙は、顔をしかめてしゃがみこんでしまった。暴風はますます激しくなり、一同は山へ逃げ込んでしまった。

第40章 紅葉山(240)

月照彦神は、宣伝の道すがら、モスコーの道貫彦の神館を通りかかった。すると館より鷹住別・春日姫夫婦が月照彦神の前に現れた。夫婦は父の八王・道貫彦は天教山の教えに耳を傾けず、どうか諭してほしい、と月照彦神に嘆願した。

道貫彦は館で酒宴の真っ最中であったが、突然倒れ、館内は大騒ぎになってしまった。そこへ館の外では怪しい三人の宣伝使が、涼しい声を張り上げて、道貫彦に警告を与える宣伝歌を歌い始めた。

この警告の宣伝歌の文句は、道貫姫の胸に突き刺さった。そこで姫は従神に命じて宣伝使を招き、奥殿に招きいれた。宣伝使たちは遠慮もなく進みいると、天教山の教えを伝える宣伝歌を歌い始めた。

卒倒していた道貫彦はがぜん立ち上がり、一緒に踊り始めたので、神人らは驚いた。

三柱の宣伝使は身にまとった蓑笠を脱ぎ捨て、中央に鼎立した。それは、大八洲彦命(月照彦神)、鷹住別、春日姫であった。

道貫彦は悔改め、月照彦神の教示を受け入れて従者となり、一緒に諸方を遍歴することとなった。

第41章 道神不二(241)

青雲山を訪れた宣伝使・天道別命は、八王・神澄彦夫妻、八頭・吾妻彦夫妻の歓待を受けた。

神澄彦夫妻、吾妻別夫妻は天教山の神示を奉じて、青雲山の役職を捨て、宣伝使となって旅に出発した。

第42章 神玉両純(242)

神澄彦宣伝使は、一面の銀世界の中、雪をかきわけて南高山へとやってきた。みすぼらしい蓑笠姿で夜に門を叩くが、門番神は取り合わない。

神澄彦は大音声で出任せ歌を歌いながら、南高山の大島別を呼ばわった。大島別の娘夫婦、玉純彦と八島姫は、ただちに宣伝使を館内に招き入れた。夫妻はそれが神澄彦であることを認めた。

神澄彦は、天教山の宣伝使となって旅をしていることを打ち明けた。夫妻は神澄彦の宣伝に熱心に耳を傾けていた。

しばらくして、奥殿にそうぞうしい声が聞こえた。見れば、南高山の大島別は、憑依していた邪神が神澄彦の宣伝歌に驚いて逃げ出した刹那、老衰のために帰幽してしまっていた。

これより、玉純彦、八島姫夫妻は神澄彦の誠心に感じ、宣伝使となって南高山城内をはじめ諸方を遍歴し、神の福音を伝えることとなった。

 

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