とよたま愛読会127回
   
霊主体従 5巻 43章 〜 6巻 9」  
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      記:望月幹巳 メール:motomi@moon.nifty.jp


日 時  平成19年4月22(日) 午後1時から午後4時30分まで
場 所  愛善苑 豊玉分苑 (京王線下高井戸駅下車 徒歩8分 川崎方)
      連絡先 03-3321-3896、  03-3321-8644
物 語   霊主体従 5巻(辰の巻)第43章:長恨歌 〜 6巻(巳の巻)第9章 :埠頭の名残

★ 報告
新緑の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと思います。
物語は各地の宣伝に向かう天教山の宣伝使たちの様子を描いています。
 アーメニヤの神都では、ウラル彦が盤古大神を攻撃して追い出し、自らが盤古大神を名乗ります。ウラル彦の盤古大神は常世城を奪回しようと、大自在天の常世神王と戦争を始めますが、神の怒りの洪水にあってアーメニヤに退却します。
 本物の盤古大神は、日の出神に導かれて聖地エルサレムに逃れます。かつての国祖の重臣の子らが盤古大神を迎えて神政復古を試みますが、うまくいかずに世界の混乱は続きます。

第六巻に入りますと、総説では太古の神政について、また第一章では宇宙創造が語られます。この宇宙創造は、主神による太初の宇宙創造であり、第二巻の二十章で八王大神が演説中に宇宙創造について言及したほかは、第三巻の第五十章にまとまって語られている例があります。
 太初の宇宙創造は、天祥地瑞の始めに詳しく語られることになりますが、霊主体従の中にもちりばめられて語られています。  第六巻は足真彦(=大足彦)が常世の国を宣伝し、旅の途上鬼城山で春日姫、月照彦神とともに魔神を帰順させる物語が語られます。

その後、各宣伝使は旅に散って行きます。
 宣伝使たるもの、仲間同士で行動せず一人で神と誠のみを力として、いかなる艱難辛苦もいとわず喜んで宣伝を行うべし、という厳しい宣伝使の心得が示されています。

★ 拝読箇所で気のついたこと
霊主体従 辰の巻
第七編 宣伝又宣伝

第四十三章 長恨歌(243)

  • 神澄彦の手引きで、野立彦命の教えに帰依して宣伝使となった南高山の玉純彦は、妻の八島姫に別れを告げて、聖地エルサレムに向けて宣伝の旅に旅立った。

  • 八島姫は夫の無事を祈る歌を歌った。

  • 第四十四章 夜光の頭(244)

  • ロッキー山のふもと、スペリオル湖では、少彦名神の宣伝使が、船に乗っていた。激しい風に湖面は荒れて、すさまじい光景を見せていた。

  • 少彦名神が言霊を唱えると、暴風はぴたりと止んだ。船内の常世の国の人々は一様に少彦名神に感謝の念を抱いた。船客のひとりが少彦名神の素性を問うたのをきっかけに、少彦名神の船内の講話が始まった。

  • 曰く、宇宙間には無限絶対無始無終の大国治立の大神が存在し、この世のものすべては、大神の御分霊である、と。そして船客の問いに答えて、スペリオル湖にも神はおり、あらゆる場所に神が宿るがゆえに、神を汚してはならない、と教えを説いた。

  • 船を降りると、少彦名神は宣伝歌を歌いながら西へ西へとあてもなく進んでいった。

  • 第四十五章 魂脱問答(245)

  • 万寿山の八王であった磐楠彦は、磐戸別の神と名を改めて、宣伝の旅に各地を回っていた。常世の国を横断し、竜宮城へと渡るために、常世の国の西岸の紅の港にやってきた。

  • そこには船人たちが雑談にふけっており、噂話に花を咲かせていた。海の向こうの戦争の話から、万寿山の宣伝使の宣伝の話をしていた。

  • そして竜宮島=冠島に秘めおかれた潮満潮干の玉をウラル彦の手下が取ろうと攻め寄せ、大海原彦神が迎え撃ったが、玉には神力がなく、奪われてしまった、という。また、沓島の玉にも力がなく、これも敵に奪われてしまった、という話をしていた。

  • しかし実は玉の力は厳の御魂がシナイ山に隠してしまっていた。ウラル彦の手下はシナイ山も攻めたが、守護神の貴治別が岩石を降らして撃退した、という。

  • 第四十六章 油断大敵(246)

  • ウラル彦は大蛇の身魂の威力を借り、ウラル姫は金狐の悪霊の指図を受けて、アーメニヤは一時的に隆盛を極めた。アーメニヤに集まってきた神々はいずれも、体主霊従の行動を取った。

  • ウラル彦はついに、日ごろから仲の悪かった盤古神王を暗夜に乗じて攻撃するに至った。ウラル彦は盤古神王の孫神にあたるにもかかわらず、このような恐ろしい挙動に打って出たのである。

  • 盤古神王は無抵抗主義を取って泰然としていたが、賓客として滞在していた日の出神に励まされ、妻・塩長姫、娘・塩治姫と共に、夜陰にまぎれてアーメニヤを脱出した。

  • 聖地エルサレムに逃れた盤古神王は、形ばかりの仮殿を建てて天地神明を祀り、世界の混乱鎮定を祈願することになった。天変地異が頻発し、地上の神人は非常な苦しみを味わう世界となってしまった。

  • 第四十七章 改言改過(247)

  • 盤古神王を都から追い出したウラル彦は、自ら盤古神王を名乗った。そして軍を召集すると、常世城奪還の戦争を開始し、常世神王軍と激しく争った。

  • しかし暴風が激しく吹きすさび、津波が発生して常世城が今にも水没するという災禍が起こったため、盤古神王軍はひとまず引き返した。常世神王は驚いて天地を拝して天津祝詞を唱え、天教山に向かって助けを求める賛美歌と唱えた。

  • すると天橋が現れて、常世神王や部下の大鷹別の体を引っ掛けて空中に吊り上げてしまった。

  • 盤古神王のウラル軍は大半が水没し、命からがら逃げ帰った。

  • 第四十八章 弥勒塔(248)

  • 聖地エルサレムは荒廃のきわみにあった。かつての天使・真心彦の従臣であった国彦、国姫の子ら、真道知彦、青森彦、梅ヶ香彦は、祝部神から天教山の教えを聞いて意を決し、神政を復興しようとした。

  • 父母である国彦、国姫を主管者と仰ぎ、三兄弟が神政を補佐することとした。諸方に散乱していた神人らは、この報せを聞いて集まってきた。皆、聖地の神政を待ち望んでいたのである。

  • しかし国彦、国姫は放縦で節制がなく、三兄弟の諫言も聞かず、再び聖地は混乱に陥ってしまった。

  • 竜宮城の三重の金殿は、諸刃の剣の形となって天に延長してしまった。これを天の浮橋、また弥勒塔という。

  • 三兄弟は橄欖山の大樹を伐って方舟を作らせたが、国彦、国姫はこれを妨害した。

  • そこへ、盤古神王の一行がウラル山を逃れて日の出神の手引きでエルサレムにやってきた。エルサレムは再び隆盛を見ることになった。

  • しかし天変地異が起こり、天地は振動し、星は空中に乱れ散り、怪しい音響、雨が滝のように降り注いで聖地も半ば水中に沈んでしまうほどであった。

  • 第四十九章 水魚の煩悶(249)

  • エルサレムの三兄弟は、盤古神王を丁重に迎えた。

  • 三兄弟は国彦、国姫が神明に背いて律法をかく乱するのを見て、情よりも大儀を取り、盤古神王を総統神と仰ぐことにした。

  • しかし天変地異はおさまらなかった。

  • 第五十章 磐楠船(250)

  • 大足彦はいまや足真彦と名前を変えて、宣伝の旅に諸方を巡っていた。常世の国の紅の郷にやってきた。この地は蓑彦という正しい神人が治めていた。

  • 足真彦は、数十人の神人らが山林の楠の木をしきりに伐採しているのを見た。彼らの話によると、これは蓑彦が来るべき大洪水に備えて方舟を作っているとのことであった。

  • 蓑彦は足真彦の後を追って来て、丁重に館に迎え入れた。

  • 霊主体従 6巻 巳の巻
    松葉の塵

  • 宇宙には、現界、幽界、神界の三大区別がある。神界はもっとも貴く厳然たる世界であり、正神が集まって活動する。生成化育の神業を守護し、積極的な活動を営む世界である。生死を通じて人間の魂を支配する清浄潔白な神霊界である。高天原、天国、霊国、浄土、極楽、楽園とも言う。

  • 幽界は邪神界である。消極的神業を執行する大禍津日神、八十禍津日神が、罪の御魂を成敗する醜い地下の世界である。幽界は、地上にも顕現することがある。根の国、底の国、または地獄と言う。

  • 神界には、各階級の神霊があるが、それとともに、現界における正しい人々の本霊は神界にあって、現界の人を守護している。これが本守護神である。

  • 本守護神が神界にあるときは、現界において行う事業はことごとく完成して成果を上げる。

  • しかし本守護神が邪神界に籍を置いているときは、精神が混濁して邪なことを行い、天下に害毒を流して何事もうまくいかず、成果が出ないのである。

  • 現界において日夜活動するにあたっても、霊魂は神界または幽界を往来しつつあるのである。ゆえに、常に神を信じて神を敬い、神界と連絡を保つように信仰に励むべきなのである。

  • この霊界物語も、神代の太古の現界を主とし、神界と幽界の相互の関係を口述するのが主旨である。

  • 総説

  • 太古の神霊界における政治の大要を述べる。数百万年以前のことであり、高熊山の霊学修行中に王仁が見聞したままを記憶から呼び起こして吐露するまでである。

  • 本巻は、諾冊二尊が天照大御神の御魂の大御柱を中心に天から降り、天の浮き橋に立ってくらげなす漂える国を修理固成し、現代の日本である豊葦原の瑞穂の中津国を胞衣とし神実として、地上のあらゆる世界を修理固成した経綸の大略を述べている。

  • それゆえ、舞台は日本のみではなく、地上神人界全体にわたって起こった出来事なのである。

  • 太古の御神政は、神祭を第一とし、次に神政を行った。国々には国魂神があり、各国魂神はその国の神王、また八王といって八尋殿を建ててその至聖所に祭壇を設け、造化三神を鎮祭し、同殿同床で奉仕した。左守神、右守神(八頭)に神示を伝えて神政を司らしめた。

  • 国治立命の御神政の時代には、天使長(あまつこいのをさ)という聖職があり、国祖の御神慮を奉じて各地の八王八頭を統轄していた。

  • 諾冊二尊ご降臨の後は、伊弉諾の大神が八尋殿を作って造化三神を祀り、同殿同床の制を敷いた。伊弉冊尊は国の御柱神となって地上世界の主管者となった。

  • しかしながら時代が下るにつれて地上世界は体主霊従の邪気がみなぎり、収集できない状態になった。

  • ここにいたって、大神の神政を補佐するために、糞に成りますという埴安彦の神が現れて、天地の洪徳を世界に説示するために教えを立てて、宣伝使を天下に派遣することになったのである。

  • 国祖・国治立命は天教山に隠れ、宣伝使を任命して地上世界に派遣した。これが、神代における治教的宣伝の始まりであった。このとき宣伝使に任じられた神人らは、多芸多能で、六芸に通達した神人ばかりであった。

  • 後に埴安彦・埴安姫の二神が地上に顕現して麻柱(あななひ)の教えを説き、宣伝使を通じて世界の神人らの御魂の救済に尽くした。麻柱の宣伝使もまた、士農工商の道に通達し、天測を守り、忍耐を唯一の武器としてあらゆる迫害を甘受してその任務を尽くしたのである。

  • 太古の人間の生活は決して楽なものではなかったが、天地の大恩を感謝して楽しく暮らしていた。地上の人間の数が増えるにしたがって弱肉強食の社会となってしまったのである。

  • 第一篇 山陰の雪
    第一章 宇宙太元(251)

  • 大宇宙の元の始めは、湯気とも煙ともなんとも形容のしがたい一種異様の微妙なものが漂っていた。これがほぼ十億年の歳月を経て、無形・無声・無色の霊物となった。これを宇宙の大元霊という。

  • 日本の神典ではこの大元霊を天御中主神、天之峯火夫神という。仏典では阿弥陀如来、キリスト教ではゴッド、易では対極、中国では天帝、等々と呼ばれている。

  • 天御中主神の霊徳は、次第に宇宙に広がって行き、ついには霊、力、体を完成した。無始無終、無限絶対の大宇宙の森羅万象を完成させた神であるので、これを称して大国治立尊、天常立命、ミロクの大神とも言う。

  • 宇宙の大原因である一種微妙の霊物は、天御中主神の純霊として、霊力を産出するにいたった。これを霊系の祖神・高皇産霊神という。

  • 次に元子(または水素)を醸成した。これを体系の祖神・神皇産霊神という。この二神の霊と体から、一種の力徳が生じた。ほとんど三十億年を要して、霊・力・体がやや完成にいたった(造化三神)。

  • 水素は次第に集合して清水となった。高皇産霊神は、清水に火霊を宿したので、清水には流動する力が備わった。水の流体を葦芽彦遅神という。水は一切動物の根源をなし、これに火を宿すことで動物の本質である力徳が発生する。生魂(いくむすび)とはこのことを言う。

  • 次に火と水が抱合して固形物体が発生した。宇宙一切を修理固成する根源の力となる。これが常立神であり、剛体素という。玉留魂(たまつめむすび)である。玉留魂によって、宇宙は固体を備えるに至った。ここまで太初から五十億年かかっている。

  • 水を胞衣として創造された宇宙の中で、一切の円形のものは、水の微粒子の円形に基づいている。

  • 剛体は玉留魂の神威発動による。日地月星がようやく形成された。宇宙の大地は、ほうらくを伏せたような山と、剛流の混淆した泥海から成っている。

  • 玉留魂の神の神徳が発揮されて大地・海陸の区別がなった。軽くて清いものは大空となり、重くて濁ったものが下に留まって大地を形成した。

  • 流と剛、すなわち生魂と玉留魂の水火が合して不完全な呼吸を営み、その中から植物の本質である柔体・足魂(たるむすび)が完成した。これを神典では豊雲野命という。

  • ここまできて、宇宙には剛(玉留魂)、柔(足魂)、流(生魂)の本質が完成された。

  • これらの原子と原因は、互いに生成化育して発達し、動(大戸地神)、静(大戸辺神)、解(宇比地根神)、凝(須比地根神)、引(生枠神)、弛(角枠神)、合(面足神)、分(惶根神)という八力を産出した。

  • この八力によって宇宙の組織が成就し、大地星辰はその位置を保つことができるようになった。こうして、大宇宙が完成するまでに、ほとんど五十六億万年を費やした。

  • こうして大宇宙の大原因霊である天御中主神は五十六億万年かけて宇宙の一切を創造し、大国治立命と顕現した。そしてその霊魂を分派して我が宇宙に下したもうた。これが、国治立命である。国治立命は、豊雲野命と剛柔相対して地上に動植物を生成化育し、諾冊二尊を生み、日月を作ってその主宰神とした。

  • しかしながら国治立命の神政も、年が経るにつれて邪気が宇宙に行き渡ったために、ご退隠を余儀なくされたことは、すでに述べたとおりである。

  • 第二章 瀑布の涙(252)

  • 足真彦は鬼城山の麓にやって来た。鬼城山はかつて、棒振彦らが拠点として大八洲彦命ら天使に反抗し、大足彦とも大いに戦った邪神の住処である。

  • とぼとぼと歩く足真彦を後から呼ばわりながら追ってくる者がある。見れば、馬にまたがった老人と若者の連れであるが、怪しい素振りが見える。若者は、宣伝使に母の三回忌の供養をして欲しいので呼び止めたのだ、という。

  • 魔神の住処の山中で行き暮れた足真彦は、これも神様のご縁と、怪しい主従について一夜の宿を借りることに決めた。

  • 第三章 頓知奇珍(253)

  • 足真彦がついていくと、深山に似合わない大きな館に案内された。しかし館の男たちの口ぶりが、どうも足真彦を害そうと待ち構えていたようである。また、自分を連れてきた男は邪神・鬼熊彦であることがわかった。

  • 足真彦はそこで、とっさに聾唖のまねをして、一切の声が聞こえない振りをした。

  • 耳が聞こえない振りで、鬼熊彦の罠の誘いに気がつかない振りをして避け、逆に奇妙な質問をして鬼熊彦をはぐらかしてしまった。

  • そこへ、絶世の美人が現れて宣伝使に一礼した。

  • 第四章 立春到達(254)

  • 足真彦の前に現れた美人は、あたりに人がいないことを確認すると、自分はモスコーの春日姫であることを明かした。

  • 月照彦神に導かれて宣伝使となっていた、鷹住別・春日姫夫婦は、互いに別れて宣伝の旅に出た。その途上、春日姫は従者の春姫とともに、鬼城山の美山彦にかどわかされて、この館に軟禁されていたのであった。

  • 春日姫はまた、月照彦神もやはり鬼城山にとらわれの身になっていることを明かした。

  • 春日姫の計略で、春日姫が美山彦になびいた振りをして酒を飲ませ、その混乱に乗じて邪神をこらしめ鬼城山を清めることとした。

  • 第五章 杯盤狼藉(255)

  • 美山彦は、春日姫が結婚を申し出てきたことで有頂天になって部下に式の準備を命じた。

  • 春日姫と春姫は、美山彦をへべれけに酔わせてひっくり返らせてしまった。そして月照彦神、足真彦とともに今後の作戦を協議した。

  • 第六章 暗雲消散(256)

  • 一同は身を清めて立派な衣服を身に着け、天津祝詞を奏上した。そして美山彦を縛り上げると宣伝歌を歌った。美山彦は宣伝歌を耳にしてしきりに苦しみを覚えた。

  • 美山彦は無念の歯噛みをなして悔しがったが、縄は強くいかんともすることができなかった。

  • また、大広間では一同の部下も酒に酔ったところを春日姫、春姫に縛られて、叫喚の声を発していた。

  • 宣伝使たちは宣伝歌を歌うと、縛られた邪神の部下たちは苦しみ転げまわった。春日姫は鬼熊彦に向かって、常世城の蚊取別ではないか、と問い詰めると、果たして縛られたままに白状した。

  • 一行はさらに宣伝歌を歌って皆に憑依していた邪神を退去させると、縄を解いた。鬼城山の面々は両手を合わせてひざまずき、宣伝使たちに神恩を感謝した。

  • 美山彦は天教山への帰順を誓った。宣伝使たちは鬼城山を下ると、ナイヤガラの瀑布に身を清め、ふたたび諸方に遍歴を続けた。

  • 第七章 旭光照波(257)

  • 鬼城山にて四人の宣伝使が一同に解したのも、またく大神の経綸の糸によるものであった。一行はナイヤガラで禊を済ませると、東西南北に散っていった。

  • 宣伝使はあくまで同行者なく、他人を杖につくことは現に戒めなければならない。山野河海を跋渉し、あらゆる艱難辛苦をなめて身魂を練磨して、神明の命じた天職を喜んで尽くすべきものである。神を力に、誠を杖に、悪魔を言向け和すものである。

  • 春日姫は常世の国を北東に進み、東岸に着いた。港には純白の真帆を揚げて入港してくるいっそうの船があった。船には、紫の被面布をかけた宣伝使が、へさきに直立していた。

  • 第二篇 常世の波
    第八章 春の海面(258)

  • 船の安着に、宣伝使は白扇を広げて祝の宣伝歌を歌った。春日姫はその歌に耳を傾けて聞き入っていた。

  • 宣伝使は弘子彦神であった。そして、港に春日姫の姿を認めると、姫に歌いかけた。春日姫もまた、弘子彦に鬼城山での出来事を歌に歌い返した。

  • 弘子彦が岸に着くと、二人は傍らの森林に入って人目を避けた。

  • 第九章 埠頭の名残(259)

  • 一方、船の底で旅の疲れに疲れ果て、夢を見ていたのは、鷹住別であった。鷹住別は夢の中に、妻の春日姫の姿を見ていた。宣伝の旅にやつれた妻の姿を見た鷹住別は、思わず、宣伝の使命は終わったので一緒にモスコーに帰ろう、と問いかけた。

  • そこにガラガラと碇を下ろす音が聞こえて、鷹住別は夢を破られた。鷹住別は岸に上陸すると、空を眺めて思わず望郷の念に駆られていた。

  • すると、どこからともなく『天に代わりし宣伝使。心ゆるめな、錨を下ろすな。浮世の荒波に向かって突進せよ』という声が雷のように響いた。

  • 鷹住別は自らの心の弱さを天地に謝罪し、常世の国を横断すべく進んでいった。

  • さて、森林にて弘子彦と春日姫は、しばし来し方を語り合って旅の疲れを慰めあっていたが、港の方から船の出港を呼ばわる船頭の声が聞こえると、二人は心を励まして立ち上がり、名残を惜しみつつ春日姫は埠頭へと向かっていった。

  • 弘子彦は西方指して、常世の国を宣伝すべく別れて行った。

  •  

  • 以上。   [前回レポート] [次回レポート]  


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