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    XANADU 『 CD-R -> DVD 』 2000/01/29 号
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◆ 今週の私的出来事
 今週は三つもぼやいてしまいますが、お付き合い下さい。
◇ +80cm -> 146%
 突然ですが、タイトルは昨夜のニュースで気になった言葉です。何かと言いま
すと、これはスキーのジャンプ競技の規定の一つです。従来身長+80cm までの長
さのスキーを使ってOKだった規定が、今シーズンから「身長の 146% 迄OK」
に変わったらしいのです。
 全く門外漢の私でも、こういう規定があるぐらいなんだからスキーの長さが結
果(飛距離)に密接な関係があることぐらいは解ります。しかしその基準がなぜ
「身長」なのでしょうか?実際今年は、比較的背の低い日本チームは不調だとか。
規定が変わっても日本選手の場合短くなったのはほんの 2,3 cm らしいのですが、
それでも記録はさっぱりだそうで。
 まあ、いわゆる『常勝チームへのバッシング』らしいのですが、何ともせこい
方法であります。特に 146 と言う数字はどこから出てきたのか、是非聞いてみ
たい。
 と、同時に大いなる矛盾に気がつきました。規定が身長を基準なのに、飛距離
は「身長の何倍」ではなく「何m」で計られることです。うーーん。元々身長な
んて本人の努力でどうにかなるものではなく、細工はできないのですから、結局
「背の低い奴はジャンプ競技では勝てない」というルールは如何なものか?他の
陸上等のトラック競技でも同様ですが、これだけ身長にこだわるなら100m走
も「身長の50倍走」とかにしませんか?それでこそ「スポーツマンシップ」と
言うものでしょう。

◇オウムバッシング
 今週、ちょっと怒っております。次もバッシングの話。
 住民票受理を拒否したり、入学手続きをしなかったりと、最近地方自治体はオ
ウムいじめをしています。何でも現場の責任者は「住民の声を受けて、超法規的
措置もやむを得ない」と言い、自治大臣も理解を示しておられるようですが、私
は全然理解不能です。日本は法治国家であり、軽々しく公務員が「超法規的措置」
などと言うのは言語道断です。これは既にオウムの問題ではなく、法治国家存続
の危機にすら聞こえるのですが、マスコミもそういう観点では捉えません。
 警察もオウムに対しては免罪符があるがごとく、別件逮捕のオンパレード。何
とも情けない職業意識です。
 以前 後藤田氏が法務大臣になった時、滞留していた死刑執行に関する承認に
法務大臣として全て判を押したそうです。それまでの法務大臣は自分の承認で死
刑囚が死ぬことが嫌だったのか意図的に滞留させていたらしく、かなりの数が
あったそうです。その件でマスコミが取材したとき、後藤田法相は「現在の法律
で決めた死刑に対し、私が理由も無く滞留させることは職務怠慢である。法の良
し悪しは別として、法治国家とはそういうものでしょう。」とおっしゃった。
「ああ、日本にも立派な政治家がいるんだなあ」と思ったものです。

◇住民投票の話
 徳島市で河口堰建設の是非について、住民投票があったのは皆さんご存知だと
思います。開票の結果、投票率は 55%弱、 90%以上の反対票を集めて民意は建設
反対となった訳ですが、投票前に「投票率が 50%以下だったら開票もしない」と
いう条件があったそうです。
 ですから建設賛成派は投票のボイコットを呼びかけたのですが、あえて賛成に
投票した方が 9300 名ほどいて、その数で 50% を超えることになりました(恐
らく賛成票が0なら投票率 50% はギリギリか下回っていたことでしょう)。
 私は建設の是非については良く解りませんが、この 9300 名の方々には頭が下
がる思いです。元々開票されれば不利だとわかっていて、それでも住民投票のボ
イコットは良くないという気持ちだったのでしょう。建設反対を勝ち取った反対
派も、投票した 9300 名の賛成派も、双方立派だったと思います。それに比べて
残りの 45% の情けないことと言ったら...

◆ CD-R
 今更 CD-R の話もないので、急遽 DVD の話に脱線します。

◇ DVD の事情
 音楽を制覇した CD に続き、映像メディアのデジタル媒体として定着する事を
狙った DVD ですが、色々と面白い事態になってきました。
 当初、映像提供側=映画配給会社等は DVD での映画提供に難色を示していま
した。「不正コピーは大丈夫なのか?」ということが払拭できなかったからです。
メディアとしては従来のビデオテープに代わり、十分な画質を提供できる DVD
ですが、技術論よりも経済的な歯止めで普及が押さえられていました。しかし
DVD 推進派は、デジタルデータの暗号化により特定の再生機器以外では画像デー
タを抽出できない仕組みを作り、映像提供側を説得しました。
 それと同時におかしなガードが作られました。映画提供会社は各国毎に映画が
封切られる日付の違いを DVD でも再現したいため、「リージョンコード」とい
う各国独自の番号を付け、それが合わない DVD 媒体を再生できないようにガー
ドしたのです。そのため輸入媒体が再生できないと言う、まあ控えめに言っても
「アホらしい」制限が付きました。

◇ DVD 再生機器
 もちろん主力は家庭用の DVD プレーヤーであり、この範囲は今までのビデオ
テープ同様何の問題もありませんでした。提供側の意向でビデオテープへのダビ
ングができないようにコピーガードがかかっているものもあれば、かかってない
のもあります。
 しかし少数派として PC 上で DVD を見る人が現れました。もちろん DVD 推進
派はこれらのニーズにも好意的であり、 PC 用の DVD ドライブや DVD 再生ソフ
トが沢山作られました。もちろんソフトには、画像データを取り出すための暗号
を復号する処理が入っています。最近ではドライブも比較的低価格になり、
SOTEC の様な低価格 PC にも搭載されています。
 ただし、ここで恩恵を受けたのは所詮 Windows 利用者だけ。元々そんなに需
要のない DVD プレーヤーを、更に少ない Linux 等の少数派 OS に移植する物好
きはいませんでした(経営的に成り立たないんでしょうね)。

◇ DVD vs ハッカー?
 で、 Linux マニアの16歳のフィンランド人は、仲間と Linux 用の DVD プ
レーヤーが作れないかと検討を始めました。まずは Windows 用の DVD 再生ソフ
トを解析して、暗号を復号する仕組みを作る必要があったのです。もちろん DVD
推進派は各 DVD 再生ソフト開発に関し、復号のための暗号キーそのものを暗号
化してプログラムに組み込むよう指示していたのですが、あるソフトはそれを怠
っていたようです(Xing 社製らしい)。
 彼はそのソフトから生の暗号キーを入手し、 DVD の復号に成功しました。一
度単なるデータとして復号できてしまえば、そのデータはどこでも再生可能とな
ります。 DVD も書き込み可能なドライブが普及間近であり、そうなると DVD の
コピーは無造作に行えます(現在 CD が CD-R で複写できるのと同じこと)。
 メーカー毎に複数の暗号キーが提供されていたのですが、最初の一つがわかっ
てしまえば他のものを知るのはそう難しくないようで、かなりの数の暗号キーが
解ってしまいました。そのため新しい DVD から最初に見つかった暗号キーを外
すだけでは問題は解決せず、ほとんどお手上げ状態になってしまいました。

◇ 訴訟問題
 もちろん DVD 推進側は彼が公開した復号ソフトの配布に異議を唱え、訴訟問
題となっています。彼も先日警察に任意同行を求められ、7時間近く質問(尋問?)
されたそうです。難しい裁判になりそうですが、結局デジタルデータになった段
階で複製不可能など、単なる夢に過ぎないというのがまたはっきりしたような気
がします。
 話は簡単で、 DVD メディアの値段を下げさえすれば解決です。コピーする手
間や生メディアの値段を考えると、正規のメディアを買った方が安い様な価格設
定さえすれば、何も問題はありません。映画提供会社側も、「一部のマニアに高
く売る」というやり方から「大勢に安く沢山提供する」やり方に切りかえるべき
なのです。
 大昔、 PC 用のソフトにはコピープロテクトと称する小細工をしていたものが
あります。しかし実際はコピープロテクトをしてあるソフトの方が、違法コピー
されることが多いという、不思議な結果を招いただけです。
  DVD の件がどう決着するかはまだ解りませんが、沢山のタイトルが安価に提
供され、みんなが簡単に楽しめるようになれば嬉しいですね。「リージョンコー
ド」を考え付く DVD 推進派の良識と先見性に期待して良いのかどうか解りませ
んが、期待してます...

◆ 次回予告など
 来週は社会現象部門にします。最近の PHS 事情なども盛り込んで見ます。

◆ お知らせ
  XANADU では随時、ご意見/ご感想/ご寄稿/リクエストを募集中です。
 お気軽に mailto:saito_makoto@hi-ho.ne.jp してください。

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  XANADU (廃刊ザナテックス)
 発行元:会社勤めのしがない職業プログラマ:齋藤 誠
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