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    XANADU 『ゲームに酔う』 2000/03/25 号
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◆ 今週の私的出来事
◇ メモリまた買いました
 先週メモリ増設の話を書きましたが、その後ドロドロの泥沼にはまりました。
どう設定しても SIMM と DIMM を両方差すと安定しないのです。参りました。結
局あきらめて今日、更に追加の DIMM を買って差しました。今はこれまでの苦労
が嘘のような快適/快速動作です...
 最初に 128MB を買わなかった反省から、今度は日頃の「お買い得」至上主義
をかなぐり捨て、 PC133 128MB CL=3 (13,500 円 高い!)を買いました。これ
であわせて 192MB なので当分「不必要メモリ増設野郎」として、名を馳せるこ
とでしょう。半年後ぐらいに W2K を使うとき、初めてメモリの効果が現れそう...
 しかし SIMM を DIMM に変えて1週間。これ容量は増えてなくても意外と効果
がありますね。今までの経験ではメモリ不足を改善すると総合性能が相当上がる
のですが、メモリの形式を変えただけでこんなに効果があるとは。やはり恐るべ
し SDRAM 。

・今回の教訓
 古い技術(SIMM)と新しい技術(DIMM)の共存は難しい
 いい加減なメモリ、最初は使えても結局ハマル
 最初から M/B を変えたらメモリも変えよう...
 (と言いつつ、今回も次の M/B をにらんだ PC133 を買っているあたり、懲り
ていないというかなんというか)

#秋葉では PC100 128MB CL=2 が 8000 円程度との噂も聞きます。さてどこまで
 下がるのかな?前回の暴落は 8,500 円あたりから持ち直して一時は2万円近
 いところまで上がりましたが、果たして今度はどうなるか?このままどんどん
下がって、 PC133 も暴落する恐れもありますが、その時はまた買ってやる!

◆ ゲームに酔う
 また予告無視の内容変更、まことに申し訳ありませんが、 NetNews にて面白
いネタで盛り上がっていましたので、それをお伝えしましょう(食事中の方いら
っしゃいましたら、ここから後は食後にゆっくりどうぞ...)。

◇ 普通の酔い方
  PS2 のゲームを見て「すげーー、ゲーセンのゲームよりすげー」と感心した
り、久しぶりに 64 のゲームをやって「 CD-ROM アクセスがないと快適!」と思
ったりと、普通のゲーム好きな人はゲームのさまざまな面に魅了されます。途中
に機械はあるにしろ、ゲーム製作側対ゲームを楽しむ側という人間対人間の戦い
の一つの形であり、さまざまな人間模様をそこに見る、そんな私であります。し
かし先日とある PS 用ゲーム(「クーロンズ・ゲート」)をプレイ中、車酔いに
も似た症状がありました...で、結局このゲームは途中で止めざるを得なかった
のです。楽しむためのゲームで、気持ち悪くなっていては本末転倒ですから。
 そう思えば以前、 80386/MSDOS 時代の PC 用フリーソフトゲームに凝ったこ
とがあるのですが、それもあまり必死にやると気持ち悪くなったことを思い出し
ました。うーーん、私はゲームに向かない体質かな?他の人はどうなんだろう?

◇ NetNews での話
 某 NewsGroup にて、今週この話題が始まりました。意外と大勢の人が「ゲー
ムをやっていて気持ち悪くなった」「頭痛がする」と証言しており、ある人など
は実際に吐くまでゲームをしてしまったそうです。
 それに一般には "3D 酔い" という俗名があり、 DOOM という有名 3D ゲーム
の名前を取って "DOOM 酔い" とも言うそうです。医学的にも DIMS(DOOM 誘因性
乗物酔い)という、もっともらしい名前があるとかないとか。
 中でも"akinago"さんという方が、上手にまとめていたのでここにも転載した
いと思います。

◇ akinago さんのまとめ
Subject: 3D酔い(まとめ)
Date: Wed, 22 Mar 2000 00:52:58 +0900
Message-ID: <8b85ta$57m$1@news.telewaynet.ad.jp>

akinagoです。
このテーマでいろいろ盛り上がっているのですが、せっかくなので技術的な内容をま
とめて投稿させていただきます。
引用元は、前出のWebpageからです(★は私の注)。
ゲームと視覚、という視点で引用しています。

中川千鶴(三菱電機株式会社先端技術総合研究所),大須賀美恵子(神戸大学大学院
自然科学研究科)さんの研究「 VE 酔い研究および関連分野における研究の現状」
より、一部抜粋。
http://mgikta.tmit.ac.jp/vrsj/restrict/Transaction/3.2/nakagawa/vesick1.
html

★VR酔い、ゲーム酔い、3D酔いといった現象を「VE酔い」(仮想環境空間:Virtual
Environments(VE))として表現し、総括論文をまとめていらっしゃいます。
 まず酔いの発生に関しては4つの器官が関与しているとしています。

A. 前庭
 内耳には前庭迷路受容器があり,その中なかに平衡受容器である三半規管と耳石器
がある.三半規管は回転角加速度を,耳石器は直線加速度を感知する.「酔い」の誘
起刺激としては,主に前庭器への入力が挙げられる(前庭機能不全者は「酔い」を生
じない).「動揺病」の実験では,コリオリ効果(Coriolis effect:身体回転中に
頭部の動きによって生じる)が多用されるが,これは半規管と耳石の両方に刺激を与
える条件である.
B. 視覚
 「酔い」の発生において,視覚の影響は大きいが,なくても発生する.逆に視覚の
みでも発生するし,視覚情報により軽減されることもある(船上での地平線,ブラン
コなど).身体と同方向への回転視野,急激な変化あるいは大画面での視運動刺激
(映画酔い),身体への動揺と視覚情報との間に不一致がある場合などで「酔い」が
発生する.また,「酔い」に関連する視覚情報として,周辺視野が重要と言われる
が,視野に影響要因が占める割合や遠方の動き(地平線など)が重要との説もある.
C. 体性感覚(主に深部知覚系)
 深部知覚系として筋肉や腱がセンサとなり身体運動を感知するが,「酔い」の発症
に必須ではなく,またこれ独自で「酔い」を引き起こすことは報告されていない.
D. 中枢
 平衡の保持と円滑な運動制御には主に小脳が関与する.前庭・平衡系の末梢末端感
覚器の情報は小脳に集められ,大脳皮質と連携を取りながら様々な反射により身体の
平衡を保ったり運動を制御している.また,大脳皮質が主に関与すると思われる心理
的要因としては,
・受容性(receptivity ): 刺激の強さの受け止め方
・適応性(adaptability ) : 感覚再調整の速さ
・保持性 (retentiveness ) : 動環境経験の「記憶」
があり,これらの能力により,「酔い」の感受性(susceptibility )が決定すると
言われるが,個人差,年齢差,性差が大きく,また再現性にばらつきがみられる.

★特にテレビゲーム環境を考えた場合、情報の多くは「視覚」に与えられ、逆に本来
運動感覚によって得られるべき「前庭感覚」や「体性感覚」への刺激は失われていま
す。小脳へも同様に末梢感覚器からの刺激は送られていません。面白いのは大脳皮質
への心理的要因で、「受容と適応と経験」と引用しています(個人差、再現性に問題
があるとしながらも)。
 また個体特性に関してもつきつめて調査がなされており、以下のような表がありま
した。

シミュレータ酔いと個体特性の関係 *改編(正当性については検証を要するものも
含む)
【特性】個体特性:シミュレータ酔いとの関係
・属性
年齢:感受性が最も高いのは2-12才,これ以後減少.経験が関係
性別:女性は感受性が高い.キャラクター的要因が影響か
人種:アジア人種は視覚要素を含む「酔い」に対する感受性が高い.
   環境要因か脳内カテコールアミン放出の違いが関与か
・性格、行動
適応:シミュレータ経験が増加すれば酔いは減少する
flicker 融合周波数のしきい値:夜は減少.非常に個体差が大きい
心的回転(mental rotation)能力:この能力が高いと宇宙酔いが軽い
知覚スタイル:場依存性との関係についての調査はあるが,結論はまだ
・状態
集中レベル:集中レベルが高いほど症状は軽い
姿勢の安定性:姿勢が安定していると酔いにくい
実務経験:実務経験があるパイロットは酔いやすい

★これらのデータからゲーム制作においてFlicker Rateなどは具体的に対応が可能な
要素といえますね。また「酔いたくない体験者」は参考になる情報もありますね。
 とにもかくにも「視覚」との関係を引用させていただくと…

 VEの呈示方法は映像が中心で,他の感覚情報はより没入感を高めるために映像に追
随するものとして与えられるのが一般的である(3次元音響やモーション,力覚
フィードバックなど).しかし,映像によるVEは,立体視や長時間のディスプレイ注
視, CGの品質によって眼精疲労や近視化,中枢での不快感(頭痛,めまい),酔い
などを生じる原因ともなっている.また,呈示する感覚情報間の整合性や個々の品質
についても問題は多く,生体にとっての「違和感」→「ミスマッチ」→「不快・酔
い」につながる場合もある.
<VE酔いとの関連>
・広範囲の視野に情報を与える動きのある映像はvection(自己運動知覚:自分が動
いているような錯覚)を生じ,平衡の感覚に影響する.
・広範囲の視野に情報を与える動きのある映像は平衡感覚に影響し,映像による視覚
情報と体性感覚情報のミスマッチにより不快・酔いを生じることがある.
・実空間でのある物体(例えば椅子など)の大きさと映像で呈示されたその物体の大
きさとの比率が著しく異なる映像は違和感や酔いを生じる

★「酔いの原因」は「違和感」であり、インターネットニュースグループ
「fj.rec.games.video.home.playstation2」などでも
・上下動がきもちわるい(最も多い。具体的なタイトル名も多数あり)
・相当な姿勢の変化が起きる運動をしているのに体性感覚を感じていないから?
・深夜に長時間プレイしている
・「普段、絶対にこんな移動は体験しない」ようなゲームなら大丈夫
・二日酔いに似た頭痛がする
・DOOMタイプは酔うが、バイオハザードタイプ(キャラクタの背中がみえる)は酔わ
ない
・スクリーンセイバーの3D迷路(制御できない映像)でも酔うことがある
・"DOOM酔い"、DIMS(DOOM誘因性乗物酔い;医学用語)という言葉があるらしい
…といった情報が寄せられていました。いずれも個人的な発言からのほぼ引用です
が、論文を裏付けるような内容ですね。
 また多くの発言は「上下動」と「視野角」「常識から少しずれた違和感」に関連が
ある、という自己認識があったのが興味深いです。また「酔いの程度」として『嘔
吐』まで体験した人は1名存在しました(前出の論文中で引用されている「不快度指
数と動揺病(乗り物酔い)の発生時点」では1〜10段階の主観評価ですが、これは最
大。ちなみに頭痛は3〜4です)。

以上、簡単にまとめてみました。

◇ おわりに
 「気持ち悪くなるゲームがある」という単純な話でも、掘り進めていくと宇宙
酔いまで出てきて、学術的にも研究されているのだというのは結構面白い話です。
確かに宇宙酔いの話は克服していかないと、人類が宇宙に進出できないという切
実な問題を控えていますが、それより私個人は各メーカーに「酔いにくいゲーム」
を作って欲しいなあ。せめて業界標準で「ゲロ吐き度レベル表示」とか「何分以
上プレイすると嘔吐の可能性がある」とか「健康のため吸いすぎに注意しましょ
う(?)」とか表記するのはどうでしょうか?

◆ 次回予告など
 すみません。予告やめます。また面白そうなネタを拾うと、話が変わりそうな
ので...

◆ お知らせ
  XANADU では随時、ご意見/ご感想/ご寄稿/リクエストを募集中です。
 お気軽に mailto:saito_makoto@hi-ho.ne.jp してください。

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  XANADU (廃刊ザナテックス)
 発行元:会社勤めのしがない職業プログラマ:齋藤 誠
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