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   XANADU 『 Duron の鼓動 』 2000/09/10 号
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  XANADU 読者の皆さん、おはようございます。今週は友人関係から面白いタレ
コミ(?)がありましたので、それに題材を得て Duron の話をしようと思います。

◆ 今週の出来事
◇ ISDN フレッツ
 実に好調に加入者数を増やしている様です。今更回線速度で勝負できない以上、
常時接続という別の魅力で打ち出してきたというべきでしょうね。少々遅くても、
常時接続なら苦情が少ないというのを、 i モードから学んだか? -> NTT 殿

  http://www.ntt-east.co.jp/flets/

◇ W2K SP1 登場
 やっと最初の SP1 が出ました。これで少しは安心か...仕事では W2K プリイ
ンストールの versapro(NEC の企業向け notePC)を使っていますが、やはり以前
は再立ち上げが必要だったことも、すんなり認識する W2K は notePC にはぴっ
たりですね。出張先でもネットワークに組み込んで使うことがあるのですが、
「コンピュータ名」を変更するときは再起動を要求される...残念!

  http://www.microsoft.com/japan/windows2000/downloads/recommended/sp1/

◇ VAIO Crusoe 発表
  CPU に Crusoe を使った新型 VAIO note がでます。大きめバッテリ(L) で1
1時間使えるとか...本当なら欲しい。

  http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCG-C1VJ/

 それにしても VAIO の物不足は深刻な様です。「 VAIO があるうちはそれが売
れて、すぐ売り切れると次に NEC が売れて...」という雰囲気らしいです。
SONY も製品供給に問題があって売れないのは辛いでしょうが、「 VAIO がない
から 98NX で我慢する」というのも辛い話...頑張れ! NEC!


◆ 特集 Duron の鼓動
 今週は友人Mから以下の体験談をもらいました。これを紹介してから、若干関
連 web ページの紹介をします。なお文中の※は私の加筆です。

◇ M氏の体験談
----- ここから -----

 とある理由で3台目のマシン、それも CPU だけで良いからできるだけ高速な
マシンの必要性が生じまして、今が旬の AMD Duron のオーバークロックにチャ
レンジしてみました。

※ Duron は AMD の Athlon の廉価版 CPU
 詳しくは以下の URL にて...
  http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20000619/amd.htm

 既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、 SocketA の Athron と Duron
は CPU 表面のパターンをちょいと鉛筆でコリコリしてやるだけでクロック倍率
を可変にすることができます。倍率可変対応のマザーボードを使えば、 FSB で
のクロックアップが難しかった Athron 系 CPU が、かつての Socket7 と同様の
方法でクロックアップできてしまうわけです。

※「コリコリする」
 詳しいことは web ページ等でお調べ下さい。ただし以下の URL は参考になる
と思います。
  http://tom.g-micro.co.jp/cpu/00q2/000623/

 雑誌などの情報では、Duron 600MHzなら800MHzはまず大丈夫、運が良ければ
900MHzオーバーも夢ではない様です。Duronの性能はAthronのおおよそ1割落ち
ですから、運良く900MHzで動けば二万円台半ばのAthron 800MHzとほぼ同じ性能
が1万円以下で手に入ることになります。

 で、さっそくチャレンジ。MBのBIOSで少々トラブルがありました(*)が、600MHz
で動作確認後、いきなり100MHz単位でクロックアップしていきます。

  700 、 800MHz はなんの問題も無くクリアー。ここからは 50MHz 単位で上げ、
コア電圧も少しづつ上げていきます( BIOS がバグ持ちのため、起動不能になる
のがちょっと怖い)。 850 、 900 と上げ動作することを確認。電圧は標準+0.1V
の 1.7V 。これでとりあえず目標は達成です。あ〜よかった。

 これ以上は私的には既にオプション。とはいえ、私のデュロ吉君がいったいど
こまでのクロックに耐えられるのか、ここでやめるわけには行きません。

 950MHz、1.75Vは無事クリアー。そして、夢の1000MHz=1GHzは・・・
まったく何事も無かったかのようにクリアー・・・お、おい、いいのか?たかだ
か 8000 円の CPU が 1GHz で動いて。 1GHz の CPU と言えば、 Athron でも6
万円弱、 Pentium!!!に至っては、店頭でもほとんど見ないぞ。これはもう、笑
うしかない、ってことでニヤニヤしっぱなしの私でした。

 この時のコア電圧は 1.8V でしたが、その後 1.75V まで落とし、 FSB も 2MHz
アップの 102MHz*10 の 1020MHz で非常に安定して動作しています。 CPU を酷使
する MPEG エンコードを一晩中やらせてみたりもしましたが、まったくのノー
トラブル。

 ちなみにこの電圧、及びクロックは「これ以下、以上では動かない」数値では
なく、「これ以下、以上を試していない」だけの暫定的な物です。 BIOS のバグ
が取れ次第、更なる限界にチャレンジする予定ですが、経験から言ってあと+50MHz
はまず確実、うまくすれば 1.1GHz オーバーまで行けるかもしれません。

 なんにせよ、まだしばらくは楽しめそうです。

(*)ABIT KT7はBIOSにバグがあり、Duronとの相性が良くないようです。
アップグレードすることで動作するようになりますが、そのためには
きちんと動作するCPU、つまりはAthronが必要となる(笑)うえ、CMOS
をクリアするとDuronでは再び起ち上がらなくなるバグが残っています。
同様のオーバークロックを目指す人は注意してください。

----- ここまで -----

◇ クロックアップということ
 「デュロ吉」君の災難(?)は、まだまだ続きそうな様子ですが、この「クロッ
クアップ」という裏技について、簡単に説明しておきます。
 実際には「無理なクロックアップ」と「メーカーが販売戦略上行っているデチ
ューン(意図的に悪くする)を元に戻すクロックアップ」の2種類があります。
  Duron の場合は 600/650/700 という3つのクロックを持っていますので、
650 や 600 は 700 のデチューン版だと予想されます。 PC メーカー製ならそれ
でOKなのですが、個人で CPU と M/B を組み合わせる場合は、デチューンの仕
組み(CPU 側で答えるクロック通りに M/B がクロックを供給する)を外すことが
可能です。 M/B メーカーは売れる製品作りを心がけていますので、こういう仕
組みが外せるようになっている物が多いわけです。まあメーカー製 PC ではでき
ない場合が多いので、こういうことも自作 PC の醍醐味かも知れません。
 しかし CPU への電圧を規格以上に上げる 「無理なクロックアップ」は CPU
自体の寿命を縮めたり、 CPU 側の誤動作等により HDD の内容を破壊したりと、
場合によっては壊滅的な事態になることもあります。 XANADU としてはクロック
アップを奨励することはありませんが、「デチューンを解除するのは面白いので
は」という立場です。ご自分のリスクでクロックアップを楽しんで下さいね。

#ちなみに有名(?)なデチューンに Celeron の FSB 66MHz 固定がありますが、
 私が今この原稿を書いているマシンは Celeron 300A で 450MHz 動作
 (FSB100MHz) です。今回の Duron の件も、同様に「 600 を 800 で使うのが
 常識」のチップになりそうです...

◇ クロックアップの問題点
 さて CPU メーカーとしては、戦略上行っているデチューンを見破られてしま
うと、高クロックの CPU が売れなくなり、収益が上がらないので低クロックの
値段を上げたり、デチューンの方法を厳しくしたりすることになります。 Intel
は後者の方法を取ってきました。
 が、 CPU 需要はやはりメーカー製 PC が中心であり、 CPU だけを個人が買う
市場は小さな物なので、あまり気にしない可能性はあります。またあまり個人に
とってはつまらないガードを行うと、同業他社にシェアを奪われるという大きな
問題が出てきます。個人のマニアへの販売は、量としてはあまり大きくないので
すが、彼らが好む CPU はメーカー製 PC でも売れる傾向にあります。まあ各企
業の PC 購入担当者は、自宅ではマニアである可能性が高いわけですし、 web
ページ等でも「 Duron は優秀」という記載が増えれば、一般的にも人気が出る
のは当然です。
  Intel も AMD の動向を見ながら Celeron の FSB を 100MHz にする様ですし、
やはり自由競争は消費者のためになりますね...

◇ おわりに
 やはりキーワードは「お買い得」でしょう。デチューン撤回で本来の速度を得
るのが、自作 PC での王道とも言えるかも知れません。どこまでブレイクするか
わからない Duron ですが、その鼓動は確かに聞こえてきます。そして、 Intel
は1社独裁体制を維持できるのか...今年も面白くなってきました。

◆ お知らせ
  XANADU では随時、ご意見/ご感想/ご寄稿/リクエストを募集中です。
 お気軽に mailto:saito_makoto@hi-ho.ne.jp してください。

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  XANADU (廃刊ザナテックス)
 発行元:会社勤めのしがない職業プログラマ:齋藤 誠
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