放虫問題について                       2010.6.6改訂
外国産のクワガタやカブトムシを日本の野山に放つ「放虫」が問題になっています。実際に日本の山で外国産のオオヒラタクワガタや混血らしきクワガタが採れた報告もあります。ところで、「放虫」は何故いけないのでしょうか?
実は昆虫たちは生活環境に順応しながら何百年、何千年と進化してきました。そして進化の過程で少々の天変地異に対応できるようになりました。東京の森に住むヒラタクワガタは、外気が摂氏零度を切っても生き残れる仕組みになっていますし、何十年かに一度の大寒波が来ても、一部は生き残れる遺伝子を持っているそうです。つまり、種の保存のため、通常の適応温度プラスアルファの許容範囲をもっているのだそうです。
ところが、外国産オオヒラタはどうでしょうか?温暖化の影響もあり、通常の冬ですと越冬できるかもしれません。しかし、大寒波が来たらどうでしょうか?一気に彼らのキャパシティを超え、死滅する可能性が高いのです。もし10年後、純粋な日本のヒラタクワガタが消え、混血にとって代わられていたら、日本からヒラタクワガタは姿を消してしまう可能性があるのです。混血は日本の純粋種ほど耐寒能力がないといわれています。


「放虫」の
原因

「放虫」は何故起きてしまうのでしょうか?

@故意に放つ。
この場合、2つの理由が考えられます。ひとつは、飼育に飽きて飼育を止める、または、初夏に購入した虫が秋に弱ってきた・・などの、「可哀想だから逃がしてあげよう」という理由による放虫。もうひとつは、近所の山で繁殖するかな?面白そうだから逃がしてみよう・・という愉快犯的放虫者。

A逃げられてしまう。
ケースのロックが甘く脱走される。私も何度か経験しました。しかし、屋内で飼育している場合、遠くへは逃げないはずです。大概はタンスや冷蔵庫の裏に潜んでいます。夜中にクワガタが動く音を頼りに捜索しましょう。

B廃棄物から。
産卵セットで使用済みのマット、廃材に卵、幼虫が残っていた場合、捨てる場所の環境によっては羽化する可能性があります。これも立派な放虫です。

外国産の
輸入
について

私も外国産のクワガタを、飼育しています。理由は大きくてカッコイイからです。輸入が解禁されるまでは、それらは非常に高価で、私達庶民に手が出る虫ではありませんでした。本当のマニアのみに許された贅沢でした。
ところが、輸入解禁で、多くの虫が安価で手に入るようになりました。普通のスーパーで「ダイオウヒラタ」や「アトラスオオカブト」が販売されています。しかし、スーパーで買い物をする人、または販売者が、「正しい知識」を持って飼育、説明しているとは限りません。販売に際して注意書きを添付するなどの対策が必要ではないでしょうか?
それでは何故、輸入が解禁になったのでしょうか?「ある個人の方」が、お役所に「輸入を解禁する要望書」を提出したからです。そして、クワガタが農作物に害を与えないと認定されたからです。間違っても日本では繁殖・交雑は出来ないと断定されたからではありません。お役所は生態系、越冬能力まで考えて認可したわけではないのです。

もし、真剣に日本の固有種を守るなら、再び輸入を規制するのもひとつの方法かもしれません。しかし、「表」があれば「裏」があります。密輸が横行するのは必然です。
「流通禁止」「飼育禁止」となった場合も同様です。裏取り引きと詐欺が問題化しそうです。そして最も恐ろしいのは「飼育禁止」による、現在日本で飼育されている外国産クワガタたちの放虫です。現在日本に輸入、飼育されているクワガタが全て野に放たれた場合、起こりうる事態は明白です。

その他の
外来種

トキは?

ブラックバスの放流は歴史を辿れば国の承認で放流が始まったそうです。さらに心無い業者が日本の湖に大量に放流したため大繁殖し、在来種を絶滅の危機に追いやっています。
2005年ブラックバスは、「特定外来生物」の指定リストに加えられました!今後、「輸入」「放流」は禁止される模様です。

植物の外来種問題は、本来、最も深刻かもしれません。花屋さんで販売されている花の殆どは外国産です。さらに彼らは花粉を空中散布します。日本に近縁種があった場合、交雑する可能性は否定できません。最近、道端に咲く綺麗なオレンジ色の花をみかけます。子供の頃は無かった花ですよね!
同様なことは海の中でも起きています。国内外を行き来する船舶による生物運搬です。船舶は、空荷の時、船を安定させるため、バラスト水(海水)を積載し、荷物を積むとこれを放水します。当然、「バラスト水を積んだ港」と「放水した港」は異なりますので、バラスト水の中のプランクトンも異国へ放たれる事になります。現実に、ヒトデの大発生などの被害が出ているそうです。ちなみに、エビ、カニ、ヒトデ、貝などの幼生もプランクトンに含まれます。
ところで、佐渡島で行われているトキの試験放鳥はいかがなものでしょうか?日本のトキは絶滅しました。これは明らかに中国から運んできた外来種です。日本のクワガタが滅びたからといって朝鮮半島からビノデュロサス(日本のオオクワガタと同じ亜種)を持ってくるでしょうか?何故オオカミは実験しないのでしょうか?トキは国鳥だから?税金の無駄使いです。是非、仕分けしていただきたいですね。
先日、訪れた新潟県の田園地帯ではトキの餌である蛙の声が殆ど聞こえませんでした。田は農薬で消毒され、タガメやゲンゴロウも姿を消しています。つまり、トキが生息できる環境は既に崩壊しているのです。

絶滅問題
「クワガタ採り名人」に言わせると、国産オオクワガタの数は極端に減ったそうです。乱獲が原因です。オオクワガタの生態が解ってきたことによる乱獲です。
ホタルや魚の場合、絶滅が危惧されると、人工飼育個体の放流により、再繁殖を狙います。それでは、国産オオクワガタはどうでしょうか?今のところ聞いたことがありませんが、近い将来、行われる可能性も否定できません。その時は、○○産などというラベルは無意味になるでしょうね・・。

昆虫採集
子供の頃、毎日のように虫を採りに近所を廻っては「虫採らせてください!」と大声で叫び、捕虫網を持って他人の家の庭に入ったものでした。ところが、大人の採集は、こうはいきません。捕虫網ではなく、ナタや、斧を持って山に向かいクワガタの発生木を切り刻みます。そうです。材採集です。
材採集はクワガタが産卵した倒木や立ち枯れ木を破壊して、幼虫や未だ外に出ていない成虫を捕獲する方法です。「私は全部は刻まない。来年も採れるように残しておく」という「偽善者」が昆虫雑誌に登場しますが、自分だけが採集していると思っているのでしょうか?80パーセント残すと言っても、同じ木に数人来たら、発生木は無くなってしまいます。材採集者さんは、この程度の計算も出来ないのでしょうか?
こんな採集者が「放虫反対!固有種を守ろう!放虫するくらいなら殺せ」などと叫んでも、自分の都合しか考えないエゴイストとしか思えません。

購入した
クワガタは
本物ですか?

私は、「採集した場所に、その子孫を放虫する事」は賛成です。家の裏山で採ったクワガタの子孫を翌年、同じ裏山へ返す事は問題ないと思っています。しかし、最近、必ずしも安全ではない場合があるみたいです。
例えば、山梨県で採集した「オオクワガタ♀」が、たまたま放虫された外国産と交尾していた場合、購入者は疑念を抱かず、「WILD」として販売、ブリードを行うはずです。幼虫が沢山採れ、飼育限界を超えた場合も、純血種との思いで、山梨県に放虫するかもしれませんし、オークションなどで販売するかもしれません。つまり、「○○産クワガタ」の信憑性にも疑惑が広がるのです。

啓蒙活動
正直、私は外国産クワガタが輸入禁止になってほしくありません。飼育者、販売者が率先して汚染を防ぐための「行動」を起こすべきだと感じます。例えば、販売時の注意書添付、産地の明記などです。外国産を販売するときは、注意書を必ず添付し、販売員が口頭で呼びかけることも重要だと思います。

最初にありきは「禁止」ではなく、「啓蒙活動」だと思います。

近日・・・ペットショップ、ディスカウントストアなどに「ダイオウヒラタ」「アトラスオオカブト」「ギラファノコギリ」などの生体が並び始めました。しかし、残念なことに「放虫禁止」などのポスターや「注意書き」を張り出しているショップはありません。専門店では浸透してきた啓蒙活動ですが、やはり「一般のお店」には無縁なようです。このまま放虫は加速してしまうのでしょうか?


材採集に対する追記
確かに、オオクワガタの生態が知られる以前はオオクワガタ採集は困難だったと思われます。しかし生態が解明されてきた今日では、材採集で多くのオオクワガタが捕獲されるようになりました。今まではそれでよかったのかもしれません。採集者は簡単に大量のオオクワガタが採れるので歓喜したことでしょう。しかし、もうそういう時代は終わったのではないでしょうか?外国産のクワガタが放虫されることで、心配される色々な事態!!!!クワガタ愛好家が団結して、日本のクワガタを保護しなければ他に誰が保護してくれるのでしょうか?

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