国産カブトムシの飼育 2004.12.6

カブトムシについて
分布
南は九州から、北は北海道まで分布。以前は北海道には生息していませんでしたが、放虫と地球温暖化により、繁殖しました。

ライフサイクル
一年サイクルで繁殖します。メスは夏から晩夏にかけて産卵します。孵化した幼虫は一令、二令、三令と脱皮、加令します。普通は三令で越冬し、春に蛹になり、初夏に成虫になります。羽化した成虫は夏に交尾、産卵し、遅くとも晩秋には天国へ昇ります。
成虫の寿命は長くて半年程度です。

生態
成虫は多くのクワガタムシと同様、広葉樹の樹液を摂取します。基本的には夜行性ですが、日中、クヌギの樹液などに張り付いていることがあります。クワガタよりも飛行性が強く、夜、灯火などで見かけることも珍しくありません。
幼虫は腐葉土などを摂取して成長します。腐葉土は広葉樹の落ち葉が積もってできた層が重なり、バクテリアにより分解されて、栄養豊富な「土」になった部分です。もちろん倒木の下などの分解の進んだエリアにも生息しています。

知っておきたい
カブトムシは夜行性です。昼間はマットに潜っていることが多いのですが、夜は活発に行動します。特に、産卵期を迎えると「ブンブン」と大きな羽音とともに、「ガチャガチャ」と暴れます。はっきり言ってウルサイです。初めて飼育する方は、きっとビックリすると思います。
また、大食漢のカブトムシは排泄物の量も多いようです。ゼリーを撒き散らすことも多く、飼育ケースは臭います。クワガタよりも「臭い」ことは覚悟してください。



成虫の飼育

用意するもの
飼育ケース
活発で行動的なカブトムシにはクワガタよりもやや大きめの飼育ケースが必要です。1ペアを飼育する場合は中ケース以上の環境が必要です。2ペア以上を同じケースで飼育する場合は大ケースまたはそれ以上の底面積のあるケースを選択してください。
写真は左が中ケース、右が大ケースです。
衣料用のコンテナボックスは意外と便利です。

マット
保湿、隠れ場所の意味でもマットは重要です。朽木粉砕マットもしくは、カブトムシ用のマットを用意しましょう。もちろんお庭の土でもOKですが、雑菌、雑虫、薬品を排除するのは困難かもしれません。日中、マットに潜ることが多いカブトムシの必需品です。
産卵用には専用のマットを使いましょう!カブトムシはクワガタよりも「より分解された」マットを好みます。肌色のマットは避け、広葉樹100%の茶色い、発酵マットを使いましょう。

止まり木
転倒死防止用

マットの上に転倒死防止用の木片を入れてあげましょう。カブトムシは転倒すると、自分で起き上がることが苦手です。手脚を回してつかまるものを探しますが、無防備な状態で、他の個体に襲われる危険性もあります。脚場を確保することは、個体のストレスを緩和する意味でも重要です。


市販の昆虫ゼリーがよいでしょう。カブトムシはクワガタムシと比べると、とても大食漢です。1ケースで複数の個体を飼育するときは、見合った数のゼリーを入れてあげましょう。


実際の飼育
セット
ケースにマットを10センチほどの厚さに敷きます。マットはあらかじめ、加湿しておきます。湿り具合は、「手で握って崩れない程度」が目安ですが、「手で握って水が滲みださない」程度までは問題ありません。産卵を期待しているのであれば、一般的に言う「カブトマット」といわれるマットを使用すると良いでしょう。お値段は7リットルで1000円から1500円程度です。
転倒防止用の木を投入します。マットに埋め込んでも、埋め込まなくてもOKです。
餌は飼育個体数に合った数を与えてください。餌が少ないと喧嘩の原因になります。
カブトムシは闘争好きです。できることなら、1ペア1ケースの飼育が好ましいと思いますが、なかなか難しいですよね!

管理
ケースの置き場所は直射日光の当たらない、暗く、涼しい場所が適しています。
日々の管理は簡単です。餌の交換と、マットの加湿だけです。餌が無くなっていたら交換しましょう。マットの表面が乾燥していたら、霧吹きなどで、加湿してください。マットは汚れてきたら、新しいマットに交換しましょう。このとき、産卵している可能性がある場合は、マットに卵が混じってないかどうか調べてから捨ててください。

闘争
カブトムシのオスは闘争本能が旺盛です。複数のオスを同じケースで飼育するときは、出来るだけ大きなケースを選びましょう!
以前、2日程絶食させた後、ゼリーを与えると、狂ったように闘争しました。複数のゼリーがあるのに数時間、もつれ合ったままでした。クワガタのように絶対的な武器は持っていませんが、長時間争うと体に穴が開くこともあります。穴が開いたカブトは長くは生きられません。
餌を切らさないことも重要です。

産卵
カブトムシをペアで飼育していると、夏から晩夏にかけて産卵します。メスははマットの中に卵をばらまきます。メスがマットに潜って、なかなか外に出てこなくなったら、産卵している可能性が高いでしょう。産卵が始まったら、オスを他のケースに移してあげるとメスの産卵数がアップします。オスは交尾意欲が旺盛で、メスの産卵を邪魔することが多いからです。7月頃から飼育を始めた場合、8月には既に産卵しているはずです。ケースをひっくり返してみましょう。幼虫、卵が確認できたら、成虫を別のケースに移してください。同じケースに入れておくと、幼虫を潰したり、最悪の場合は捕食してしまいます。産卵を終えたメスは秋を待たずに天に召します。オスもあとを追い、残された幼虫がバトンを受けます。



幼虫の飼育

用意するもの
ケース
幼虫を飼育するケースも成虫飼育用と同じものでOKです。クワガタと違い、複数を同じケースで飼育できますが、ケースの大きさに応じた飼育数に抑えましょう。

マット
カブトムシ幼虫用のマットが最良ですが、クヌギ粉砕マットや腐葉土でも飼育可能です。
クヌギ粉砕マットは乾燥状態で販売されることが多いので、必ず加湿して使用しましょう。目安は「強く握って水が滲みださない」程度です。
腐葉土は園芸用のものが使用可能ですが、農薬を使っていない、広葉樹100%のものを使いましょう。カブトムシ飼育に適した製品はなかなか見つかりません。
カブトムシ用のマット、いわゆる「カブトマット」はやや高価ですが、幼虫の成長も著しく良いようです。クワガタ用のマットが「茶色」なら、こちらは「こげ茶色」から「黒色」です。最近ではディスカウントストアでも手に入るみたいです。
写真はカブトマットです。

クワガタの幼虫飼育に使用した廃マットも最適です。クワガタの幼虫に比べ、より分解の進んだマットを好むカブトムシの幼虫は、菌糸ビンのカスも喜んで食べるそうです。我が家では、クワガタの産卵セットの廃材をカブトムシの餌として、ストックしています。つまり、タダというわけです。


実際の飼育
セット
ケースに加湿したマットを7−8分目まで入れます。クワガタ飼育のように、固く詰める必要はありません。軽く押さえる程度で十分です。あとは幼虫を入れて、ハイ!OK!簡単ですね!
カブトムシの幼虫は複数を同じケースで飼育できますが、単独飼育する方法もあります。ミニケースで1頭ずつ飼育することも可能です。私は以前、仕切りを入れたミニケースで、オス2頭無事羽化させたことがあります。
飼育数の目安
それでは、一般的に販売されている中ケースで何頭の幼虫を飼育できるのでしょうか?1令、2令の幼虫なら、10頭程度の飼育が可能でしょうが、3令幼虫にもなると、かなり大きくなります。最大で4頭、できれば3頭以下に抑えたほうが、安心です。
同じく大ケース場合も5頭以下が好ましいでしょう。尚、大量に飼育するときは、底面積の大きいコンテナケースが有効だと思います。

管理
置き場所は成虫と同様、直射日光の当たらない、暗く、静かな場所が適しています。寒さにも強いので、屋外で管理しても大丈夫です。普段のメンテナンスは乾燥に注意するだけです。表面が乾燥していたら、霧吹きをしましょう。

マット交換
幼虫はマットを食べて成長します。マットにフンが目立ってくるか、マットの減りが激しいときは、マットを交換しましょう。
マット交換のタイミングは、ケースの容量と飼育数によって変わります。大きなケースで少数の飼育をしている場合は交換サイクルが長くなりますし、逆の場合は短くなります。2ヶ月が大体の目安です。冬季は活動が鈍くなり、餌の摂取量も減りますので、交換サイクルは長くなります。しかし、室内飼育の場合は冬でも餌をよく食べますので、気をつけてください。


春も半ばになると、幼虫は細長い卵型の蛹室を作ります。蛹室は縦に長く作られ、表面はフンで塗り固められています。蛹室の中で、前蛹、そして蛹へと変態します。左の写真は幼虫が作った蛹室です。
カブトムシの幼虫は光を嫌います。蛹室は普通、ケースの表面には作られません。蛹化、羽化を観察するためには、飼育ケースを真っ暗な場所で管理するか、黒い紙で覆っておくとよいでしょう。運がよければ飼育ケースの表面に蛹室を作ってくれるかもしれません。

尚、この時期にマット交換をすると、蛹室を壊してしまう可能性が高く、危険です。安全のため、最後のマット交換は3月中に済ませておきましょう。もし、間違って蛹を掘り出してしまった場合も慌てることはありません。マットに指で円柱状の丈夫な穴を掘ります。その中に蛹をそっと入れるだけです。本物の蛹室ではありませんので、羽化不全の危険性は高まりますが・・・。
羽化
蛹化後、約1ヶ月で羽化します。羽化直後は羽が白く、デリケートですが、数日で黒く固まります。数週間すると自分で蛹室から出てきます。蛹室から、自力で這い出してきた個体はすぐに餌を食べます。必ず、餌を与えてください。

写真の個体は羽化後2日目の♂です。蛹室の上部を取っていましたので、這い出してきました。


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