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掃除がきらい


 小学校時代からずっと、自分では掃除がとても好きだと思っていた。

 母が働いていたからいつも家の中はちらかっていた。それがとても嫌で、気が付いたら掃除をしていた記憶がある。学校から帰ってきたら先ず家の周りの道と庭を松葉かきで掃いていた。それを仕事から帰ってきた母が誉めてくれるのが嬉しかった。

とにかく女の子でもあるし、掃除洗濯は“好きだと思って”やっていた。結婚してからもその気持ちは続いていた、と思う。

ある時私はいつものように家の中を掃除機をかけていた。

いつものようにイライラしながら。

 そしたら、当時小学校の3年か4年だった娘が突然言った。「私は掃除機の音と掃除が大嫌いやねん!だって、お母さんは掃除機をかけてる時はいっつも怒ってるやんか!」と言った。そう言う娘自身は自分の部屋は、とってもきれいに掃除をしていて、いつも奇麗だった。

 その言葉の前に私がどういうことを言ったのか、それまでの脈絡は全部忘れてしまったが、でもその言葉を娘に言われた途端に私はハッとして、いっぺんに理解した。

 私はずっと掃除が嫌いだったんだ!好きで「掃除、掃除」と必死になってやって来たわけじゃないんだ!ただ、母に認めてもらいたいだけで必死になってやって来たに過ぎないんだ、ということが。

 そして、もう一つ思い出した事がある。私達が小さい頃に母が家の中を掃除するためにホウキで畳を掃いていた時のことを。母はホウキで掃除をしている時にはいつも私達を怒鳴り散らしながら掃いていた。

 「私が、掃く鼻先に行くなって言ってるじゃないか!本当に言うことを聞かない子ばっかりだ!」と、いつも怒鳴りながら掃除をしていた。だから、私たちは母が掃除をしていた時は「いつも怒られていた」のである。

母もまた決っして言わないけれど、掃除が嫌いだったのだ!ということが娘の言葉でピっ!と一瞬の内にひらめいた。

 ああ、私は母と全く同じ事を“無意識に”受け継いでやっていたに過ぎなかったのだ、と思い当たった。

 母はホウキで掃除をしながら子ども達を怒っていたし、私は掃除機で掃除をしながら子ども達を怒鳴っていたのだ。

無意識に繋がって、代々受け継がれていくもの。

でも、娘の一言で気が付く事が出来た。ありがとう。

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