逍遥歌

第12番「三年(みとせ)の夢を 傾けて 新しき世を 描くかな」


逍遥歌

1 花咲き薫る 春の日は げに花のごと 笑まいして
若き生命(いのち)を 噴きあぐる 泉の歌を 聞くべけれ

2 されど惜しめる 春の日の 今日を限りと 行く夜半(よわ)は
久遠(くおん)の星の またたきに 流転(るてん)の底を探るなり

3 人賢(さか)しらに あげつろう 混濁の世を 憎めども
理想に疼(うず)く 我が胸の 燃ゆる想いを 如何にせん

4 ああ慨世(がいせい)の 眉あげて 眸(ひとみ)を焦がす 翹望(ぎょうぼう)の
真青(まさお)の空の果てにこそ 革命の旗 翻がえれ

5 汐満つ狩野の 岸に立ち 遠き若葉の森を恋ひ
声はるかに 友呼べば 風も緑に 立ち初めぬ

6 雲白く行く 香稜の 草のいきれに 身を投げて
幻想の昼 早咲きの 桔梗の花 哀しかり

7 函嶺(かんれい)淡く たそがるる 灯(ひ)ともし頃は 寂しさに
街行く人に 入り混じり 優しき眉目(みめ)を 求めけり

8 今宵さやかに 月照れば 友よ真理に 渇(かつ)えつつ
熱き心に 語らわん この人間の 営みを

9 鳥啼き交わす 昧爽(まいそう)の 露けき野辺に 佇みて
自然の曲に うなづけば 不二(ふじ)紫に 明け初むる

10 初冬の山は しずもりて 波止場に船も 微瞳(まどろ)めり
青き柑子(こうじ)を たまひたる 白き手の人 忘れめや

11 遠鳴りひびく 砂に座し 駿河の海に 落つる日の
壮麗の死に 憧れど 紅の頬 うたがわず

12 ああはろばろと 海原は 世界に対し 展(ひら)けたり
三年(みとせ)の夢を 傾けて 新しき世を 描くかな

(作詞 青木 久 作曲 中村 喜夫)


戻る