いまだにクリスマスのような 新宿の夜
おお切なやポッポ−500円分の切符を下せえ
(中略)
お人好しの酔っぱらい こういう時に限ってしらふ
結局その日の終わりに取り残されたのは 朝からポカンと口を開けてテレビを見ていたぼくぐらいのもの
乾杯 取り残されたぼくに 乾杯 忘れてしまうしか無いその日の終わりに
夜が深みにはまり込み 罵声だけが生き延びている
誰かさんが誰かさんの鼻を切り落とす 鼻は床の上で鼻しいと言って泣く
ぼくは戸を横に開けて表へ出たんだ するとそこには鼻も耳も口も無い綺麗な人間たちが
おお切なやポッポ−500円分の切符を下せえ
(作詞・作曲 友部 正人)
乾杯
一日中誰かさんの小便の音でも聞かされてるような やり切れない毎日
北風は狼の尻尾を生やし ああ それそれって ぼくのあごを抉る
誰かが気まぐれにコウモリ傘を開いたように 夜は突然やってきて
君はスカ−トをまくったり靴下をずらしたり
やり場の無かったヒュ−マニズムが 今やっと電気屋の店先で花開く
(中略)
ついさっきは駅で腹を抑えて倒れていた労務者には触ろうともしなかったくせに
(中略)
乾杯 身元引受人の無いぼくの悲しみに 乾杯 今度会ったときにはもっともっと凶暴でありますように
おでことおでこをこづき合って 飲んべえさん達 賑やかに議論に花を咲かせている
ぼくは一人澄まし顔 コップに映ったその顔が まるで仕事にでも来たみたいなんで
なんだかがっかりしてしまう
誰かさんが誰かさんの耳を切り落とす 耳はテ−ブルの上で耳しいと言って泣く
誰かさんが誰かさんの口を切り落とす 口は他人の靴の上で口惜しいと言って泣く
右手に箸 左手に茶碗を持って 新宿駅に向かって行進しているのを見た