ポール・デュカのちょっと寄り道 〜第69回定期の演奏曲目〜

2013年 3月20日 初版作成


 横フィルで、第69の定期演奏会で交響詩「魔法使いの弟子」を演奏しますので、ちょっと寄り道して、デュカの他の曲、そして関連する曲も聴いてみましょう。

 デュカの曲で、「魔法使いの弟子」以外で最も有名なのは、バレエ音楽「ラ・ペリ」でしょうか。
 デュカは交響曲も作曲していますね。
 オペラに「アリアーヌと青髭」というのもあります。

 デュカの交響曲を中心に、同時代のフランスの交響曲もちょっと眺めてみましょう。

Paul Abraham Dukas (1865年10月1日〜1935年5月17日)



1.バレエ音楽「ラ・ペリ」

 デュカが1912年に作曲したバレエ音楽です。もともとディアギレフ率いるロシアバレエ団(バレエ・リュス)の依頼で作曲されたようですが、バレエ・リュスでの公演はお流れとなり、1912年にパリ・オペラ座で初演されています。(20世紀初頭、いわゆるベルエポックの時代のバレエ音楽に、ディアギレフの果たした役割は非常に大きいですね)
 冒頭の「ファンファーレ」が有名ですが、これは後から追加され、バレエの開始前の前奏として演奏されるようです。

 約2分半のファンファーレの後、バレエ本体の「舞踊詩」が始まります。全体で約20分です。
 バレエのストーリーは、ペルシャ神話の妖精ペリの物語とのこと。あらすじはこちら(ウィキペディア)

 極彩色というよりは、パステルカラーのようなポワッとした色彩で、巧みなオーケストレーションの非常に佳い曲だと思います。

 アルミン・ジョルダン指揮スイス・ロマンド管の演奏は、色彩ときびきびした小気味よい演奏で、なかなかの名演だと思います。
 デュカ作品集2枚組CDに収録されているピエール・デルヴォー指揮パリ・オペラ座管弦楽団の1957年の録音は、残念ながらモノラルでした。

デュカ作品集(アルミン・ジョルダン指揮スイス・ロマンド管)


デュカ作品集(「ラ・ペリ」はピエール・デルヴォー指揮パリ・オペラ座管弦楽団)

2.デュカの交響曲

(1)フランスの19世紀後半における交響曲

 まず始めに、デュカの交響曲に先立ち、19世紀のフランスの交響曲をざっと眺めてみましょう。
 フランスの交響曲と言って思い浮かぶのは、サン・サーンス、フランク、古くはベルリオーズの「幻想交響曲」でしょうか。意外と、少なそうです。

 「幻想交響曲」(1830年)以降は、次のように何故か1850年代以前に、しかも習作のようなものばかりです。

ベルリオーズ:「幻想交響曲」 1830年
サン・サーンス:交響曲第1番 1851年
グノー:交響曲第1番 1854年
ビゼー:交響曲 1855年 (初演されたのはビゼー没後大幅に経った1935年!)
グノー:交響曲第2番 1856年(これ以降グノーは交響曲を作曲せず)
サン・サーンス:交響曲第2番 1858年 (これ以降、第3番まで28年のブランク)

 やはり、フランスでは、若い時期に習作として交響曲を作ることはあっても、名を挙げ売れるようになれば、もっぱらオペラやバレエ、サロンのパトロン向けの歌曲やピアノ曲の作曲が多かったのでしょう。

 ヨーロッパ音楽の歴史に詳しい訳ではありませんが、どうやらフランスでの音楽の興味は、まずは「オペラ」そして「バレエ」や「劇付随音楽」、要するに「ビジュアル」を伴う音楽ということのようです。むしろ、「ビジュアル」の「伴奏」としてしか認知されていない・・・。
 それと、身近な「サロン」で優雅にBGMとして流れるピアノ曲、歌曲。やはりメインはピアノ曲でしょうか。リスト、ショパン、そしてフォーレやドビュッシーやラヴェルも。
 さらにもう一つが、教会で演奏される「オルガン曲」。サン・サーンスも、フランクも、そしてメシアンも、教会のオルガン奏者でした。

 要するに、こういった音楽シーンの中には、コンサートホールで演奏する楽員をじっと見ながら、かしこまって音楽を聴くという習慣がなかった、ということのようです。

 それに対して、19世紀の音楽シーンを席巻したワーグナー旋風にあおられ、フランスにもワーグナー信奉者(いわゆる「ワグネリアン」)が現われます。サン・サーンスなどは、一時は熱心なワグネリアンでしたし、ドビュッシーも初期はワーグナー信者でした。
 そして、歴史的には、1870年から1871年の普仏戦争。フランスはプロイセンに破れ、プロイセン王ヴィルヘルム1世はパリを占領し、ベルサイユ宮殿でドイツ帝国の皇帝として戴冠します。(これが「神聖ローマ帝国」以来の「第二帝国」になるわけです。第1次大戦敗戦後の「ワイマール共和国」を経て、ヒトラーが政権を取った後が「第三帝国」です)
 戦時下のパリは大混乱に陥り、一時労働者・民衆が支配する「パリ・コミューン」が形成されました。

 この普仏戦争後、音楽の分野でフランスのナショナリズム高揚とドイツ音楽に追い付き追い越せを旗印として1871年に設立されたのが「国民音楽協会」です。サン・サーンスが発起人の一人、主力会員にフランク、マスネ、フォーレ、タファネルなどが名を連ねていました。ここで、フランス音楽の弱点を克服するため管弦楽曲の作曲や演奏の機運が高まり、フランスでも交響詩や交響曲が作曲される契機となったようです。

 サン・サーンスが交響詩を矢継早に作るのは、まさにこの頃です。
  「オンファールの糸車」1871年
  「ファエトン」1873年
  「死の舞踏」1874年
  「アルジェリア組曲」1880年

 その他のフランス管弦楽曲も、この頃に集中して作曲されています。
  マスネ/組曲「絵のような風景」1874年
        「ナポリの風景」1876年
        「おとぎの国の風景」1881年
        「アルザスの風景」1882年
  シャブリエ/交響詩「スペイン」1883年
  フランク/交響詩「呪われた狩人」1883年
  ドビュッシー/「牧神の午後への前奏曲」1894年
  フォーレ/「ペリアスとメリザンド」1898年

 そして、この風潮の中、フランスを代表する交響曲が作曲されています(管弦楽曲に比べると数は少ないようですが)。
 ドイツ流の4楽章制ではなく3楽章制、形式的には「幻想交響曲」に倣って「循環主題」が登場するものが多いようです。フランスとしての意地なのでしょうか。

  サン・サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」 1886年
  ダンディ:「フランス山人の歌による交響曲」 1886年
  フランク:交響曲D-moll 1888年
  ショーソン:交響曲 1890年
  デュカ:交響曲 1896年

 この時期、マニャール(1865〜1914)の4曲の交響曲というのもあります。

 また、20世紀も第1次大戦以降になると、フランスの交響曲として、オネゲルやルーセル、更に戦後にはミヨーも交響曲を作曲しますが、これはまた別に機会に。

(2)デュカの交響曲

 それではいよいよデュカ作曲の「交響曲 ハ長調」(Symphonie en ut majeur)を聴いてみましょう。

 デュカは、自作のほとんどを廃棄していて、現存する作品数は極めて少ないですが、その中に交響曲が1曲あります。
 1896年、30歳のときに作曲されたもので、交響詩「魔法使いの弟子」(1898年)に2年先立つ作品です。時代的には、ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナーが亡くなった直後、マーラーの交響曲第3番やドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と同時代です。

 フランクの先例に倣い、3楽章から成ります。
 なかなか色彩的で熟達した内容で、サン・サーンスの交響曲第3番(オルガン付き)に似た雰囲気で、フランスっぽい交響曲です。フランスの交響曲の代表としてもっと演奏されてもよいように思います。(といっても、フランクの交響曲も、フランスのオーケストラの来日公演程度でしか取り上げられず、フランス以外のオケ、日本のオケもそれほど取り上げる機会は多くありませんね。「フランスの交響曲」というもの自体がそういった扱いなのでしょう)
 楽器構成は、フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、弦五部という、いたって古典的な2管編成。

第1楽章 Allegro non troppo vivace, ma con fuoco (アレグロだが速く快活すぎず、しかし情熱的に興奮して)
 ソナタ形式。8分の6拍子。ハ長調。
 前奏なしで、せわしない第1主題で始まります。ちょっとサン・サーンスの交響曲第3番に似た雰囲気です。特に、第2主題が出る直前の木管とティンパニの響はそっくり。
 オーボエの橋渡しの後、憂いに満ちたアンニュイな第2主題。
 第2主題の後に、次第に切迫して出てくる金管のファンファーレ的第3主題は、ちょっと昔の「アメリカ横断クイズ」に出てきた曲の雰囲気に似ています。(その曲は、グローフェ作曲「ミシシッピ組曲」の第2曲「ハックルベリー・フィン」。このクイズでは、同じ組曲の第4曲「Mardi Gras」(懺悔の火曜日)も使われていました)
 提示部の繰り返しなしで展開部が始まり、最初は第1主題に第3主題が絡み合い、次第に第2主題も顔を出します。第1主題と第2主題が絡み合い、やがて第1主題が明確に登場します。最も落ち込んだところから盛り上がって再現部につながります。
 再現部は型どおり、ほぼ提示部と同じように第1主題、第2主題、第3主題が順番に再現され、最後に華やかなコーダが付きます。コーダ開始で一度沈静化しますが、再び盛り上がり、最後のハ長調の華やかな金管の響きは、サン・サーンスの交響曲第3番のフィナーレの最後にちょっと似ています。

第2楽章 Andante espressivo e sostenuto (歩く早さで、表情豊かで音を保って)
 ソナタ形式。8分の4拍子。ホ短調。
 木管のコラール風で始まりますが、これにからむホルンのオブリガート音形が、楽章全体を通して見え隠れします。ハーモニー、音色とも、いかにもフランス風という印象です。
 第1主題は哀切な歌。
 続く第2主題は長調に転じておおらかに、やさしいフルートのオブリガートが寄り添います。
 一転して、弦のトレモロに乗って、木管に新しいオブリガートが現れ、それに乗って優雅な第3主題が登場します。ヴァイオリンからチェロに引き継がれます。
 続く短い展開部で第1主題、第2主題が展開されます。
 すぐに再現部になり、第1主題と第3主題は再現されますが、長調の第2主題は出てこないようです。
 コーダでは、第1主題と第3主題、第3主題のオブリガートが繰り返され、最後は遠くをぼんやり眺めるように、やるせない諦観の中に消えてゆきます。

第3楽章 Allegro spiritoso  (アレグロで活き活きと)
 ロンド形式。ハ長調。4分の3拍子=8分の9拍子。
 第2楽章最後の諦観から、急にぱっと明るくなります。ホルンを中心に元気なロンド主題Aで開始されます。
 次に、ヴァイオリンに付点音符の上昇志向の主題B。
 トランペットの主題Cを経て、主題Aがしばらく続き、次にヴァイオリンに優美な主題D(木管が合の手)が現れます(はじめヴァイオリン、次にチェロ)。
 各主題がいろいろ色合いを変えて登場します。
 最後は主題Aと主題Bが合体して、華々しく(ちょっとしつこく)閉じられます。

 デュカ作品集2枚組CDのマルティノン指揮/フランス国立放送管の演奏には、熱い前のめりの演奏です。
 交響曲/アルミン・ジョルダン指揮スイス・ロマンド管の演奏は、端正で優等生的な演奏です。

デュカ作品集(「交響曲」はマルティノン指揮/フランス国立放送管)


デュカ作品集(アルミン・ジョルダン指揮スイス・ロマンド管)

(3)同時期の他の交響曲

 同時期の交響曲の中では、サン・サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」と、フランクの交響曲ニ短調は、有名ですのでここではスルーします。
 残った中で、ショーソンとダンディを紹介しましょう。

(A)ショーソン/交響曲 変ロ長調 作品20(Symphonie en si bemol majeur)

Ernest Chausson (1855年1月20日〜1899年6月10日)

 エルネスト・ショーソンも寡作の作曲家で、ヴァイオリン独奏とオーケストラのための「詩曲」作品25(1896年)が有名ですが、交響曲も1曲書いています。1889年に着手され、1890年12月に完成されて、1891年4月に作曲者自身の指揮で初演されました。時代的には、マーラーの交響曲第1番「巨人」(1888)、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」(1893)、ブルックナーの交響曲第9番(1891〜1896)などと同時代です。

 「詩曲」のイメージからすると、交響曲も「ポエジー」と「ニュアンス」に満ち溢れた混沌としたものを想像しますが、予想に反して華麗で明快な曲です。一番近いイメージとしてはチャイコフスキー、ドヴォルザーク、そしてシベリウスでしょうか。部分的には、ドヴォルザーク「新世界」に似た個所がいくつかありますが、作曲年としてはショーソンの方が先です。マーラーやブルックナーのような部分もあり、そして何よりワーグナーの影響が大きいようです。
 非常に分かりやすく、単純明快、まるでロマン派初期の交響曲のようです。和声的にも模範的で意外性はほとんどありません。オーケストレーションの巧さも含めると、「手堅く熟達した筆」ということなのでしょう。
 その意味で、聴いた限り「フランスの交響曲」というイメージとは異なります。その分、交響曲としての完成度は高く、国籍に関係なくもっと演奏されてもよい曲だと思います。

 楽器構成は、フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、コールアングレ1、クラリネット1、バスクラリネット1、ファゴット3、ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、ハープ2、弦楽五部という、若干変則的な3管編成。

 やはりフランス式交響曲ということで3楽章構成です。

第1楽章 Lent - Allegro vivo (ゆっくりと − 活き活きと快速で)
序奏(変ロ長調、4分の4拍子)−ソナタ形式(変ロ長調、4分の3拍子)
 まるでチャイコフスキーか何かのような、「ロシアの憂鬱」を感じさせる前奏で開始。チャイコフスキーのバレエ音楽、といっても通用しそうです。トロンボーンの旋律に、木管のスケールが絡むあたりなど・・・。
 アレグロ・ヴィーヴォの主部の第1主題は、ホルンとファゴットによる田園的で明るいもの。五音音階の民謡のような主題です。
 ドヴォルザークの「新世界」に出てきそうなアルペジオ音形の橋渡しで、やはり田舎くさい第2主題(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第3楽章を思い出させます)。第1主題、第2主題とも、単純明快で、それほどフランス的「ひねり」はありません。
 提示部の繰り返しなしで展開部に入ります(プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の「越後獅子」のようなブリッジ部)。まず、短調の第1主題、すぐに「新世界のアルペジオ音形」に乗って間延びした第2主題。その後いろいろに展開されます。
 途中に、金管に「前奏」の主題が登場します。「循環主題」ということなのでしょうか。
 再現部はかなり簡略化されています。ホルンに第1主題、コールアングレに第2主題が登場します。
 すぐにコーダが始まり、第1主題を強奏して、華々しく、ちょっとドイツっぽく終結します。

第2楽章 Tres lent (きわめてゆっくりと)
自由な形式 ニ短調、4分の4拍子。
 チャイコフスキーの交響曲第5番の第2楽章のような、沈痛な弦のコラール風で始まります。
 とても美しい緩徐楽章で、イメージとしてはグリークの澄んだ北欧の響き、シベリウスの森と湖と白鳥、といった風景です。シベリウスを思い浮かべるのは、コールアングレが効果的に使われているからでしょうか。
 寄せては返すうねりのような、一編の交響詩ないしはバレエの一幕のような楽章です。
 最後は、華々しく勝ち誇るかのように終わります。

第3楽章 Anime (活き活きと)
ソナタ形式でしょうか。 変ロ短調、4分の4拍子。
 またまた悲壮感あふれる第1主題で開始。ここもチャイコフスキーを思わせます(交響曲よりもバレエ。特に、ホルンの複雑なリズムパターンの上に低弦の旋律を乗せるあたり。)
 トランペットの経過句的パッセージを経て、金管コラールの第2主題。次の展開部に移る部分は、ブラームスのピアノ協奏曲第2番の第1楽章にあったような。
 展開部の冒頭には、村祭りのような3連符主題が出てきますが、この主題は第1楽章の第1主題の変形ですな。合の手は第3楽章の第1主題。クラリネットに第2主題が出た後、再現部になります。
 再現部は簡略化されており、第1主題、トランペットの経過句的パッセージ、ホルンの第2主題を経て、突然ドヴォルザークの「新世界」第4楽章冒頭のテーマにそっくりのパッセージがトロンボーン続いてトランペットに登場します(前にも書きましたが、ショーソンの方が先に作曲)。これは、実は前奏の循環主題の一部です。
 ここで、突然Grave(重々しく)となって、ゆったりとした金管のコラールが始まりますが、これは第1楽章冒頭の前奏部分の再現です。「循環主題」ということでしょう。ワーグナーの「パルジファル」を思わせるような雰囲気です。感動的に広々とした世界が繰り広げられ、合いの手として第3楽章第1主題、第2主題が巧みに絡み、雄大に曲を閉じます。ショーソンがワグネリアンであったことを思い起こさせます。

 私が持っているのは、シャルル・デュトワ指揮モントリオール管弦楽団のCDですが、よい演奏だと思います。この曲をより多角的に味わうには、異なった演奏も聴いてみた方がよいのでしょうが、そこまでは入れ込んでいません。

ショーソン作品集

(B)ヴァンサン・ダンディ/「フランス山人の歌による交響曲」 作品25

 もう一つ、比較的有名なのが、ポール・マリー・テオドール・ヴァンサン・ダンディ(Paul Marie Theodore Vincent d'Indy, 1851〜1931年)の「フランス山人の歌による交響曲」(Symphonie sur un chant montagnard francais)作品25(1886年)でしょうか。実質的には、ピアノ独奏入りの管弦楽曲です。ダンディの作品のうちで、現在演奏される唯一の曲と言ってもよいでしょう。1887年3月に作曲者自身の指揮で初演されています。
(ダンディには、ほかにも番号付きの交響曲もあるようですが、演奏会で取り上げられることもなく、CDも出ていないようで、私も聴いたことがありません)

 「フランス山人の歌による交響曲」は、タイトルどおり、フランスの山岳地方の民謡を全曲を通じた循環主題としており、素朴で分かりやすい曲です。日本人にはちょっとなつかしい「ふるさと」の香りがするかも。フランス風のしゃれた曲、というのとはかなり異なります。
 楽器編成は、独奏ピアノに、フルート3(うち1はピッコロ持ち替え)、オーボエ3、(うち1はコーラングレ持ち替え)、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット3、ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、トライアングル、シンバル、バスドラム、ハープ、弦五部というほぼ3管編成です。

第1楽章 Assez lent - Moderement anime(きわめて緩やかに − 中庸の速さで、活き活きと)
 冒頭で、コールアングレが演奏するのが、循環主題となる「山人の歌」です。田舎風の、ひなびた、ちょっと「箱根の山は天下の嶮」という「箱根八里」に似た主題、懐かしさを感じさせる主題です(と私が勝手に思っている)。

第2楽章 Assez modere, mais sans lenteur (きわめて穏やかに、しかし遅くなく)
 ほのぼのとした緩徐楽章です。主題が不安げに提示されますが、やや天真爛漫に展開されます。

第3楽章 Anime (活き活きと)
 「山人の歌」に基づくピアノの伴音形奏の上に、これまた田舎臭いオーケストラのテーマが出てきます。これも「山人」の民謡なのでしょうか。

 私の持っているのはマレク・ヤノフスキ指揮フランス国立放送管弦楽団です。この曲、演奏は意外に少なく、あとはデュトワ指揮モントリオール管ぐらいでしょうか。ミュンシュの古い録音もあるようです。

デュトワ指揮モントリオール管

 先日、NHKテレビで冨田勲氏が宮澤賢治のトリビューとして作曲した「イーハトーヴ交響曲」のエピソードを紹介する番組を放映していましたが、ベースとなっているのはこのダンディの曲で、初音ミクが妖しく歌う歌のメロディもこの曲の第2楽章に出てくる主題ですね。
 確かに、宮澤賢治の世界に一脈通ずるところのある曲ではあります。
(注:「イーハトーヴ」とは、宮澤賢治の造語で、「ドリームランドとしての日本岩手県」を指す)

3.オペラ「アリアーヌと青髭」

 このオペラは、残念ながら観たことも聴いたこともありません。
 実は、昨年(2012年)2月に仕事でドイツに行った折、フランクフルト歌劇場で、この「アリアーヌと青髭」を上演していて、金曜日の晩に無理をすれば観に行けたのですが、残念ながら仕事優先でパスしてしまいました。土曜日の晩は仕事はないので、リヒャルト・シュトラウスの「アラベラ」を観に行きましたが。(ドイツの歌劇場でフランス語のオペラ? というのもあったし・・・)
 今シーズン(2012/13)の演目には入っていないようです。

 ということで、そのうち聴いてみるかもしれませんが、現時点ではスルーすることとします。
 日本語字幕付きDVDが出たので、そのうち買ってみようかと思いますが・・・。

ドゥネーヴ指揮/リセウ歌劇場の日本語字幕付きDVD



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